大和ハウス工業株式会社

DaiwaHouse

D's Lab Report 03 “より良い未来”を研究する総技研の技術を紹介します。

IoTやAIを活用した住宅のスマート化が目覚ましいスピードで進んでいます。
しかし、目の前には多くの課題があります。機器ごとに異なる通信方法やデータ形式への対応、
プライバシー情報の扱いやセキュリティー対策、システム開発や運用にかかるコスト償却…。
こうした課題の解決に向けて、大和ハウス工業は経済産業省の実証事業に参加しました。

IoTや音声認識などの最新技術を活用 スマートホームクラウドの構築とサービス検証

BACKGROUND

IoTを活用した社会システムの整備

IoTの発展によるデータ収集能力やAIによるデータ分析能力が高度化することで、今後さまざまな分野で技術や生産性の向上、新たなビジネスモデルの創出が期待されています。例えば、さらなる省エネのために、ユーザーの⽣活パターンや気象変化のデータを活⽤し、設備機器を⾃動制御する。建物の⻑寿命化に向けて、周辺環境や住設機器の稼働状況をもとに、遠隔保守を行う。建築分野においても多様な事例が想定されています。

大和ハウス工業は、家庭内のデータを活用した社会課題の解決、新たなビジネスモデルの創出などを目的とした経済産業省の「IoTを活用した社会システム整備事業」に参加。スマートハウスのデータ収集・機器制御機能と、IoT機器・AI・Webサービスを連携した情報基盤システムの実証を行いました。

CONCEPT

すべてを連携させて新たな複合的サービスを

開発コンセプトは、「スマートハウスとIoTの課題をクラウド連携で解決し、機器単体ではできない複合的なサービスによる新たな付加価値創出につなげる」ことです。
2011年にHEMS※1の標準規格としてECHONET Lite※2が推奨され、念願だったホームネットワークが実現しました。しかし、いわゆる「エネルギーの見える化」だけでは、お客さまにとってのベネフィットがわかりにくいのが現状です。一方、スマートロックなど、スマートフォンで手軽に利用できるIoT機器が登場してきたものの、通信プロトコルが異なるので活用することができません。
そこで、スマートハウスの住宅設備とIoT機器をクラウドサーバーで連携し、シームレスに扱える情報基盤を開発することで、課題解決につなげたいと考えました。

  1. Home Energy Management Systemの略
  2. 一般社団法人エコーネットコンソーシアムにて策定された家電や設備機器を制御するための通信プロトコル。当社D-HEMSでも活用。

SYSTEM

メーカーや機器の違いを意識せず使えること

システム構築のポイントは、メーカーや機器の違いを意識することなく、統一された命令(統合住宅API)を使ってサービスの開発ができるようにした点です。市販のIoT機器やWebサービス、建物内に設置するデータ収集サーバーを連携し、個々の機器・サービスを統合するクラウドサーバーシステムを構築しました。その特徴をご紹介します。

情報基盤のイメージ

(1)市販の機器やサービスを活用したコスト削減

サービス連携用コマンド(API)を活用し、市販の機器やサービスと接続することで、開発コストや運用コストを削減しました。APIとはApplication Programming Interfaceの略で、さまざまなサービスを素早く簡単に開発できるインターフェイスです。
連携の中心となるサーバーには、IoT機器との通信や機械学習など多様な機能を利用できるAmazon Web Services(AWS)を活用。一からプログラムする必要がなく、使った分だけ料金を支払う仕組みにより、初期開発コストや運用費の負担を軽減できます。

(2)複数の機能を組み合わせた自動化・カスタマイズ

多様なIoT機器やWebサービスとの接続には、ヤフー株式会社の「myThings Developers」を活用。40種類以上のWebサービスやIoT製品と連携済みで、「もし○○なら××する」といった条件設定により、サービスの自動化やカスタマイズが可能になります。
例えば、温度センサーとエアコンや電動窓を連動し、真夏の寝苦しさを解消。連携した機能を組み合わせることで、従来のHEMSでは難しかった複合的なサービスが可能になります。また、スマートフォンでの操作に加え、音声認識やSNSへのプッシュ通知など、ユーザーの好みに合わせた操作・通知方法が選択できるようになります。

