「新しい家はどんなインテリアにしようかな?」と想像するのは、
家づくりにおいてもっともワクワクする瞬間のひとつ。
一方で、「失敗したらどうしよう…」と大いに迷う部分でもあります。
でも大丈夫。
インテリアには、これさえ守れば居心地のいい空間ができる、一定の法則があるのです。
この連載では、ダイワハウスのインテリアコーディネーターが
「長く住み続けられて、心からくつろげる家」にするためのインテリアの法則を、
照明・収納・家具・色彩計画などテーマ別にご紹介していきます。
5回目のテーマは照明計画です。
エクセレントインテリアコーディネーター(社内認定)中川明美が
「くつろぐための照明計画」をレクチャーします。
Profile
大和ハウス工業 本店 木造住宅事業部 設計部 主任
インテリアコーディネーター インテリアプランナー キッチンスペシャリスト
エクセレントインテリアコーディネーター(社内認定)
中川 明美
家は快適な生活の器でなければならないと思います。そこにいるだけで自然とリラックスして、穏やかで楽しく、安全に過ごせる空間づくりを常に心掛けています。色や形の美しさだけでなく、長期にわたって快適に暮らせるように、機能性も考慮した空間をご提案させていただきます。
はじめに生体リズムと明かりの密接な関係とは?
植物が太陽の方向へ伸びていくことを「向日性」と言いますが、人間にも向日性が備わっており、光(照明)に意識を向ける性質があると思います。暗い中でポッと照明が灯っていると、人の意識はそこに向くものです。その光が昼間の太陽のように白い色なら爽やかな気分に、夕日のような暖かみのある色ならリラックスして落ち着いた気分になります。このように私たちの感情は光に大きく影響を受けています。
感情だけでなく、生体リズムも光と密接な関わりがあります。朝明るい光を浴びると眠気を誘発するホルモンであるメラトニンの分泌が抑制されて覚醒し、夜になるとメラトニンが分泌されて眠気をもよおすようになっています。このリズムに合わせるなら、夜は明るさを抑えた、暖かみのある色の照明で空間を照らすといいでしょう。
このように、感情や生体リズムに合致した照明を計画することが、くつろぎの空間を生み出すカギです。次からポイントを解説します。
法則その①あかりだまりを作る
従来の日本の住宅のように1室1灯の天井照明で部屋全体を均一に照らすのではなく、明るさが必要なところと、明るくする必要がないところで陰影の差を作ると、くつろぎの空間を演出できます。人は原始時代から昼間は狩りを行い、夜は暗い洞窟に入って眠るというリズムがDNAに組み込まれているといわれます。あかりを集める部分(=あかりだまり)を作ることで、暗い部分がより強調され、リラックスモードに切り替えることができます。
あかりだまりは1つだけでなく、部屋の中に複数点在させるのがポイント。例えば、ダイニングテーブルで読み書きをするときも、そこだけを照らして周りを真っ暗にするのではなく、観葉植物を照らして葉の影を楽しめるようにしたり、壁の絵を照らしたりとあかりを点在させると、やわらかい光が空間に散らばって落ち着いた雰囲気になります。
法則その②照明を低重心にする
光の重心を下げると人は安らぎを覚えます。地平線に沈む夕日や暖炉の火、テーブルの上のキャンドルの火、これらはすべて低重心です。人がくつろぐときの姿勢も、床に寝転んだり、ソファに座ったりと床に近い位置になるので、低い位置に光を配置することで、夜のくつろぎの雰囲気を作りやすくなります。
とはいえ、すべての照明が低いのもバランスが良くありません。水平な目線に対して、上下30度の範囲に人の視線は向くといわれているので、人の視線にとまりやすい範囲に高さを変えて照明器具を設置するといいでしょう。
上の寝室は、照明の位置によって雰囲気が変わる一例です。
法則その③間接照明を取り入れる
間接照明とは照明器具を天井や壁などに埋め込んで照明器具そのものを見えないようにしたもので、天井や床、壁などに光を当てて、反射したやわらかな明かりによって照らす手法です。照射する面の光の距離が長くなるほど、光が広範囲に拡散しますので、やわらかく幻想的な雰囲気になります。間接照明をご提案する主な箇所をご紹介します。
ロースタイルリビングの段差
