「地震に強い住まい」とよく耳にしますが、問題はその中身です。
本震だけでなく、余震にも耐え続け、巨大な揺れから住まいを守れてこそ、本当に「地震に強い」と言えるはず。
その課題に挑戦したのが、エネルギー吸収型耐力壁「KyureK(キュレック)」です。
低コスト化を図りながら、地震による建物の変形を大幅に低減するという高い目標を追求。
結果として、内外装の損傷を抑え、地震後の修繕コスト低減にもつながります。
MISSION
耐力壁のエネルギー吸収能力をさらに高めよ
大和ハウス工業の主力住宅商品である「xevoΣ(ジーヴォシグマ)」。独自のΣ形デバイスが地震エネルギーを効果的に吸収し、震度7クラスの地震に連続して耐えることができる住まいです。構造上、重要な要素である耐力壁には、エネルギー吸収型耐力壁「D-NΣQST(ディーネクスト)」を標準搭載しています。
xevoΣの耐震性能は、実大三次元震動破壊実験施設「E-ディフェンス(通称)」での実大振動実験※、2016年4月の熊本地震などを経て実証され、お客さまから高い信頼を得ています。
そこからさらなるステップアップを目指し、建物の変形をさらに小さくできるオプション仕様を開発することになりました。完成したのが、xevoΣの耐力壁D-NΣQSTのエネルギー吸収能力をより高めた新型耐力壁「KyureK」です。初期剛性を1.5倍にすることで、エネルギー吸収力を1.3倍に高め、内外装の被害をさらに抑えることに成功しました。
実験では、観測史上最大の地震波の最大速度を上回る最大速度175kineの地震波を繰り返し与えました。この実験により、「xevoΣ」の構造は、繰り返し起こる地震に対して高い耐震性能を持続することが実証されました。
エネルギー吸収型耐力壁
「KyureK(キュレック)」
POLICY
フレームはNからKへ、Σ形デバイスは×2に
エネルギー吸収型耐力壁「KyureK」の開発にあたり、巨大地震が起こった時に内外装の損傷を低減することを目的とし、コストを抑えてエネルギー吸収能力を高めるための開発方針を定めました。
- (1) 耐震性能が実証されている「Σ形デバイス」を使用する。
- (2) 耐力値を上げずに「初期剛性」のみを上げて、エネルギー吸収能力を高める。(耐力値が上がると、その周辺部材の補強も必要となり、コストが上がるため)
上記(1)(2)を満たすため、剛性を高めた「K形フレーム」に「Σ形デバイス」を組み合わせる構成としました。さらに、2つのΣ形デバイスを用いる「ダブルデバイス」とし、配置位置を工夫(令和3年3月現在、特許出願中)。デバイスや柱に作用する応力を低減してコストを抑えることにしました。
D-NΣQSTとの違いは、フレームをN形からK形に変えたこと、Σ形デバイスを2つに増やしたことです。
PERFORMANCE
新型耐力壁KyureKの実力とは
1)「かたさ」と「しなやかさ」を両立
「KyureK」は、K形フレームの中に「かたさ」と「しなやかさ」を併せ持つ独自のΣ形デバイスをバランス良く2つ配置しています。剛性の高いK形フレームとダブルのΣ形デバイスにより、エネルギー吸収能力がさらに高まり、揺れを抑える効果が大幅にアップしました。
2) 柱・梁の損傷を防いで壁クロスも破れにくく
では、「KyureK」の仕組みを見てみましょう。地震が起こると、Σ形デバイスが上下にしなやかに動き、デバイスに応力を集中させることで柱や梁の損傷を防ぎます。地震時の応力図(FEM解析)からも、Σ形デバイスの部分が赤くなり、大きな力が作用していることがわかります。
3) エネルギー吸収能力は1.3倍にUP
次に、xevoΣの耐力壁「D-NΣQST」と「KyureK」のエネルギー吸収量を比べてみましょう。面積が大きいほどエネルギー吸収能力が大きくなり、大地震の時に建物の変形が小さくなります。外側の青色部分が「KyureK」のエネルギー吸収量です。赤色の「D-NΣQST」に比べて1.3倍のエネルギー吸収能力があることが示されています。
「D-NΣQST」と「KyureK」のエネルギー吸収量
(実験値)
RESULT
持続型耐震技術の性能を検証する
耐力壁の実大試験として、(一財)日本建築センターの技術規定に準じて試験を行い、目標の耐力と変形性能をクリアすることができました。「D-NΣQST」に比べて初期剛性は1.5倍、耐力は同等という結果に。繰り返し載荷により荷重が大きく低下することもなく、十分な変形性能を有していることが確認できました。
PRODUCT
KyureKを「xevoΣ PREMIUM」に搭載
「KyureK」を用いた「xevoΣs+」仕様は、「xevoΣ PREMIUM(ジーヴォシグマ プレミアム)」と防災配慮住宅「災害に備える家」で標準採用しています。これらは内外装の損傷を大幅に低減し、より大きな安心をご提供できる住まいです。
これからの課題は、配置する耐力壁量が増える多雪区域でも、プランの自由度を向上させること。そして、巨大地震に耐え続け、地震後も安心して住み続けられる強い家を、より多くの人々へお届けしたいと考えています。
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総合技術研究所の技術研究開発に対する取り組み、成果についてわかりやすく紹介している情報発信誌です。
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