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生活を考える

自分と家族に合う
「最適な片付け方」を見つけよう

「スッキリ片付いた部屋で快適に暮らしたい」と漠然と思っていても、
実際に片付けをすることや、片付いた状態をキープするのは難しいもの。
片付けられない自分を責めたり、物を散らかす家族にイライラしたりすることもあるかもしれません。

そんな方は「片付けに対する考え」を変えてみましょう。
自分も家族も幸せになれる片付け方を見つける方法を、精神科医の奥田弘美先生に解説していただきます。

Profile

精神科医・産業医(労働衛生コンサルタント)

奥田 弘美先生

株式会社朗らかLabo 代表取締役。1992年山口大学医学部卒。精神科医、そして約20の事業所の産業医として、働く人の心と体のケアを日々応援&サポートしている。より良い生き方や心の健康をテーマに執筆活動も行っており、『精神科医が考えた忙しすぎる人のための「開き直り」の片づけ術 (美人時間ブック)』(光文社)、『「会社がしんどい」をなくす本 いやなストレスに負けず心地よく働く処方箋』(日経BP社)ほか、著書多数。

「生活感のないスッキリした家がいい」という呪縛

人が暮らすうえで、物が増え、部屋が散らかっていくのは当然のこと。家族と暮らす方なら、子どもの年齢に応じておもちゃや学用品などが増えていきます。多忙な毎日の中で、スッキリと片付いた状態を保つのはハードルが高いもの。

奥田先生「かつては私も物を捨てる片付け方を実践して、モデルルームのような生活感のない部屋を目指していました。しかし長続きせず、すぐに子どもや夫の物が増殖してリバウンドしてしまったのです。イライラして家族に片付けを強要したり、物を勝手に処分したりしてもめたこともありましたが、あるとき『家族にも自分にも負担にならない片付け方でいいのでは?』と開き直ったのです。片付けに対する心の奥の思考や、当然のように刷り込まれている方法論を見直すことにしました」

スッキリ片付いた家がいいという思い込みをしていないか?

「理想の部屋」を思い浮かべる時、多くの方はテレビや雑誌、SNSに登場するような「生活感を感じさせないセンスのいい家」を想像するでしょう。その状態にすることに喜びを感じる方や、それをキープすることが自分と家族にとって無理がない人ならいいのですが、そうでないのなら「生活感のない空間に住む必要などない」と割り切ることが必要かもしれません。

他者目線の片付けになっていないか?

片付けの目的が「人からオシャレと思われたい」「センスがいいと褒められたい」という思考にすり替わっていませんか?生活するために必要な片付けのレベルを通り越して、「他者目線の片付け」になっている可能性があります。

「片付けられない」=「ダメ人間」と思っていないか?

小さい頃から「片付けをしなさい」としつけられてきた私たちは、片付けの習慣が身につくのと同時に、「片付けられない」=「ダメ人間」という意識も刷り込まれています。片付けは、心の重荷にならず、仕事・生活の負担にならないレベルで、生活の一部として行うもの。片付けられない自分に落ち込んだり、家族に無理強いをしたりといったストイックな片付けレベルでは本末転倒です。

うまくいかないのは、片付け方が自分に合っていないから

そもそも、なぜ片付けは思い通りにいかないのでしょうか。いくつかの理由を考えてみましょう。

奥田先生「在宅ワークの導入で、資料や本、パソコン周辺機器などが増えた方は多いでしょう。子どもがいる家庭では、おもちゃや衣類、学用品、スポーツ用品などが増えるのは避けられません。片付け本のセオリーに従って、3年着ていない洋服を処分しても、『また似たようなものを買い直した』という声もよく聞きます。また、震災時やコロナ禍においては、『生活用品をある程度備蓄しておいて助かった』という経験をされた方も多いと思います。“家族の人数が増えれば増えるほど、物は増えて当たり前”と割り切ることも必要です」

片付ける時間がない

奥田先生「忙しい毎日の中で、片付けの時間を捻出できる方がどれほどいるでしょうか。生活感をなくすために、引き出しや戸棚にしまうといったワンアクションを伴う片付け方だと、出し入れが面倒になって散らかりがち。毎日使うものは浅型のカゴやトレーに入れて、手の届く場所に『出しっぱなし収納』をするのも方法です」