リビングスペースを一段低い場所に設けたロースタイルリビングが人気ですが、この段差部分に間接照明を入れるのもおすすめです。「低重心」で落ち着いた雰囲気になり、そこに段差があるという注意喚起にもなります。
天井や壁面
天井部分に照明器具を設置して、天井面を照らす照明を「コーブ照明」といいます。画像のように折り上げ天井と合わせて組み込むことで、天井面全体が明るくなります。天井の輪郭がぼやけることで、より広がりのある空間を演出します。
壁面に照明器具を設置して、壁面を照らす照明を「コーニス照明」といいます。横から壁をつたって光が広がるので、凹凸のあるアクセント壁などを照らすと幻想的な光の影が生まれます。
天井埋込のカーテンボックス
天井埋込のカーテンボックスに照明を設置して、カーテンを照らす手法もあります。カーテンの布地への反射光がやわらかな光を演出します。
造作家具の下
上の写真は床から浮かせた造作家具の下に間接照明を組み込んだ例です。光源が床に映り込んで丸見えになると落ち着かないので、映り込まない光源の選定と、照らされる面の反射率や素材を考慮した、照明の設置位置や角度の検討が必要です。照明器具だけでなく、照らされる面の素材は何かという検証も重要です。
法則その④不快なまぶしさを抑えて色温度にも配慮する
くつろぎの空間を演出するには、まぶしさを感じさせる光が直接目に入らないようレイアウトを計画し、暖かみを感じさせる色温度の照明を選びましょう。
グレアを抑える
不快なまぶしさ(=グレア)があるとくつろげないのはもちろんのこと、目の障害や見えづらさによる事故などにもつながります。特にLEDライトは光に指向性があり、特定の方向に集中して光が出やすくなるため、電球や蛍光灯よりもまぶしさを感じやすいです。特に寝室にダウンライト(天井に埋め込まれた照明)を設置する場合は、ベッドの位置を決めてから照明計画を立てないと、仰向けの姿勢になったときにまぶしくて眠れないということが起きてしまいます。ソファでくつろぐときも同様です。ダウンライトは、家具の配置とセットで考えることが大切です。
お子さまの部屋は将来的に家具レイアウトが変わる場合も多いので、ダウンライトよりもリモコン付きの調光調色可能なシーリング照明をおすすめすることが多いです。また、リビングやダイニングでお子さまが勉強する場合は、調光タイプの照明器具などを取り入れて、作業に適した十分な明るさを確保しましょう。
色温度
色温度とは光源の色を数値で表したもので、赤みがかった色ほど数値が低く、青みがかった色ほど数値が高くなります。一般的に電球色はリビングなどくつろげる空間に、昼白色は主に作業を中心としたキッチンや勉強スペースに適していますが、色温度についてはそれぞれ好みがはっきり分かれることが多いので、お住まいになるご家族の好みや、夜にどのような過ごし方をされるかといった生活スタイルを把握して、適した色温度を選びましょう。
進化するこれからの照明器具とは?
近年、スマートフォンや音声で操作できるIoT照明、見守り機能がついたLED電球など、さまざまな機能の照明が登場しています。
おうち時間を豊かにしたいという需要の高まりもあり、最近ファミリー層に人気なのが、プロジェクター付きLED照明です。映画やお気に入りの写真、動く絵本などを搭載し、壁一面に映して楽しむことができます。引っ掛けシーリングに設置できるので、このような照明器具をつけたい場合はあらかじめ計画に組み込んでおきましょう。多様性のある照明器具は、これからも続々と増えてくると思います。
リビングの照明計画はダウンライト+間接照明を基本に計画されるお客さまが多いですが、後からご自分でフロアライトやテーブルランプを用意される方も多いので、後付けの照明も含めたトータルのアドバイスをさせていただきます。
後付けの照明を設置することが決まっていれば、あらかじめダウンライトや間接照明の配線と回路をまとめておき、照明器具のスイッチをその都度操作しなくても壁のスイッチだけでオンオフができるようなスイッチ計画や、広い間取りの場合は電灯を一括制御するといったことも可能です。これは、ハウスメーカー所属のコーディネーターという立場を活かしてのご提案。美しい空間だけでなく、生活する際の利便性も考慮して提案していきます。
画像提供:大光電機(株)、パナソニック(株)
くつろぐためのインテリアの法則
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