天井が高い家は、毎日の生活に開放感をもたらしてくれます。でも天井が高いとどうしても気になるのが、冷暖房などの空調。エアコンが効きにくくて寒い思いをしたり、光熱費が高くなったりすることはないのでしょうか?今回はMy House Palette(マイハウスパレット)の読者・平岡さつきさんが、大和ハウス工業で住宅温熱環境を研究する七岡寛に、天井が高い家の空調についてさまざまな疑問を投げかけました。(取材・撮影: 奈良展示場)
研究者プロフィール
大和ハウス工業株式会社 総合技術研究所 工業化建築技術センター
性能研究グループ 主任研究員 一級建築士
七岡 寛
「住まいの“快適な温度”について研究しています。快適な温度の家に住むことで健康になり、社会でもイキイキと過ごす。そんな暮らしが実現できるといいなと思っています。」
暖かい家のカギは断熱性&気密性?
- 平岡さん:「いつか家を建てるなら、天井の高い家がいいな」と思っています。でも、高い吹き抜けがあった私の実家は、冬はとても寒かった記憶が……。天井が高いと、空調も効きにくいのでは?というイメージがあるのですが、実際のところどうなんでしょう?
- 七岡:まずは、現代の住宅の断熱性についてお話しましょう。平岡さんのご実家が建てられた1990年頃に比べると、住宅の断熱性能は飛躍的に進化しました。1999年に住まいの断熱基準などを定めた「次世代省エネルギー基準」が設けられ、外壁や窓にも高い断熱性が求められるようになりました。平岡さんのご実家のように吹き抜けのある住まいも、今の基準で建てると断熱性や気密性が格段に高くなっているはずです。この基準をふまえた上で、空調をトータルプランニングすることで、冬でも部屋を暖かく保つことが可能になるんです。
- 平岡さん:住まいそのものの性能が高くなっているんですね。そもそもの話なんですが……断熱性が高いと、どうして家が暖かくなるんですか?
- 七岡:熱は暖かいところから冷たいところに移動するという性質があります。家の中が暖かくても、壁の向こうが寒いと熱が逃げていきます。それを防ぐのが断熱性なのです。
- 平岡さん:壁などの断熱性を高くすれば、暖めた空気も逃げていかないんですね。
- 七岡:たとえば高い天井で好評を得ている当社のxevoΣ(ジーヴォシグマ)という商品。こちらの外壁に使用している断熱材は、ガラスの繊維を細かくワタのようにしたグラスウール。家全体をグラスウールの断熱層で包み込むことで、室内の熱を逃しにくくなっているのです。数字にすると、1990年代の家に比べて、xevoΣは保温する力が2倍くらいになっているんです。
- 平岡さん:確かにこれだけ断熱材が入っていれば、壁から熱が逃げることはなさそう。でもこちらの展示場には、大きな窓がありますよね。熱は壁だけじゃなく窓からも逃げていくのでは?
- 七岡:そうですね、窓は壁より約10倍、熱が逃げやすい。しかしガラス材も非常に進化しています。xevoΣで採用しているのは、2枚のガラスの間に乾燥した空気を挟んだ「高断熱複層ガラス」。断熱性が高く、熱を逃がしにくいガラス材です。またサッシも、外側には太陽光や風雨に負けないアルミを、内側には熱を伝えにくい樹脂を使用することで、寒い時期でも結露が起こりにくくなります。
- 平岡さん:実家の窓は結露することはないのですが、家じゅうが妙に寒くて……。すき間風が入ってるんじゃないかと思うんですよね。
- 七岡:今のサッシにはいろいろなところにパッキンもついていて、気密性も高いです。すき間風が減れば、外の寒さが入ってきませんから、部屋の暖かさが保てますよ。
天井が高い家、足元と頭の温度差は大丈夫?
- 平岡さん:壁や窓の性能が上がって、家中の暖かい空気が逃げにくいということは分かりました。でも高い天井や吹き抜けのある部屋は、暖房を入れると頭のほうだけ暖かくて足元が冷たい状態になりそうなのが気になります。
- 七岡:昔の住まいは足元と頭の温度差が6℃ほどありましたが、断熱性・気密性の高い今の住まいなら2~3℃程度。足元から暖める床暖房とエアコンを上手に併用することで、部屋をムラなく暖めることができます。床を掘り下げて3mを超える天井高※1を確保するロースタイルリビングには、窓の下の壁際にヒーターパネルを設置することも可能です。このように、家の構造や住まい方にあわせて暖房器具を効果的に組み合わせることで、空調ムラも少なくなります。
- ※1天井高は2m40cm、2m72cm、2m80cm、さらに3m8cmと3m16cm(1階のみ)の仕様を選ぶことができます。天井高は間取りや建設地、建築基準法(法令)等により対応できない場合があります。
- 平岡さん:エアコンだけに頼らず、いろんな暖房器具を使うのがポイントなんですね。こちらにはリビングにスケルトン階段がありますが、暖房を切っている2階から冷たい空気が下りてくることはありませんか?
