「自在に描く邸宅の新境地」 唯一無二の邸宅をつくるトップデザイナーチーム「ZIZAI」は、
なぜ生まれ、どこを目指すのか。
彼らの現在地を追い、未来を展望する。

大和ハウス工業株式会社 東京本社住宅事業本部 設計推進部 ZIZAIデザイン室 櫻井 恵三 KEIZO SAKURAI 大和ハウス工業株式会社 東京本社住宅事業本部 設計推進部 ZIZAIデザイン室 櫻井 恵三 KEIZO SAKURAI

大和ハウス工業株式会社 東京本社住宅事業本部 設計推進部 ZIZAIデザイン室

櫻井 恵三【KEIZO SAKURAI】

1988年4月:設計事務所に入社 以降、複数のハウスメーカーでキャリアを重ね、戸建住宅デザイン部門を牽引する立場を歴任

2019年2月:大和ハウス工業に入社

2021年4月:ZIZAIデザイン室開設、室長に就任

2021年5月:戸建住宅商品「Wood Residence MARE」発表

ZIZAIを象徴する戸建住宅MAREのスケッチZIZAIを象徴する戸建住宅MAREのスケッチ
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高い視座からロードマップを描く

Spirit of Hearts

組織内で選抜され、高いステージに挑む者たちがいる。F1に参戦する自動車メーカーのエンジニア。パリ・コレクションに参加するファッションブランドのデザイナー。大和ハウス工業にも特別なチームがある。ラグジュアリーな高級住宅をフルオーダーでつくるトップデザイナーチーム「ZIZAIデザイン室」だ。

ZIZAIの構想が生まれたのは2019年頃。当時、ほとんどのハウスメーカーが高級住宅専門のチームを抱える中、大和ハウス工業では、案件ごとに個々の設計士に委ねる体制が取られていた。

後発組が先頭へ抜け出すには、成功体験に裏打ちされた高い視座からロードマップを描ける人間が必要だった。その請負人として、一人のトップデザイナーが外部から招かれた。多くのハウスメーカーを渡り歩き、デザイン室立ち上げのノウハウを持つ櫻井だ。

入社した櫻井に託された使命は二つ。「高級住宅に特化したチームをつくること」。また、高級住宅の世界では自由度の高い木造が好まれる。鉄骨造を成熟させた大和ハウス工業で、「木造を引き上げること」も目標だった。

準備期間は2年間。最初の1年はチーム編成に充てた。社内に約700人いる設計士のうち、上位数%しかいないハウジングマイスター(住宅設計プロフェッショナルの認定制度)を中心に、全国に名を轟かせる設計士と水面下で面談。「ZIZAIがトップになるには、この人が絶対に必要だ」。そう思える人財を上層部に推薦した。

人選では、デザインのスキルだけでなく、「人間性」を重視した。櫻井は、富裕層のお客さまに対する時、最も大切なのはコミュニケーションの取り方だと知っていた。「お客さまが言われることを絶対に否定しない。まず受け入れ、理解して、より良いものをご提案する。しかし、プロとして『この土地や暮らし方には、これがベストだ』という答えも持ち合わせている。それをお客さまに共感していただくには、コミュニケーション能力が不可欠なのです」。

櫻井の横には、一緒に会社を渡り歩いてきた百戦錬磨のデザイナーたちもいた。「今度、大和ハウス工業へ行くことになった。付いてきてくれないか」。そう頼んだ当初は断られた、と櫻井は笑う。だが「もう一回、新しい人生を始めるのも面白いかもね」と大和ハウス工業の社員となって、櫻井をサポートしてくれた。共に次の1年、スキームづくりにも取り組んだ。

ZIZAIを象徴するアイコニックな商品も開発する。それが当社の最高級戸建住宅商品「Wood Residence MARE-希-(マレ)」である。

車でも家電でも住宅でも、メーカーのブランド商品は、コンセプトや形状が決まっている。しかし後発組の大和ハウス工業には、革新的な発想が必要だ。1つのブランド名を冠しながら、今までにないほど自由に、自在に。「MARE」のカタチに決まりはない。「MARE」はデザイナーの頭の中にある。ZIZAIデザイン室がデザインしたもの全てが「MARE」なのだ。

