大和ハウスグループのまちづくり事例
全戸HEMS+3つの電池でまちごとエネルギーを見える化
SMA×ECO CITY つくば研究学園
(分譲済)
「スマ・エコシティつくば研究学園」は、環境モデル都市つくば市のコミュニティ型低炭素モデル街区として位置付けられたまちです。3つの電池を搭載した戸建住宅や電線地中化、住民の省CO2活動支援などにより、低炭素型ライフスタイルの実現を推進しています。
- 開発面積:51,420.46m2
- 総戸数:戸建住宅175区画、集会所1区画
つくば市は、人々の暮らしに起因するCO2を重点的に削減する「つくば環境スタイル“SMILe”」により、平成25年3月、国から環境モデル都市に選定されました。本計画地周辺エリアを「コミュニティ型低炭素モデル街区」に位置づけ、大規模住宅地としてスマートシティの実現を目指していました。
当社は、「つくば環境スタイル“SMILe”」と、自社の「SMA×ECO PROJECT(スマ・エコ プロジェクト)」との連携を図り、モデル街区としての先駆的な住環境づくりを検討。戸建住宅のすべてにHEMS※+3つの電池(太陽光発電システム、家庭用リチウムイオン蓄電池、燃料電池)を装備し、「まちごとエネルギーの見える化」に取り組むことになりました。
開発当時、このような取り組みは国内では例が少なく、国が推進するスマートシティ構想の中で東京近郊の大規模な戸建住宅団地として認められ、平成24年度には国土交通省の「まち・住まい・交通の創蓄省エネルギー化モデル構築支援事業」に選定。事業手法などについて有識者の助言を得ることができました。
「スマ・エコシティつくば研究学園」は、モデル街区周辺では先駆けとなる事業であり、行政は課題として、今後の低炭素型まちづくりに向けた市民意識の醸成、実地データの取得、企業・大学との連携などを挙げていました。地域においては、先行整備された隣接戸建住宅街区への計画上の配慮や、同時に進行した隣接のマンション計画との一体性の構築が求められ、これらの課題にも取り組みました。
※ホーム・エネルギー・マネジメント・システム。ICT 技術の活用により、人に代わって住宅のエネルギー管理などを支援するシステム。
台風被害の経験を生かして電線を地中化
開発当時、つくば市内で台風などの大風で電柱が倒壊し、停電する被害がありました。その対策として電線地中化を実施し、安心のご提供につなげました。
集会所に非常時に備えて発電機を設置し、災害時の電源を確保しています。
街区内の車道の一部において、インターロッキングで舗装を行い、交差点部分であることを車の運転者に気づかせる工夫を行っています。さらに、歩行者専用道を多く確保し、歩行者動線と車動線との交差も少なくなるよう計画しています。
まち全体でエネルギーの見える化を推進
インターロッキング舗装のイメージハンプで車の運転者に注意喚起
団地管理組合等の主導で市や大学と連携して活動
コミュニティの維持・向上のため、自治会の立ち上げを当社グループで支援。共有物を管理する団地管理組合と役割を分担しながら、立ち上げをサポートしました。当初は集会所に支援スタッフを常駐させ、住民による集会所利用の活性化を図りました。
「スマ・エコシティつくば研究学園」の戸建住宅街区は、隣接するマンションや既存戸建街区と一体で、当社を含めた共同企業体JVが開発した街区です。街区全体でも住民間のコミュニティが形成できるよう、相互の自治会間の連絡会立ち上げを支援しました。
住民のコミュニティへの参加意識を高める啓発・広報活動が展開され、団地管理組合や自治会主導で大学・研究機関・市と連携してさまざまな取り組みが行なわれ、2014年度・2016年度・2017年度の連携結果についてはセミナーやフォーラムが開催されました。また、大学まちづくり事例見学の受け入れや研究機関のフィールドとして提供するなど、教育・学術にも貢献されています。さらに、年2回の区会誌発行、理事会による景観ルール図解ハンドブックの作成、毎夏のイベント開催なども行なわれています。
住民の環境活動や交流の拠点となる集会所
住民が主体的に景観を維持する体制づくり
集会所、共有地、緩衝緑地などの共有資産を今後も継続して維持できるよう、団地管理組合の設立をサポートしました。
住戸外観や宅地緑化の水準を維持するため、景観協定(市認可)を制定し、併せて住民間で持続的に景観協定を維持していただく仕組みとして景観協定委員会を設立しています。委員会活動開始の初期には、専門家に景観協定委員会へのアドバイザーを委託し、活動を支援しました。
無電柱化したことにより良好な景観が形成され、自動車メーカーのTVCMにも使われました。
景観・環境美化の取り組みとして、自治会による「クリーンデー」、団地管理組合によるまちあるき(景観巡視)が行われています。
管理組合の運営事務は、大和ライフネクスト株式会社がサポートしています。
HEMS+3つの電池を全戸に搭載
全戸に3つの電池(太陽光発電システム、家庭用リチウムイオン蓄電池、燃料電池)を搭載し、ZEH(※1)相当の仕様を採用。これまで当社になかった175戸という規模で全戸ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(D-HEMS+3つの電池)を実現しています。
「エネルギーのまちごと見える化」を推進し、街区全体の電気・水道・ガスやCO2の状況が分かる仕組みを導入しました。(平成30年3月終了)
各戸の電力使用状況が視覚的に認識しやすいアイテムとして、手のひらサイズのロボット「ココナッチ」(※2)を全住戸の半数に設置しています。
電力使用状況をココナッチが視覚的にお知らせ