- 七岡:確かに、1階は暖まっているけれども2階が冷えていると、結局1階の暖かい空気がどんどん2階に抜けていきます。これも、暖房の使い方次第。2階の冷たい空気が降りてくるのを防ぐには、2階を暖かくしておけばいいのです。
- 平岡さん:2階の空気が暖まっていれば、1階に冷たい空気が下りてくることもないんですね。とはいえ使ってない2階でもエアコンをつけるとなると、ちょっと光熱費が心配……。
- 七岡:その点は、エアコンの選び方によって経済的な暖房が可能です。エアコンを購入する時は、ついその部屋の広さだけを基準にしてしまいますが、断熱性能や吹き抜けの有無など住まい全体の構造に合わせてどれくらいの能力のエアコンが必要なのかを計算することが大切です。ダイワハウスでは、エアコンナビという独自のシミュレーションソフトで、省エネにつながるエアコンの選び方を提案しています。
このエアコンナビで、今、平岡さんとお話しをしている1階リビングと階段、そして2階の廊下を含めた部分に最適なエアコンを調べてみましょう。
- 七岡:このスペースを快適な室温に保つためには、3.6kWのエアコンが2台で、年間冷暖房費が3.8万円という試算になりました。同じ広さでも一般的な住宅※2では、5.6kWのエアコンが2台必要で、年間の冷暖房費は8.1万円と考えられるので、コストもかなり抑えらます。
- ※2新省エネ基準
- 平岡さん:こんなに広いのに半分以下!熱が外に逃げにくい構造だと光熱費も抑えられるんですね。コストを抑えつつ、1階も2階も効率的に暖められるなら冬も安心です。
- 七岡:天井が高い部屋では、シーリングファンも効果的ですね。上に集まる暖かい空気を下に対流させることができますので。
- 平岡さん:シーリングファンはおしゃれですが、普通の高さの天井だと圧迫感がありそうで。でも、天井が高ければ上手に使うことができそうです。
日光が入っても涼しく過ごせる秘密
- 平岡さん:断熱性や気密性が上がって、家が暖かくなるのはわかりましたが、じゃあ逆に夏はどうなんでしょう?
- 七岡:熱が暖かいところから冷たいところに移動するのは夏も冬も同じ。夏は室内が冷房で冷えていても、外気温が高いと外の熱が室内に移動しようとするんです。でも断熱性・気密性が高ければ外の気温の影響を受けにくいので、冷房の効いた部屋の中は冷えたままということになります。
- 平岡さん:夏も空調が効きやすくなるんですね。でもこの大きな窓、開放感たっぷりでステキですが、夏は日差しが入って温度が上がる原因になりそう……。
- 七岡:xevoΣの窓の幅は最大で7m10cm※3と大きく、太陽光がたくさん入ります。しかし大きな窓でたくさん光をとりいれつつも、部屋を涼しくする工夫はいろいろあるんですよ。
- ※3幅3m45cmの窓を2枚連続で配置可能(中間に柱が入ります)。
- 七岡:その一つが、自然の力をうまく利用した「パッシブデザイン」という考え方です。夏は太陽高度が高いので、深い軒やバルコニーで、夏の直射日光が部屋に入らないような設計に。また、日光は外で遮ってしまうのが一番効果的なので、窓の外側に遮熱スクリーンを設置する場合もあります。
- 平岡さん:自然の法則を利用して、省エネしながら快適な環境が保てるなんて素晴らしいですね!これから一生住み続けるのだから、エコでスマートな構造の家を選びたいです。
まとめ
天井が高い家に抱いていた「寒そう」なイメージは払拭できましたか?xevoΣの高い断熱性を活かしつつ、空調をトータルプランニングすることで、天井が高い家でも快適に過ごすことができます。実際にxevoΣの心地よさを体感してみたい方は、ぜひお近くの展示場へ足を運んでみていはいかがでしょう。
※掲載の情報は2017年11月現在のものです。