協働事例のご紹介
南関東支社・神奈川西支店・
川崎支店・山梨支店

木を主に扱う宮大工の技術（クラフトマンシップ）を活かし、木の故郷となる森を再生する活動「クラフトマンシップキャンプ」を関東に拠点をもつ４事業所が合同で始めました。
活動場所である山梨県道志村の森で蓄えられた水源は清流となり、横浜市まで流れ、森と街をつなぐ一本の道となっています。しかし、その起点となる森は、林業従事者の高齢化や人手不足により、伐採した木材や間伐した木が手付かずで山に放置されています。道が、か細くなっているだけでなく、間伐などした木を麓へ運ぶために材木にする製材所も、需要の激減によりその大半が廃業してしまいました。
木を「切る→使う→植える→育てる」の循環なくして森の再生はありえません。古い製材所が再び稼働すれば、その循環は再び始まり、一本の道はよみがえります。そこに着目したNPO法人宮大工木造技術継承協会の宮大工の方々の想いに４事業所が賛同し、「ミライマチ宣言の実現に向けて欠かせない取り組み」の一つとして本活動に参加しました。

今年度は、製材機の復活を目標に、まずは製材所で加工した木材を運搬できるようにするため、「製材所の清掃から間伐作業まで」を毎月実施することとしました。第1回は、それぞれの事業所の地域共生推進委員をはじめとした15名が集まり、足の踏み場もないほど散乱している木材などを片付けることから始めました。第2回は、原木を製材機に送る台車の上に積み重なった百本以上ある木材を撤去するためにリレー形式で屋外へ搬出する作業を行いました。作業開始から数時間後、台車とレールがようやく全貌を現しました。最後は棟梁の「ヤァッ」という“宮大工式かけ声”に合わせ、全員で台車を押すと……「動いた！」と歓声が沸き起こりました。今回参加した14名は、活動前に「地域の取り組みを知り、私たちが関わる意義を感じたい」など意気込みを述べていたことからも、活動を通じて視野を広げる良い機会となりました。次回以降は、昭和34年製の製材機が電気で動くのかについて確認していきます。

このプロジェクトの発起人である宮大工の一人、市川棟梁は、プロジェクトを始めようとしたきっかけは、この森を管理する大田様から言われた「街から森を意識してほしい」という言葉だったと、当時を振り返ります。“街”で建物を建てるには、“森”の木を活用する仕組みが不可欠です。その端緒となるのが製材所でした。市川棟梁は「このプロジェクトによって、もし道志村の製材機が動いたら、全国で眠っている製材機に対しても同じチャレンジができ、森林を守る課題が解決できる鍵になる」と言います。
大田様は「まず森に入って、自ら関わり、知ってもらうことが大切です」と言い、「みんなで方法を考え、実践してもらっていることが大変ありがたい」と今後の活動にも期待を寄せられています。

月幹事を務める山梨支店の綾部さんは、「山梨支店はミライマチ宣言として『すべてが輝き循環するようなマチ』を目指すことを掲げました。その一つが自然環境の循環です。クラフトマンシップキャンプでは、私たちのいる山梨から、南関東支社のある横浜までを１つの流域と捉え、４事業所が共に活動するところに大きな意義があります。普段関わりのない社員同士のネットワークも広がりました」と語ります。
また、南関東支社の神谷さんは、プライベートでは“クラシックカー好き”ということもあり、製材機の復活を楽しみにしています。「1回目の活動で、最後にやっと台車の車輪が見えた時は感動しました。それで、第2回も追いかけなくては！と今日も来ました」とメカ好きの目を輝かせます。神谷さんから地域共生推進委員を引き継いだ森迫さんは、第2回が初参加。神谷さんがあまりにも楽しそうだったので興味が湧き、「木材がどう作られるのかを学ぶチャンスだ」と参加しました。この活動の楽しさをどのように他の社員に伝え、巻き込んでいくか、二人でアイデアを練っています。活動に参加した社員からは、「製材機で作られた木材をどのように地域で活用していくのかについても検討してみたい」と意欲的な意見もありました。
製材機の復活は、はじめの一歩であり、木材の運搬や製材所の維持管理など他にも多くの課題があります。これらの課題にまちづくりを担う大和ハウス工業の社員が向き合っていくことは、サプライチェーンの観点からも重要です。また、地域の課題を現地で知り、気付きを得ることは社員にとっても大きな財産になるはずです。大和ハウス工業は、地域の方との対話を大切にしながら、この取り組みを進めていきます。