「新築から『再生と循環』へ」
-Livness事業-
建物をつくった者としての責任を果たし、社会へ再び循環させる。壮大な夢を追って、大和ハウスグループ横断の不動産ストック事業
「Livness(リブネス)」が立ち上がった。
ストック型社会の到来を見据えて
自動車であれ、家電であれ、モノをつくる「メーカー」は、新しい商品を開発して世に送り出すことを使命としてきた。ハウスメーカーの顔を持つ大和ハウスグループもまた、「新築」の住宅をはじめとして、マンションや賃貸住宅、事業施設などを提供し、今日に至っている。
しかしながら日本では首都圏への人口集中や少子高齢化など、さまざまな社会変化を受けて空き家が増加し、1988年からの20年間で約1.5倍の849万戸に達した※1。
状況を重く見た政府は、「新築」前提から「既存住宅」、いわゆる中古住宅を末永く使っていくことを主軸とした政策に転換。2040年には、市場に供給される住宅の3戸に1戸が既存住宅になると予測されている※2。
大和ハウスグループでも、ストック型社会の到来を見据え、住宅やマンションを含む既存建物を再生・循環させる事業に早くから取り組んでいた。しかし、そこには大きな問題があった。
お客さま視点に立ってみよう。大和ハウス工業で住宅を新築したお客さまが、転勤することになり「自宅を売却したい」と考えたとする。
「さて、どこに依頼すればいいのだろう?ダイワハウスは新築が専門らしい。しかたがないので自分で仲介業者を探そうと思うものの、業者の数が多く、一体どう選ぶのがいいものか…」
もちろん大和ハウスグループには既存建物を扱う会社が数多くある。不動産の仲介や買取販売、リノベーション、インテリアコーディネート、賃貸管理など、あらゆる方面からお客さまをサポートしている。ただ、これらのサービスを各社が独立して展開しているため企業間の連携が取れておらず、いつの間にかお客さまとの関係が断ち切れてしまっていたのだ。
※1 平成30年住宅・土地統計調査(総務省)
※2 NRI「2040年の住宅市場と課題」(2022年6月9日発表)
8つの会社が壁を越えて1つに
「どこに相談したらいいかわからない」というお客さまの戸惑いを解消するには、大和ハウスグループが文字どおり「1つ」になって事を進めなくては。
まずは住宅からだ。戸建住宅やマンションなどを建てて販売する大和ハウス工業、それを流通させる大和ハウスリアルエステート(以下、「DHリアルエステート」)※3を中心に、グループ8社※4が集結。これほど大規模なグループ横断事業は、創業以来初めての試みだった。
事業名は「Livness(リブネス)」。既存住宅を売ったり、買ったり、賃貸したり、リノベーションしたいというあらゆるニーズにワンストップで対応できるようにしよう。そうすればこれまで応えきれていなかったお客さまもフォローできる。推進役となった大和ハウス工業の平井は、そう信じる一方で、不安も覚えていた。
グループとはいえ、それぞれに経営方針がある。事業領域が重複し、一部では競合することも。会議が始まると「総論賛成、各論反対」で場は紛糾。DHリアルエステートの間宮もまた「各社で業務が重複し、利益が相反する可能性もある」と考えていた。しかし、ストック事業の理想を信じ、各社の代表者と根気強く対話を重ねる平井を見て、心配は杞憂に終わると確信した。その後、各社の理解を得て、ついに企業の壁を超えたリブネス事業を創り上げるチームが発足した。
チームはまず、グループで協業する仕組みづくりに取り掛かる。課題は「全国対応」だった。大和ハウス工業の戸建住宅やマンションは全国で展開しているが、それを支えるグループ会社は、都市圏を中心に活動する会社もあれば、地方中心の会社もある。しかし、全国で同じクオリティのサービスを提供することは、リブネスに必要不可欠だ。
そこでリブネスの全国ネットワークをつくるべく、各地域の協力業者50社、100社の中から信頼のおける数社を推薦してもらい、提携を結ぶためにチームメンバーが全国を飛び回った。リブネスの中身も固まっていなかったが、ストック事業の理想像を全国のグループ会社社員に、協力業者の方々に説いて回った。
