日景温泉
ひなびた風情に身をゆだねて
温泉でノスタルジーに出会う
明治22年(1899)、青森と秋田の県境・甚吉森山麓に湧き出し、初代・日景弁吉によって開湯された「日景温泉」は秋田県最北の秘湯だ。国道を外れて2キロほど、沢を渡ると、広い敷地に到着。ひなびた風景画のただ中にいるような気分になる。昔の小学校の校庭を思い出させる広場を囲むように、時代の異なる建物がある。
建坪1800坪という広大な建物を歩くと、それぞれの時代が語りかけてくる。舞台付きの120畳の大広間は湯治客のみならず、この地の名士に愛されて数々の名宴会を繰り広げてきたのだろう。昭和30年代を思い出させる湯治部のタイル張りの浴槽は、いったい何人を温めたのだろうか。
「先祖や今までここに関わってきた人のことを思うと、ここは自分ひとりのものではないと思うんですよ。ちょうど昔の写真を整理して、いろいろ思っていました」と女将が広げた写真は、大正時代の日景温泉をバックに、ヒゲの紳士や馬車に乗った婦人が華やかに写っている。そんな時代に思いを馳せていると、喧噪の街には帰りたくなくなってしまう。懐古的な旅情を楽しむ。そんな逗留もいいものだ。
rakra2008年5月号掲載
2008年4月頃撮影
日景温泉
秋田県大館市長走37
TEL 0186-51-2011
宿泊料金 9,600円~12,750円
(1泊2食、税・サービス料込み)
チェック/イン15:00、アウト10:00
客室数/35部屋
ロイヤルシティ八幡平リゾートより約103km
「古いものを補修して残していきたい」と改築したラウンジ。
ネコの名前は「チャチャ丸」。人なつこい性格で日景温泉のアイドル。