大和ハウスグループ(大和リース株式会社)のまちづくり事例
公民連携のエリアマネジメントによる復興再生
キャッセン大船渡
2011年の東日本大震災で被災した岩手県大船渡市では、JR「大船渡」駅周辺地区の復興が進行中。まちの整備には、まちづくり会社を推進母体としたエリアマネジメントの手法が導入されました。
- 開発面積:10.4ha(土地区画整理事業区域全体:33.8ha)
- 商業エリア:ファクトリーショップ、ホテル、ショッピングセンター、商店街(飲食・物販・サービス)、ワイナリー・ものづくり施設 等
JR「大船渡」駅周辺地区では「交通、商業、産業、人の交流」など多様な機能を備えた中心市街地への再生が進められています。整備には行政・民間・市民などが協働し、まちの開発から管理運営まで配慮する「エリアマネジメント」が導入されています。
大船渡市では、エリアマネジメントを推進するパートナー企業を公募。被災直後から仮設商店街の建設に取り組み、官民連携事業や大規模商業施設の運営、環境配慮型事業などに実績のある大和リースが選出され、2014年3月、同市のエリアマネジメント・パートナーとなりました。大和リースは、エリアマネジメントの具体化に向けてサポート。商業施設の運営や賃貸の概念に関する基本的な考え方などを地元商業者にアドバイスしてきました。
エリアマネジメントの実働を担当するまちづくり会社の必要性を認識し、翌2015年に市・商工会議所・大和リースによる「まちづくり会社設立準備室」を発足。同年、市・商工会議所・地元企業・金融機関・大和リース出資のもと、後に都市再生推進法人(都市再生特別措置法)となる「株式会社キャッセン大船渡」を設立しました。株式会社キャッセン大船渡は、同社が借地人となる商業エリアの施設運営や景観維持、共通イベントの企画開催、生活者のコミュニティづくりなどを行っています。
エリアマネジメントの仕組み
職住分離の方針に基づき、中心市街地を商業で再生
大船渡市では土地区画整理事業区域33.8haのうち、JR「大船渡」駅周辺の市有地約10.4haを「津波復興拠点区域」としてまとめ、ここに商業エリア「キャッセン大船渡エリア」を整備。予想浸水深がおおむね2m以上の区域でもあるため、住宅や社会福祉施設などの建築は禁止され、職住分離の方針が打ち出されています。「キャッセン大船渡エリア」は下記の9つの街区で構成されています。
地元大手企業による出店。(1街区・3街区・6街区・9街区)
- ・菓子のファクトリーショップ
- ・ホテル
- ・ショッピングセンター
- ・水産加工場、飲食・物販店
株式会社キャッセン大船渡が借地人となって施設を整備。3つの街区のうち2つでは、キャッセン大船渡が運営する商業施設に地元商店街の店舗がテナントとして入居。高齢などで店舗を閉店する場合は、すみやかにテナントを入れ替え、シャッター商店街化を防ぎます。(2街区・5街区・8街区)
- ・商店街(飲食、物販、サービス)
- ・ワイナリー、ものづくり施設
地元の商店街協同組合が整備し、個別店舗がテナントとして入居。(4街区)
- ・商店街(飲食、物販、サービス)
新鮮な地魚など大船渡の食を味わえるフードヴィレッジ
モール&パティオは地域ニーズに応えた物販店舗が中心
地域経済を支え、新たな発展を生むテナントやスペース
地域の住民や企業、大船渡市や大船渡商工会議所などと連携し、実働リーダーとして公募したタウンマネジャーも加わった「株式会社キャッセン大船渡」を設立しました。
商業エリアの「キャッセン大船渡」には、住民の生活を支える日用品を扱う物販店舗、外部からの来街者を想定したホテルや産地直送のお店、地域のナイトタイムエコノミーに資する夜の飲食店などが出店しています。さらに、これから新しい物事を起こしていくインキュベーション機能を兼ねたコワーキングスペースや研修のためのコミュニティスペースも用意しています。
みんなで「100年後の大船渡人に引き継ぐまち」をつくっています
地域住民の交流が生まれるコミュニティスペース
「キャッセン大船渡」内に市民交流施設としてコミュニティスペースを設置。イベント・会議・セミナーなどに使用できるフリースペースです。また、スペース前の広場もイベントへの貸し出しを行っています。
大和リース株式会社担当者の声
エリアマネジメント・パートナー就任当時は、当社が無償で活動をしていることを地域の皆さまが警戒され、大変苦労しました。しかし、学生の時に阪神・淡路大震災で被災し、当時、無力だった自分が悔しかったことから、大船渡の復興の一助となりたい一心であることを伝え、行動することで、今では深い信頼関係を構築することができました。
「株式会社キャッセン大船渡」は津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金(商業施設等復興整備補助事業)を活用して商業施設を整備し、運営するだけではなく、施設を含めたエリア全域のマネジメントを実施する組織です。その真価が問われるのはこれからで、大船渡市の商業施設や地元を主導し、動かしていける組織に育てる必要があります。2017年に当社のエリアマネジメント・パートナー協定は終了しましたが、私たちは現在も「キャッセン大船渡」を支援し、スタッフや市職員の皆さまと一緒に活動を続けています。
応急仮設住宅はもちろんのこと、災害復旧・災害復興は大和リース、大和ハウスグループにとっての使命であり、SDGs達成に向けて社会的にも必要な事業です。私たちはこれからも大船渡市の復興を支えてまいります。
大和リース株式会社
民間活力研究所
久田 友和
受賞歴
- 第27回緑の環境プラン大賞 国土交通大臣賞
- 平成30年度国土交通省 地域づくり表彰 日本政策投資銀行賞
- 第12回日本都市計画家協会賞 日本優秀まちづくり賞
- 復興大臣感謝状
- 日本初、次世代のネット・ゼロ・エネルギー・タウン SMA×ECO TOWN 晴美台
- まちの売電収益を生活支援サービスで還元する新しいスマートタウン SMA×ECO TOWN 陽だまりの丘
- ニュータウンを再生する多世代循環型のまちづくり 緑が丘・三木青山団地再生事業
- 風・太陽・緑、自然の力を生かす水のまち レイクタウン美環の杜
- 日本初、戸建住宅間で電力を融通できるまち セキュレア豊田柿本
- 大型商業施設を含めた住・商一体のまちづくり 高尾サクラシティ
- 災害対策を充実させた北陸3県初のネット・ゼロ・エネルギー・タウン セキュレア豊田本町
- 全戸HEMS+3つの電池でまちごとエネルギーを見える化 SMA×ECO CITY つくば研究学園
- 公民連携のエリアマネジメントによる復興再生 キャッセン大船渡
- 日本最先端のバイオメディカルタウン キングスカイフロントA地区