175区画の「まちごとエネルギーの見える化」で収集したエネルギーのデータは、つくば市へ提供し、つくば市のCO2削減における検証の一助となっています。また、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)内の低炭素社会戦略センター(LCS)、東京大学、芝浦工業大学の各研究機関においても分析が行われ、論文として発表されています。
スマ・エコシティつくば研究学園サスティナブル コミュニティフォーラム 2018での「エネルギーモニタリング調査の報告」では、CO2排出量は、区域内世帯の年間二酸化炭素排出量平均値と統計値による一般家庭の平均世帯との比較で68%削減できたとの結果が得られました。概ね街区内の電力は、余剰家庭数>不足家庭数の状況となっており、ネット・ゼロ・エネルギータウンを実現した状況になっています。(発表者:芝浦工業大学 環境システム学科 准教授 磐田朋子様)
家庭用リチウムイオン蓄電池はエリーパワー株式会社が開発しました。
- ※1 年間の一次エネルギー消費量が概ねゼロになる住まい。
- ※2 LEDの光や音声等を使って情報を伝える、ユカイ工学株式会社のソーシャルロボット。
戸建住宅・マンションが一体となったコミュニティ
当戸建住宅街区と隣接マンション・既存戸建住宅街区は一体で開発した街区であり、連続性や統一性を考慮しました。先行して開発された既存戸建住宅街区とは、動線の一体性に配慮しながら計画を立案。同時進行していた隣接マンションとは、街区内の動線計画を一体的に計画した歩行者動線としました。
既存戸建住宅街区の住民の方々と、新設する公園や広場の計画について意見を交換。計画に反映するとともに、隣接する部分に緩衝緑地帯を設けています。
既存戸建街区の自治会に対して、新設の集会所をお使いいただけるようにするとともに、自治会用の倉庫も提供しています。
環境に対するつくば市のコンセプトを周知するため、ご入居者に対して、市の活動である「つくば環境スタイルサポーターズ」加入を購入時に促進しました。
集会所を利用し、市や大学、街区住民による低炭素のまちづくりや防犯、交通事故防止などの勉強会などを開催。初期は当社も参加し、その後は住民主体で行われています。
街区全体の中央に設けた公園
オーナー様の声
- 資産価値を維持する共有緑地や集会所を維持管理する為の管理組合とコミュニティ活動をする自治会の役割分担がうまくされていて、どちらも連携してうまく機能していると感じる。
- 集会所が人の集まる場所の核になり、お祭りや健康や趣味などで活用されているだけでなく、市や大学と連携し防犯や環境のセミナーなどが開催されている。
- 同時期に完成した隣接マンション街区、既存隣接住宅地の自治会との協議会が準備されていたことでその後の周辺とのコミュニティ形成が円滑になり、いまでは、集会所は周辺の自治会との会合などでも利用され、周辺地域にも貢献している。
- 集会所の利用や景観ルールなどについて、事業者が主導したが最初のルール作りや立上初期の部分に留めて頂いたおかげで、その後の支援はあっても、住民でルールのカスタマイズやイベントを主導をしてきた為、住民参加意識の高い、持続可能なコミュニティが形成されたと思います。
- 公園や広場が子どもたちの通学、通園の待ち合わせ場所に利用されている。
- 景観協定が守られ、良好な景観が維持されているのは、よいと思う。
- 緑が豊富で街並みがきれいで満足している。
- 住民の間でもまちのコンセプトについての理解があり、景観維持や省CO2に対する意識が高い気がする。
- 宅地前の道路が車の通り抜けが少なくなるように歩行者専用の道路が配置されていて、子どもが宅地前の道路で遊ぶこともあり安心できる。
※オーナー様の声は2019年時点のものです。
専門家の声
芝浦⼯業⼤学 環境システム学科 准教授
磐田 朋子 様
私は国土交通省の「まち・住まい・交通の創蓄省エネルギー化モデル構築支援事業」をきっかけに、スマ・エコシティつくば研究学園に関わらせて頂きました。
スマ・エコシティつくば研究学園が他のスマートシティと異なる点は、街区で取得されたデータを企業や大学などの専門機関と連携し、街の未来のために活用できる仕組みが整っている点にあると思います。
本学においても、将来の暮らしに起こり得る変化に備えた検討(例えば家族構成の変化や電気自動車の普及を想定したシミュレーションなど)を街区で取得されたデータに基づいて行っていますが、その検討結果が居住者にフィードバックされなければ何の意味も成しません。
スマ・エコシティつくば研究学園は、街びらきの当初から住民間コミュニティの形成に力を入れているため、住民主体の自治がしっかりと機能しています。専門機関での検討結果をフィードバックする場として、このようなコミュニティの存在は非常に重要です。
住民が核となり、街の未来をより良くするために進化していく可能性を秘めたこの街に、研究者の立場として今後も期待しています。
当社担当者の声
「スマ・エコシティつくば研究学園」は、スマートシティの取り組みとして当時、社内ではいくつか並行して行われている中で最も大規模なものでした。
省CO2に寄与する各戸の設備をどのような手法で導入していくか、団地管理組合や景観協定についてもこれまでの事例をもとにどのようなルールであれば持続可能なのか等、スタッフ間でよく議論を重ね、アイデアを出し合ったことを思い出します。
2013年にまちびらきして以降、住民の方々や隣接街区の方々、市・大学機関も含めた活発なコミュニティ活動が行われているとお聞きしており、このプロジェクトに関われたことを誇りに思っています。
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