パネルディスカッション
Breakout Sessions:DE&I
「Focus on Equality~DE&Iは
私たちの生命線」
近年、多様性を受け入れて生かす「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)」に加え、新たに「Equality(平等)」や「Equity(公平)」への取り組みも加速し、「DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)」という考えが広がってきています。セッションでは、登壇者が紹介するジェンダーフリーや難民雇用の事例を通じて、「E」がDE&Iを推進する上で重要な要素であり、Regenerativeな未来の生命線になっていくことを確認しました。
【Facilitator】
サステナブル・ブランド国際会議 山岡 仁美氏
【Panelist】
株式会社QVCジャパン 秋山 典子氏
株式会社商船三井 向井 恒道氏
NPO法人WELgee 渡部 カンコロンゴ 清花氏
大和ハウス工業
「だれもが生きる感動を育める街へ」
大和ハウス工業株式会社
上席執行役員 都市開発部長 都市開発部門担当
原納 浩二
登壇者の前に飾られた花は、大和ハウス工業が栽培するミニ胡蝶蘭「COCOLAN(ココラン)」です。この花が誕生するまでの背景と、栽培を通じて高齢の方や障がいのある方など、さまざまなステークホルダーと「E」でつながる取り組みについて、上席執行役員の原納から報告しました。
大和ハウス工業は、世の中の役に立つ「アスフカケツノ」事業で、社会課題の解決に取り組んできました。その長い歩みの中で、かつて開発した郊外型住宅団地を「再耕※」し、新たな街の魅力や価値を紡ぎ出す「リブネスタウンプロジェクト」を展開。兵庫県三木市にある緑が丘ネオポリスの再耕にあたり、アスフカケツノの「フ(福祉)」・「ケ(健康)」・「ノ(農業)」の観点から、街の中にミニ胡蝶蘭の栽培施設ココランハウスを立ち上げました。
独自の栽培技術で育成したCOCOLANにより、高齢の方や障がいのある方など誰もが携わることのできる作業を実現しています。兵庫県下の特別支援学校に通う生徒の中には卒業後、春からココランハウスで働き始める方がいます。原納は「彼女の夢は、みんなを引っ張っていける優しいリーダーになること、定年まで勤めること。彼女が自分らしく働ける職場を提供することが、私たちの“約束=Engagement”です」と語ります。三木の街に住むある女性は、ココランハウスの栽培パートナーとしていきいきと働き、時には友人に花を贈って喜ばれることも。仲間と“共感=Empathy”でき、生きがいのある毎日を創り出すことも大和ハウス工業の使命です。
※再耕:当社による造語。「戦後の高度成長期、土地を切り拓き、街をつくり、暮らしを育んできた私たち。時代が大きく変わろうとしているいま、もう一度街を耕し、お客さまの暮らしを耕し、この国の新しい未来を耕す」という想いが込められている。
COCOLANを通じて次世代との交流も広がっています。近隣の大学生にとって、ココランハウスは地域課題を発見・探求・解決する“教育=“Education”の場に。また、三木市の全小学校の卒業式ではCOCOLANを進呈。昨年は式に出席できない在校生たちがCOCOLANのアレンジメントに挑戦し、花に触れ、お祝いの気持ちを贈る“経験=Experience”を通して、命を慈しむ気持ち、思いやりの心を育みました。さらにフラワーロス・ゼロチャレンジとして、出荷できなかったCOCOLANを、切り花や押し花として商品化する「COCOLAN CYCLE SYSTEM」も構築しています。
原納は、ココランハウスを人・街・暮らしをつなぐインクルーシブ農園として成長させ、「高齢の方も障がいのある方もわけへだてなく、皆が自分らしく働き、生きていける場所へと街を再耕していきたい」と話します。そしてこの取り組みを、課題を抱える日本全国の街へカスタマイズしながら展開し、将来は海外でも貢献したいと夢を広げました。セッション終了後には、二度咲きCOCOLAN を希望者にプレゼントし、大和ハウス工業の想いを多くの人へと手渡しました。