東京の駒沢展示場にある実棟も、MAREの一例だ。1階はRC造、2階は木造の「混構造」。大和ハウス工業が有する2つの構造体を融合した。

長期保証を裏付ける性能や品質のルールだけを定め、2021年5月、「MARE」を発表。ZIZAIデザイン室が本格的に始動した。

MAREを体感できる駒沢展示場

MAREを体感できる駒沢展示場

MAREはグッドデザイン賞を受賞

MAREはグッドデザイン賞を受賞

WEBギャラリーで邸宅デザインを公開

WEBギャラリーで邸宅デザインを公開

ZIZAIデザイン室のトップデザイナーたちZIZAIデザイン室のトップデザイナーたち
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デザインの世界に正解はない

Spirit of Hearts

ZIZAIのデザイナーたちは、一人ひとりが1つの組織のトップになれるほどレベルが高い。当然、個性の強さは言うまでもない。

室長の櫻井からして、そうだ。櫻井を評して「自由奔放」と言うデザイナーもいれば、「いろんな趣味を寝る間も惜しんで楽しむ。知識の幅が広く、常にアンテナを張り続けている」と言うディレクターもいる。

櫻井は、テレワークの時も環境を変えて楽しむ。アイデアを出す時は開放的なオープンスペースへ。集中する時は自宅にこもる。趣味はボクシングからフルコンタクト空手に変わり、週に数回、汗を流す。礼を重んじる空手道は、自らが目指す建築の根本につながっている。好きな読書も、新規開拓した飲食店の内装も、違う業界の友人との会話も、全てが建築のインスピレーションにつながっていく。

他のデザイナーたちの魅力を語る櫻井も楽しそうで、どこか誇らしげだ。「過去から現代まで世界中の建築家や作品を熟知した、まるで学者みたいな人」「デザインに長けていて、マネジメント能力まで高い人」「誰よりも仕事をするのに、家族のために休みをしっかり取って、旅行がてら海外の建築を見にいく人」「人望が厚く、多くの社員から『私、あの人の弟子なんです』と慕われる人」。

天才的なひらめきでお客さまを楽しませるエンターテイナータイプもいれば、お客さまの生活を深く理解し最適解を出すことに情熱を燃やすナビゲータータイプもいる。皆、年齢層はやや高いが、その分、経験値も高い。誰もが建築家として一国一城の主になれる。

だからこそ櫻井は、彼らのデザインを尊重する。批判的なアドバイスは絶対にしないと自らを戒める。自分が若い頃、コンペで大御所に批判され、カッとした経験もある。そんな思いを彼らにはさせたくない。「デザインの世界に正解はない。お客さまが『良い』と思ってくださったら、それが正解なのです」。

開放的な環境が創造性を刺激する

開放的な環境が創造性を刺激する

空手の稽古や黙想で自分を鍛える

空手の稽古や黙想で自分を鍛える

熱海のまちや海を一望するセカンドハウス熱海のまちや海を一望するセカンドハウス
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唯一無二にたどり着くまで

Spirit of Hearts

熱海の海をのぞむ高台のセカンドハウスは、櫻井が設計した邸宅だ。

経営者であるオーナーさまは、「商談や社員の福利厚生、家族や仲間とも使える建物を」とお考えに。当初は別の会社に声をかけられていたが、ご提案の機会をいただいた。

櫻井は初めて現地を訪れた時、「海が見えて、緑が見えて、熱海城も見える。この素晴らしいVIEW(眺望)をどう生かせば、土地のポテンシャルを最大限に引き出せるか」を考えた。

描いたプランは3階建て。最上階に、LDKと海が見えるルーフバルコニー。両サイドに隣接建物が迫る中、窓をどの方向に向ければ、VIEWを美しく切り取れるか。3階フロアをどこまで高くすれば、見晴らしを確保できるか。

土地はほとんどが斜面になっていた。通常なら深基礎にするが、オーナーさまは車を何台も停められる駐車場をご希望だった。そこで擁壁と盛土で土地を平らにし、その上に建物と駐車場をつくることにした。