2020年1月29日にてサービス終了。現在はIFTTTなどの代替えサービスを検討中。

myThings developersの概念 myThings developersの概念

myThings Developers の
概念

(3)宅内/クラウド経由での制御を両立できるコントローラー

住宅に設置される設備機器は、インターネット接続がない状況でも動作すること、長期利用を前提に通信手段の変化に対応できることが求められます。当社では以前より、宅内に設置するホームサーバーにAPIを搭載し、iPadなどの表示端末やクラウドサーバーと連携させる「住宅API」を提案してきました。今回、住宅APIをクラウドサーバーから制御する仕組みを開発し、宅内とクラウドサーバー経由での制御を両立できる新たなコントローラーを開発しました。

DEMO

家庭での使い心地を実証する

上記を活用して開発したサービスについて、30件のモニター家庭を募集し、IoT機器や通信機器を設置。実際の生活で使ってもらった上で、サービスの有用性や実用化に向けた課題を調査しました。
実施にあたっては、スマートフォンアプリでON/OFFや調光ができるLED照明、音声でのエアコン操作や天気予報を教えてくれるコミュニケーションロボット「BOCCO」、ECHONET対応のエアコンやスマートメーターなどを設置。各社のサービスをまとめて操作できるスマートフォン画面、音声による家電操作や生活情報配信サービスなどをご提供しました。

モニター実証の概要念 モニター実証の概要

モニター実証の概要

(1)お客さまモニターの評価

比較1 個々のアプリで操作⇔まとめて操作

複数のサービスをまとめて操作できるスマートフォン画面と個々のアプリでの操作はどちらが便利ですか?

75%強のモニターが前者を支持。スマートフォンアプリが増えてかえって操作がしづらい、スマートフォンの容量が気になるといった意見もあり、実際の使い勝手というよりも「まとめる」というキーワードが評価されたものと思われます。

複数のサービスをまとめて操作できるスマートフォン画面と個々のアプリでの操作はどちらが便利ですか?

比較2 スマートフォンで操作⇔音声で操作

スマホでと音声での操作ではどちらが便利だと思いますか?

回答は「スマートフォンによる操作」、「音声による操作」、「操作内容による」に三分されました。どれが最適かということではなく、利用シーンに応じて適切に選択できることが重要と考えられます。

スマホでと音声での操作ではどちらが便利だと思いますか?

継続して使いたいサービス

最も評価が高かったのは「スマートフォン画面での鍵の開閉や消費電力モニター」。次いで評価が高かったのは「毎朝天気予報を音声で通知してくれるサービス」です。意外にもIoT機器の代表格といえるLED照明については低い評価となりました。どう使いこなせば良いかわからないという意見もあり、「わかりやすくシンプルなサービス」が求められていると思われます。
開発者は、とかく技術目線でIoT機器を捉えがちですが、最新機能のご提供だけでなく、利用シーンも合わせてご提案する重要性を改めて認識させられました。

継続して使いたいサービス 継続して使いたいサービス

(2)運用上の課題

実証にあたり、市販のIoT機器を住宅設備として施工しましたが、設定業者がお客さまのスマートフォンを操作しなくてはならない、各社で異なる設定方法や頻繁なアプリ更新に対応していく必要があるなど、施工体制の整備には多くの課題が見受けられました。大半のIoT機器がユーザー自身による設定を前提とした設計になっているためです。今後、専用設定画面の追加や設定方法の標準化など、BtoB向けの開発が必要と思われます。

FUTURE

どんな建物でも、新築・中古を問わずスマート化

本システムは、最新の無線技術も取り入れ、住宅・建築、新築・中古を問わず活用できるよう汎用的に設計しています。すでに建築設備制御で一般的な通信プロトコルのModbusやBACnetにも対応させており、HEMS/BEMSに対応できるハイブリッドなシステムとして開発を進めています。ぜひ今後にもご期待ください。

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