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クリエイティブな皆を繋げて 「アート」をキーワードに 街を盛り上げたい

神田川アートブロッサム 実行委員会 代表 建築家 海田修平さん

神田川周辺に広がる江戸川橋エリアは、出版・印刷・製本といった紙関連の会社が数多く立地する「紙の街」として知られている。この地で2014(平成26)年春、アートをキーワードに街を楽しむというイベント「神田川アートブロッサム」が初めて開催された。これを企画したのが、地元の建築家を中心とした有志が集まり、組織された実行委員会だ。今回は「江戸川橋」駅からほど近い場所にあるコミュニティスペース「我楽田(ガラクタ)工房」で行われた会議にお邪魔し、代表である海田修平さんに、イベントの内容や街に対する想いをお聞きした。

「神田川アートブロッサム」の設立の経緯や 背景についてお教えください。

“アートブロッサム”というのは、私が作った造語で、「アート」と、花が咲くという意味の「ブロッサム」が由来です。たとえばこのすぐ近くには写真スタジオがありますし、ほかにもギャラリーや美術館も点在していて、アートな雰囲気が色濃い地域なんじゃないかな、と思います。また、神田川があって、桜があって、新宿区山吹町のほうにはケヤキ並木もある。緑が多くていいところなんです。でも、残念ながらいまいち知名度が低いんですよ。私もここに住んで10年ぐらいになるんですが、住んでいる立場としてはちょっと寂しいですね。だから、「いいところなんだから、もうちょっと知名度をあげたい」、「地元と関わっていきたい、何か街に対してできることをしていきたい」、という思いもありました。私の建築家という仕事も言ってみれば、“ものを作る(クリエイティブ)”仕事ですので、クリエイティブな皆を繋げて、「アート」をキーワードに、街を盛り上げていければと思ったのが、活動を始めたきっかけです。

そもそもなぜ、江戸川橋にクリエイティブな 方が集まってきたのだと思われますか?
  • 出版・印刷に関する会社が多いということで、もともと倉庫や工場だった大きな建物が多くあって、そういうところに、クリエイティブな人たちが集まってきているようです。大きくてアーティストの活動に適した物件が、たまたま出版・印刷工場の跡地だったりすることが多いのでしょうね。ふたを開けてみれば、写真家の方などは印刷にこだわりますし、グラフィックデザイナーさんも紙にはこだわっている方も多いので、結果としては、印刷や紙にこだわるような人たちが集まっています。
活動をスタートした昨年はどのようなことをおこなったのでしょうか。

昨年の第1回「神田川アートブロッサム」では、美術館やギャラリーをまわるスタンプラリーのほか、ステンドグラス制作のワークショップや写真スタジオでの撮影会などを開催しました。また、夏には地元の子どもたちを集めて、本を収納する箱を作っている会社に廃棄になる厚手の紙をいただき、紙のタワー作りをしました。ワークショップをするには、やはり材料費がかかるのですが、廃棄物を使えば材料費はタダですし、廃棄物を再利用するというエコ意識も持ってもらえます。また、街を知ってもらうよい機会にもなりますよね。「地域の工場の廃棄物を使うワークショップ」というのは、ひとつの活動の中にいろんな要素を盛り込むことができます。本や印刷物のような紙は、インターネットなどに押されて衰退傾向にあるといわれていますが、実は、「今までに無かった新しいアイディアで、何か面白いことをやって、業界を盛り上げたい」と思っている方も多いです。ですから私たちも、そういう方と一緒になって、街を盛り上げるような企画を考えたいと思い、その一つの形として昨年は「紙タワー作り」という企画を実現できました。今年の「神田川アートブロッサム」では、封筒を制作している地元の業者の方と協力して、「オリジナルの封筒を作ろう」というワークショップをやろうと思っています。

アートブロッサムの活動を通じて、街の人同士の新しい交流が 生まれているという感触はありますか?

実は「神田川アートブロッサム」の実行委員も、去年と比べれば倍ぐらいの人数になっているんです。こうやって人がどんどん増えていって、もっと盛り上がっていったらうれしいですね。この活動をしていなければ、知り合えなかった人も多いですし。今までは、もともとギャラリーとカフェのオーナー同士が知り合いだったりして、そこから繋がりが広がっていくというような形が多かったです。でも、今後はネットワークがもっと広がっていけばいいなと思っています。

今年の第2回「神田川アートブロッサム」では どんな内容を予定されているのでしょうか?

ワークショップは先ほどお話しした封筒のワークショップのほかにも、ステンドグラス、切り絵、写真、キッチンを使ったワークショップなど、去年の倍くらいの企画を開催する予定です。また、去年と同じように地域の工房やお店をめぐるスタンプラリーもやる予定です。今年から始めるものとしては、スマホなどを使って、街歩きをしている中で写真を撮ってもらって、それを集めて展示するという企画も予定しています。写真を通じて、「こういう街の見方もあるんだね」と、江戸川橋エリアの新しい魅力を発見したり、感じたりしてもらえればいいですね。あとは、協力してくださるギャラリーでは展覧会が開催されていたり、美術館の展示などもありますし、ブックマーケットも新しくやってみようかなと思っています。絵本とかアートの本を、皆から募って、気に入ったら持って帰ってもらおうと思っています。“江戸川橋エリアの春の風物詩”みたいに、これが定番化していくと面白いですね。こういうのは一回やったら大成功という話じゃないですから。昨年は人集めに苦労しましたし、今年も多分苦労するんじゃないかと思いますが、認知度を高めて、協力してくれる人も増やして、今後もっと盛り上げていければいいですね。

今後の「神田川アートブロッサム」の活動として、 どんなことを実現していきたいですか?
  • 江戸川橋エリアは暮らすにはいいところなんですが、知名度が低いので、「もうちょっといい感じにならないかな」という漠然とした思いはあります。かと言って、なんでもいいから建物を建てて、やたらに人を集めて、という方向にはなってほしくないんです。ここだけにしかない“オリジナル”の街になるといいですよね。街がもとから持っている「ストック」を生かした街づくりから進んでいけばいいなと思っていて、それを実現するひとつの手段が、「神田川アートブロッサム」だと思っています。
    「江戸川橋に行けば何かちょっと面白いショップがある」とか、「ギャラリーが点在している」とか、そういう「面白い街」というイメージになっていけばいいな、と思っています。
■インタビュー時期:(本インタビューは2015年2月に行われたものです。)
■取材協力:神田川アートブロッサム https://ja-jp.facebook.com/kandagawa.artblossom
我楽田工房(がらくたこうぼう) http://garakuta.tokyo/
(掲載の情報は2015年9月時点のものです。)
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