だが、どうしても3階フロアの高さが足りない。櫻井は、擁壁と盛土の高さをさらに上げるプランをご提案した。当然、費用も上がる。見積もりを見たオーナーさまは驚かれた。それでも櫻井は、これがベストだと確信していた。VIEWの見え方、コストの抑え方、将来の資産価値……。櫻井の想いにオーナーさまが理解を示してくださり、ついに唯一無二の邸宅が完成した。

その後、そびえ立つ高い擁壁は、眺望という資産価値につながり、不動産業者や不動産オーナー、熱海で豪邸を探す人から高い評価を得たという。

オーナーさまは「櫻井さんは、こちらが希望することを100%受け入れて、寄り添って、限界まで練ってくれました。過去に何人ものデザイナーや設計士に建築を依頼してきましたが、全く違う。本当にプロフェッショナルな人でした」とおっしゃってくださった。

富裕層のお客さまは、ご自分の求めるものが明確で、ご提案に共感いただいた時の決断が早い。逆に、こちらが失敗した時の決断も早く、シビアだ。櫻井は「どんな時も誠実に対応するだけです。もし間違っても、ごまかしも言い訳もしない。正直にお伝えし、お詫びをして、解決策を出す。この3つを誠実に行うしかないんです」と姿勢を正す。

引き算のデザインで美を生む

引き算のデザインで美を生む

オーナーさまや営業担当者と談笑

オーナーさまや営業担当者と談笑

日本の住宅をけん引するチームでありたい日本の住宅をけん引するチームでありたい
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先頭に立ち、今一歩、踏み込め

Spirit of Hearts

ZIZAIは、基本設計を行う「デザイナーチーム」と、実施設計等を行う「ディレクターチーム」で構成されている。後者には3Dモデリングやインテリアコーディネートを担うメンバーも在籍する。

建築業界では基本設計をフロント、実施設計をバックと呼ぶことがあるが、櫻井は「この呼び方をZIZAIでは禁止している」と憤る。「いくらデザイナーが絵を描いても、ディレクターがきちんと図面にしないと建物はできない。双方は対等なんだ」と常々メンバーに伝えている。

全員を同格とする櫻井の考えは、チームミーティングにも表れる。東京・大阪の全メンバーがオンラインで、時にはリアルで週1回集合。その中で、毎回1人が自由なテーマでスピーチをする時間がある。目的は東京・大阪の距離感を縮め、人となりを知ることだったが、続けるうちにクオリティーが上がりすぎ、今では作り込んだ資料によるプレゼンの様相を呈している。

おかげで、メンバーの得意分野や経験が知れて、チームを越えて情報を交換することが増えた。「ガレージをつくる」と言えば車好きがあれこれ話し、「庭に樽型のバレルサウナを置きたい」とチャットに書き込めば、寄ってたかって建ぺい率や電源を調べ出す。このチームワークが、お客さまへの提案に深みと広がりをもたらしている。

人を育てる櫻井の視線は、住宅事業部全体にも向けられている。ZIZAI発足時から設計者向けの社内WEBセミナーを続け、2024年度は集大成として「ZIZAIデザイン室が考えるデザイン」を全6回シリーズで公開。社内マニュアルとして活用する。公式サイトで公開している「施工実例」や、バーチャル展示場のような「デジタルショールーム」の動画も学びの材料だ。

高い審美眼を持つ富裕層に鍛えられたZIZAIの知見や経験は、標準的な住宅や住宅以外のプロジェクトでも力を発揮するだろう。ホテルの内装をZIZAIが監修するプロジェクトも動いている。

新しいことへの挑戦は、多大な苦労を伴う。ましてや外部から来た櫻井にとって、大和ハウス工業は組織としてのルールやシステムが確立されている分、壁を越えるのはハードルが高い。

それでも櫻井は、創業者精神の「今一歩、踏み込め」という言葉に深い共感を覚える。かつて在籍した会社も、踏み込むことを恐れなかったから、今の発展がある。大和ハウス工業でもZIZAIデザイン室が突破口になり、新しい世界に踏み込んでいけばいい。ZIZAIだけではない。大和ハウス工業にいるすべての設計士、皆にそのポテンシャルがあると信じている。

メンバー全員が対等に向き合う

メンバー全員が対等に向き合う

デザイナーとディレクターが協働

デザイナーとディレクターが協働

※掲載の情報は2024年12月時点のものです。

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