※3 当時の社名は「日本住宅流通」、2023年1月に「大和ハウスリアルエステート」に社名変更
※4 Livness参画企業:大和ハウス工業、大和ハウスリアルエステート、大和ハウスリフォーム、大和ハウス賃貸リフォーム、大和ライフネクスト、大和リビング、コスモスイニシア、デザインアーク(2023年2月現在)
お客さまにとってのベストな解決策
2018年1月、ストック事業ブランド「Livness(リブネス)」が正式に誕生する。
新しいことを浸透させるには時間がかかる。大和ハウス工業の社員は、新築住宅と同様に、既存住宅も手厚くサポートするマインドに意識を改革する必要があった。現場で営業する社員にも、お客さまと接することがないグループ会社社員にも理解してもらわなければ、事業は成立しなかった。
そこで、グループ間の紹介制度を含めた規定や、業界先駆者であるDHリアルエステートの協力で教育体制の整備を進めた。2020年度には大和ハウス工業の住宅事業部内にリブネス課をつくり、2023年2月現在では全国62拠点に95名のリブネス営業担当者を配属している。
トップも不退転の決意で臨む。大和ハウス工業の社長、芳井は全従業員の名刺に「Livness」のロゴを入れるよう通達し、覚悟を示した。DHリアルエステートは、店舗看板の一番上に「Livness」のロゴを掲示し、ストック事業の中核を担う強い意志を表した。
リブネスを展開した当初、DHリアルエステート広島店 店長の沼田は「一人のお客さまをグループ間で取り合うことになるのでは」と協業を不安視していたが、その懸念は払拭された。
大和ハウス工業広島支社には、住宅、集合住宅、流通店舗、建築、環境エネルギーの事業部があり、そこから上がってくるさまざまなお客さまとお住まいの情報をリブネス課が集約する。不動産に関する疑問を気軽にご相談いただけるよう、WEB上に開設した「暮らしの総合窓口」からの情報も入ってくる。
それらをリブネス課とDHリアルエステートで共有し、どの会社が担当し、どんなご提案をすることが「お客さまにとってのベストな解決策になるか」を考えるのだ。積極的に情報を共有し、それぞれの会社が持つノウハウを最大限に発揮する。「広島モデル」の成功は、リブネス事業の進むべき未来を照らしている。
つくって終わりではなく、その先も共に
グループの連携力を活かした事例も多い。
かつて広島の勝木台団地で大和ハウス工業が約800戸の住宅を分譲した。その中に、土地は大和ハウス工業が所有し、土地を借り受けたお客さまが家を建てて所有する「定期借地権付き住宅」がある。
1軒のオーナーさまからDHリアルエステートに「家を売りたい」とご依頼をいただいた。土地と建物の所有者が違うので、なかなか難しい案件なのだが、DHリアルエステートが大和ハウス工業とオーナーさま、それぞれと媒介契約を結ぶことで問題を解決。土地・建物のセット価格を設定して売却活動をスタートし、無事に買い主さまが見つかった。さらに建物の初期保証が切れるタイミングだったため、大和ハウスリフォームが補修・リフレッシュ工事を行い、保証も延長。買い主のお客さまに喜んでいただき、売り主のお客さまにも満足していただけた。
お客さまのためにできることは他にもある。住まいを貸し出すときの入居者募集や管理も、転居先の住まい探しも、高齢者向け施設のご紹介もできる。その姿勢を表した言葉が「家と人生のプロがいる」というスローガンだ。単なる「不動産仲介業者」として大きくなりたいわけではない。お客さまに寄り添い、未来へと住み継がれる住まいの循環をつくる。この想いがリブネスの原動力となっている。
今やリブネスは住宅だけにとどまらず、事業施設なども含めた不動産ストック事業を包括するブランドへと成長した。建物の再生やコンバージョン、投資用再生不動産も手掛けている。
だが、道はまだ半ばであり、理想には届いていない。私たちの創業者は「先の先を読め」と常々諭した。その言葉は今も私たちを導いている。建物をつくって終わり、ではない。お客さまの人生や地域社会、地球環境の「先の先」まで見て、共に歩み続けていかなくては。それが大和ハウスグループの責任であり、リブネスに関わるすべての者の夢なのだ。
※掲載の情報は2023年2月時点のものです。