a slowly dish
戦後、横手市に住む一人の男性が茹で麺を使った焼きそばを開発。
それは50年を経た今、観光客をも集める町の名物「横手やきそば」となっています。
秋田県の内陸南部に位置する横手市。冬の豪雪を活用した「かまくらのまち」として全国的に有名ですが、ここ数年間は、「やきそばのまち」としての知名度が高まっています。
名物「横手やきそば」は、麺は茹で麺。具の肉は挽肉、仕上げに目玉焼きと福神漬けをのせる、などが主な特徴。市内で食べられる店は50軒ほどありますが、肉以外の具やソースの味などは店によってさまざまです。
戦後、焼きそば店を始めようと考えた故・萩原安次さんが「鉄板にくっつきにくい麺がほしい」と、地元の製粉業者とともに研究・開発した結果、誕生したのが、太くてちぢれのない茹で麺で作るこの「横手やきそば」でした。萩原さんが昭和30年に「神谷焼きそば店」を開くと、珍しいソース味と茹で麺ならではのやわらかい食感のせいか、おやつや軽食としてすぐに大人気に。やがて「作り方を教えてほしい」と頼まれるようになったことから、萩原さんは講習会を開きます。こうして市内には「横手やきそば」を売る店が続々登場。ピーク時の昭和36年頃には80軒近くもあったそうです。
しかし店が増えても、元祖である「神谷焼きそば」の人気が衰えることはありませんでした。現在のれんを守るのは、三代目の大沼源治郎・憲子さん夫妻。憲子さんのお母さんが二代目だったことから、子どもの頃から毎日この焼きそばを食べて育ち、中学校卒業と同時に店で働き始めたという憲子さんのキャリアは、なんと45年。なるほど、調理のてさばきはあざやかで、作り始めてから完成まで約2分という早さです。「手早く作らないとソースがとんでしまうんですよ」と憲子さん。味の決め手であるそのソースは、ウスターソースに秘伝のスープを加えたもので、後味がさらりとしていて食べ飽きず、市民や観光客に人気です。
野菜を多めに加えたものやホルモン入りのものなど、種類はいろいろありますが、まずは定番の「肉玉子(並)」(450円)から食べるのがおすすめ。郷愁が感じられる、素朴でやさしい味わいです。
文/赤坂環
写真/奥山淳志
rakra2006年9月号掲載
2006年8月頃撮影
元祖
神谷焼きそば屋
秋田県横手市大屋新町字中野117-67
TEL 0182-33-5575
営業時間/11:00~18:00
月曜定休
ロイヤルシティ八幡平リゾートより約135km
太くてちぢれのない茹で麺を使用。
豚ホルモン入りの「ホルモン(並)」は女性客にも人気。
土産用として持ち帰りもできます。
初代の故・萩原安次さんと当時の店。「焼きそば(並)」は25円でした。
焼きそば用のソースは、ウスターソースに秘伝のスープを加えたもの。