おもてなしに向いた間取りではない

奥田先生「現代の住まいには、かつて存在していたお客さまを迎えるための客間や応接間がないため、来客時には家族が生活するLDKに迎えることになります。プライベートな日常空間を『他者を迎える』という視点で整然と片付けておくのは、大変な労力と気遣いが必要。その結果、他人目線の片付けになってしまう可能性もあります。『生活感が出ても仕方ないと割り切る』『家に人を招かないで外で会うと決める』ことも、片付けに対して心を軽くする一つの方法です」

片付けは「掃除をする前段階の作業」

片付けに対する思考や、片付けられない理由を整理したら、いよいよ自分に合った片付け方を探っていきましょう。まずは片付けの本来の目的を明確にしましょう。

奥田先生の考える「片付けの本来の目的」

  1. (1)健康のため清潔・安全を維持すること
  2. (2)物を紛失しないこと
  3. (3)欲しい物がすぐに取り出せること

奥田先生「片付けの第一の目的は、住まいを清潔にしてハウスダストなどが原因で起こる疾患などを予防し、健康に暮らすこと。掃除機をかけたり、拭き掃除をしたりする前段階として、片付けの作業があります。いくら物が少ないオシャレな部屋でも、ほこりやゴミがたまっていたら本末転倒です。『清潔であれば多少散らかっていてもいい』と思考を変えてみてはどうでしょうか。

また、スッキリとした部屋を実現しようと、あらゆる物を収納棚にしまい込んでしまうと『どこにしまったか忘れてしまった』『欲しい時に、すぐに取り出せない』という事態に。その結果、探し回って時間を費やしたり、見つからずに買いに走ったりということにもなります」

このような片付けの本来の目的を押さえたうえで、自分に合った片付け方を探っていきましょう。

家族の求める片付けレベルをすり合わせる

ママの理想が「スッキリ片付いたオシャレなリビング」でも、パパは「床に物が散らばってなければOK。手の届く場所に物があった方が便利」と思っているかもしれません。子どもは「お気に入りのおもちゃや人形といつも一緒にいてワクワクしたい」とか「リビングで気が向いた時に勉強したいので、勉強道具を置いておきたい」などと考えている場合もあります。

  • 片付けを巡って家族にガミガミ怒ることが多い
  • 物を「捨てる」「捨てない」でもめることが多い
  • リビングに家族が集わず、各自が部屋に閉じこもりがち(思春期の子どもを除く)
  • リビングはキレイだが、子ども部屋が散らかっている

このようなケースが当てはまる場合、家族にとって片付けレベルが適切ではない可能性が高いです。

奥田先生「片付けの目的は家族が心地よく過ごすこと。いつもガミガミ怒っている状態が、果たして家族にとって心地よいのか考えてみましょう。子どもに片付けの教育をすることは大切ですが、高度なレベルを求め過ぎていることも。子どもはいろんな物を見て、触れて、脳に刺激を与えて成長します。過度な片付けの要求は、創造性や好奇心の芽を摘んでしまう可能性もあります」

奥田先生「家族で片付けのルールについて話し合ってみましょう。主に片付けをする人の片付けレベルが負担になっているようなら妥協案を考えます。例えば、清潔という観点から床に直接物を置かないことを家族に徹底してもらうかわりに、カゴやボックスを用意してそこに入れてもらうようにする、脱いだ洋服の一時置き場用として椅子を用意するなど、家族にとって無理のない形を探せるといいですね」

まとめ

物の整理の前に、まず心の整理を。つまるところそれは、「自分と家族がどのように暮らせたら幸せなのか?」について考え直すきっかけにもなります。散らかった部屋をみて、一人で落胆し抱え込むのではなく、どうすればみんながくつろげる家にできるのか話し合ってみましょう。自分たちにあった物の在り方に合わせて、片付けメソッドや収納グッズなどを上手に利用し、無理なく快適に過ごせる住まいを手に入れてくださいね。

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