住まいに緑を植えて育てるには広い庭が必要だと思っていませんか。小さなスペースでも木を一本植えるだけで、さまざまな効果があります。
例えば、熱環境の調節効果もその一つ。落葉樹を家の南側に植えれば、夏には生い茂る葉が木陰をつくり、根から水を吸って蒸発させる気化熱で地面の温度を下げ、涼しくしてくれます。冬には葉が落ち、暖かな光が屋内へ届きます。木の成長から時の流れを感じる効果も。家族の誕生日や家を建てた日の記念樹を植えれば、より住まいに愛着がわくでしょう。
また、植栽を考える際には、敷地周辺の街並みにも視野を広げて、地域の自生種を取り入れましょう。エクステリアはプライベートとパブリックの中間領域です。風景に馴染む住まいとなるために、土地に縁のある樹種や資材選定が欠かせません。
〝良い街〟の条件は、自然の恵みと、地域の歴史や四季折々の姿、建物のデザインがうまく融合していること。そこには、良い景観を維持し、庭を愛する人々が集まるため、資産価値が高まっていきます。例を挙げれば、イギリスのレッチワースという田園都市は街ができた当初(1900年初頭)よりも資産価値が向上したそうです。その一因は、街の美しい風景でした。
「景観10年、風景100年、風土1000年」。家が建ち、景観として成り立つのは10年。景観が風景になり、風景が風土に変わるのはさらに10倍ずつの時間が必要になります。長く暮らし続けるためにも、わが家が風景の一部となるためにも、街と調和のとれた緑あふれる住まいを築きましょう。
エクステリアには街の歴史や文化のエッセンスを取り入れて楽しむことも。例えば、仙台の分譲地では、地元で愛されている戦国武将・伊達政宗を象徴する「月」を門柱にデザインし、緑に馴染みやすい石材を使用しました。住まいづくりの際は、敷地の周りを散策し、地域の魅力を探ってみると良いでしょう。
2枚の石で作られた三日月は見る角度によって表情が変わります。夜はライトアップされ、エクステリアのアクセントに。
中高木を“不等辺三角形”に配置し、残りのスペースに低木や地被類(地表面を覆う植物)を植えると、“立体観”と“奥行観”のある見栄えの良い植栽ができます。家を植栽で囲むことで、潤いのある景色をもたらす視覚的な効果、日光をほどよく遮る気候的な効果、通りからの目隠しとしての機能的な効果が期待できます。
ポイントは、高さの異なる中高木を不規則に植えること。ほど良いボリューム感で見た目に変化が生まれます。
2015年8月現在の情報となります。