共働き世帯が増加し、住宅ローンを夫婦二人で借りてマイホームを手に入れる人が増えてきています。
今回は夫婦で住宅ローンを借りる場合の方法と注意点をお伝えします。
住宅ローンを夫婦二人で借りると、一人で借りるよりも借入額を増やせたり、返済期間を短くしたりできます。しかし、借入額が多くなる分、気をつけるべきこともあります。
夫婦で住宅ローンを借りる方法はいくつかありますが、ローンを2本とするか(ペアローン)、1本とするかによって大きく分かれます(詳しくは下部参照)。ローンの組み方によって住宅ローン控除の対象や、団体信用生命保険で補填される範囲などが変わりますので、自分たちにとってどの組み方がふさわしいのか見極めてください。
住宅ローンの返済は長期にわたりますので、将来のライフスタイルの変化も考慮しなくてはなりません。子どもができ、産休や育休などで妻の収入が減ることも考えられます。夫婦二人の年収が多いからといって、無理に大きな額を借り入れるのは良くないでしょう。将来を見据えたローンの組み方が大事です。
また、返済中にどちらかが死亡するリスクもないとはいえません。ペアローンの場合、夫婦それぞれが団体信用生命保険に加入しますので、死亡した方のローンはゼロになりますが、残された方のローンは残ってしまいます。こういう場合に備え、団体信用生命保険に加えて、お互いの債務に相当する金額の生命保険に入ることで、万一の時に夫婦の住宅ローン全体をゼロにできます。
ローンが1本の場合、例えば夫がローン主債務者で、妻が連帯債務者もしくは連帯保証人になっている場合は、妻が亡くなっても原則としてローンは無くなりません。最近はこうした事態に備えるために、金利を上乗せすることで、連帯債務でも死亡や高度障がいになった時に債務がゼロになる住宅ローンがあります。また、フラット35では主債務者でなくても、団体信用生命保険に入ることができます(固定金利のみ)。
夫婦それぞれで住宅ローンを組んで計2本のローンを借りるペアローンは、借入額、金利のタイプ、返済期間など、個別に設定できます。住宅ローン控除は夫婦二人とも対象になりますが、事務手数料などの諸費用が二人分必要です。
次に、ローンは1本で夫婦の収入を合算して融資を受ける連帯債務、連帯保証の方法です。一人でローンを組むよりも融資額は多くなりますし、事務手数料などの諸費用も一人分で済みます。夫婦のどちらかが主債務者になり、もうひとりは連帯債務者か連帯保証人になりますが、どちらも、借入額全額に対して責任があります。但し、連帯保証人は債務者ではないので、住宅ローン控除は対象外となります。
※金融機関によって異なる場合があります。
ペアローンは、夫婦どちらかの返済期間を短くして、早期に完済を目指すといった組み方も可能です。教育費が増加する時期や老後の資金を蓄える時期に片方のローンだけにしておくことで、負担を軽くし、家計を安定させることができます。
例えば、夫婦で総額4,000万円の住宅ローンを組む場合、夫3,000万円(返済期間35年)、妻1,000万円(返済期間15年)でそれぞれ住宅ローンを借り、16年目以降は夫のローン1本とします。妻が変動金利、夫が固定金利など、別々に選択することも可能です。
住宅ローンを夫婦で借りる場合、マイホームは二人の共有財産になりますので、お互いの持分を登記することになります(共有名義)。夫婦がそれぞれ出資した頭金と、住宅ローン額の持分に見合った割合で登記しなければなりません。もし割合を変えて登記すれば、夫婦間の贈与として課税される可能性がありますので、注意が必要です。
※夫が自己資金500万円、借入2,500万円、妻が自己資金500万円、借入1,500万円の場合、出資割合は3:2となります。登記も、出資割合と同じ3:2の名義で行います。
※掲載の情報は2016年5月現在のものです。内容は制度運用中でも変わる場合がありますのでご了承ください。
住まいる総合研究所 井口 克美先生(住宅評論家)
1987年株式会社リクルート入社。SUUMO(旧週刊住宅情報)及びSUUMOカウンターにて、営業及び企画を担当。マンションから注文住宅まで幅広い領域で活躍。2014年「住まいる総合研究所」を設立し、セミナー講師及び執筆活動に取り組んでいる。
2016年5月現在の情報となります。