パネルディスカッション
Breakout Sessions:経営・マネジメント
「社員一人ひとりに
根付くパーパス」
企業の“存在意義”を意味する「Purpose(パーパス)」を明確にし、経営の根幹に据える企業が増えています。その重要性や効果はさまざまなところで取り上げられていますが、このセッションでは、パーパスをいかにして社員一人ひとりに浸透させ、日々の行動にまで落とし込むかという点に着目。大和ハウス工業は、2022年度の発表に向けて現在進行形で取り組んでいる「パーパス」策定のプロセスを発表しました。
【Facilitator】
サステナブル・ブランド国際会議 足立 直樹氏
【Panelist】
横河電機株式会社 玉木 伸之氏
SOMPOホールディングス株式会社 平野 友輔氏
大和ハウス工業
「パーパス策定までの道のり」
大和ハウス工業株式会社
サステナビリティ企画部長
近久 啓太
大和ハウス工業の創業者 石橋信夫は、“儲かるからではなく、世の中の役に立つからやる”という使命感のもと、社会課題の解決を目的とした事業を立ち上げ、「われわれにとって重要な夢は『将来の夢』でなければならない。夢あるところに前進がある」と社員に説きました。この創業者精神を企業経営の根幹に据える大和ハウスグループにとって、「夢」は、将来を指し示す羅針盤であり、企業としての存在意義「パーパス」との強い親和性を持っています。
2055年に大和ハウスグループは創業100周年を迎えます。そこで、2055年を起点に、未来のあるべき姿をバックキャスティング思考・長期思考で考え、パーパスを導き出す『“将来の夢”プロジェクト』を立ち上げました。大和ハウスグループとして2055年に「創り出したい社会」と「果たすべき役割」をパーパスとして位置付け、創業者の想いを受け継ぎ、“将来の夢”とする独自の表現を使っています。
ここで策定するパーパスは、2022年度から始まる「大和ハウスグループ第7次中期経営計画」の旗印として掲げられる予定です。プロジェクト始動にあたっては、代表取締役社長/CEOの芳井敬一から全グループ社員に向けて、「大和ハウスグループの未来を描く主人公は、大和ハウスグループの全ての社員である。必ず未来は変えられるという強い意志を持って参画してほしい」とメッセージ。経営層の本気度を宣言することでグループ社員を突き動かしました。
“将来の夢”プロジェクトでは、2021年5月から12月にかけて、ステークホルダーや社員が語り合う機会を設けて対話を重ねた結果、22回の対話を実現しました。最初に約3万人のグループ社員にアンケートを実施し、想いとアイデアをヒアリング。これまでにも部門横断型の「統合思考プロジェクト」を率いてきた近久は、「当社グループの社員はアンケートのレスポンスが非常に良い。正直な意見が多く寄せられ、次の手を打つ時の参考になります」とアンケートの効用を実感します。そこからさらに株主・取引先・学生へのヒアリング、社員ワークショップ、全世界にいる社員約1,000人が参加したオンラインサミットなどを経て、パーパスの素案を作成。その案を経営層と社員との間で何往復もさせながらブラッシュアップし、取締役会での最終的な決議へと至りました。
最も苦労したことを問われた近久は「正解がない中で決断を下すのが、とても難しかった。計画通りに進まないことも多く、進めながら考える、納得できるまで考える。その繰り返しでした」と話します。全グループ社員を巻き込み、納得・共感してもらうために、進捗状況は社内イントラ等でタイムリーに開示。「全グループ社員が一緒に取り組んでいると思える体制や雰囲気づくりを重視しました」と振り返ります。
パーパス策定のプロセスでは、社員に深く根差している創業者の「夢」から一度離れるゼロリセットも行いました。社員それぞれが2055年の未来を自由に想像し、自由に議論を重ねた結果、改めて創業者の「夢」と、これから目指すパーパスの方向性が重なることを確認。2022年の発表を通過点として、国内外のステークホルダーに共感してもらえるパーパスへと育てていく決意を語りました。