なかなか思い通りにいかないことから、ついイライラしてしまうことの多い子育て。
今回は、子育て中のイライラの原因や、それを軽減してくれる「家事シェア」という発想や、
その考え方を取り入れる家づくりのコツなどをご紹介。
家庭生活における心理学とメンタルケアを得意分野とする、
All About「ストレス」ガイドの大美賀直子さんにお話を聞きました。
子育てのイライラの原因は「思い通りにいかない」こと
子育ては手間がかかり、親の思い通りにはいかないもの。イライラしてしまうのも無理はありません。
特に、小さな子どもは興味関心をとことん追求するもの。そのため、「面白そう」「楽しそう」「やってみたい」と思ったことには後先考えずに手が出てしまいます。おもちゃを出して遊んだかと思えば、すぐに飽きてお絵描きを始める……。さらに、子育ては予想外のハプニングの連続でもあります。さっきまで元気だったのに急に体調が悪くなる、飲んでいた牛乳をこぼして服も床も汚してしまう……。どのおうちでもよく目にする光景ではないでしょうか。
周りの大人が先のことを予想して、効率よく段取りを組んで動けるようにしたいと思っていても、子どもはなかなか大人の思惑通りには動きません。親が「〇〇をやりたい」「〇〇ができたらもっと素敵な生活ができる」と思い描いたとしても、どうしても後回しになってしまいがちです。こういった「思い通りにならない」ことの積み重ねが、子育て時のイライラの大きな原因と言えるでしょう。
家事の効率化や発想の転換で、ストレスを軽く
小さな子どもの行動をコントロールすることはほぼ不可能と言えるでしょう。途方に暮れる前に、発想を転換してみてはどうでしょうか。というのも、直接子どもと関わること以外の部分は、工夫が可能だからです。家事の効率や家づくりの工夫などで、家で過ごす時間を快適なものとし、子育て時のイライラを減らすことはできます。
日常の問題は一人で抱え込まずに相談を
とかくワンオペになりがちな家事や育児ですが、どうか無理をせず一人で抱え込まないようにしましょう。
「リビングに脱ぎ捨てられた靴下をいつも自分が片付けている」「食後、食器をテーブルに置きっぱなし」などの小さな出来事とともにストレスが積み重なり、ある日イライラが爆発してしまうこともあります。まさに塵も積もれば山となるです。
日常のモヤモヤはそのままにせず、パートナーに伝えることが大切です。しかし、感情のままにまくし立てたり、嫌味な言い方をしてしまったりすると、相手は受け入れにくくなってしまいます。相手は、「散らかっている」という問題よりも、「怒りっぽい」「イライラしている」といった状態のほうに目がいき、気分が悪くなってしてしまう可能性があるからです。ご家庭では気を遣いたくないという気持ちはわかりますが、配慮は必要でしょう。
また、夫婦だけで考えても良い解決策が浮かばず、行き詰まってしまう……ということもあるでしょう。お互いの両親や友人など、相談できる環境を整えておくことをおすすめします。
家事をシェアするコツは、お互いに裁量を持ち自分ごと化すること
さて、現在、共働きのご家庭が増えていますが、家事や子育てにどう取り組んでいますか?ごみ出しは夫で、それ以外の家事は妻と、役割分担をしているご家庭は多いようです。一見問題ないように見えますが、なぜか不満が募る……、効率が悪い……という話もよく聞きます。
その理由は、家事や子育てが単なる作業=タスクのようになっているからだと考えられます。タスクとして押し付けられたような気持ちでは、家事そのものが負担に感じてしまうもの。そこでおすすめなのが「家事シェア」という考え方です。
家事シェアとは、家事や子育てを家族全員のものとして共有し、分け合うこと。自分のことは自分ですることを前提に、誰かが炊事・洗濯・掃除・子育てをしているときは、他の家族も同じように他の炊事・洗濯・掃除・子育てを率先して、自分の意思で行うという考え方です。
家事シェアにストレスなく移行するためには、家事のプロセスを家族間で共有するのはもちろんのこと、家族みんなが家事へのモチベーションが上がるような話し合い、工夫を行うことが大切。
ただお互いが「してほしいこと」を一方的に指示するのは逆効果です。むしろ、その家事に使う家電や家事用品、家具などをパートナーや他の家族にも選んでもらう、自分のことは自分でやることから始めたほうが、お互いに楽しくモチベーションをもって家事ができるのではないでしょうか。
また、一度家事を任せたら手順なども一任することが大事です。手間を減らしたければお掃除ロボットなどを使って自動化するのも良いですね。その場合も機種選びからお手入れまで、信頼して家族間でシェアしていきましょう。
家事自体はやっているものの、上手くいっていない、効率的にこなせていないようだと感じる場合には、「今のやり方だとやりにくい?」「どうすればやりやすいと思う?」とパートナーや家族に聞いて、一緒に考えることが大切です。
指示されたから動くのではなく、自分で考えたアイデアを実行して家の中が快適になり、家族に喜んでもらえたと感じられれば、家事が大きなやりがいにつながるでしょう。「家事が楽しい」「さらに工夫しよう」という意欲が生まれ、「家で過ごす時間が心地よいからもっと多くの時間を家で過ごしたい」という良い循環が生まれるのです。
小さな課題に目を向ける、ストレスフリーな家づくり
散らかった家に暮らすと気持ちが落ち着かず、ストレスとなります。しかし、小さな子どもがいると家の中を片付けて毎日キレイに保つのは至難の業。「素敵な家で暮らしたい」と思っても、時間も気持ちも余裕がなければ「すぐ散らかすし、どうせ片付けても無駄だ」という考えになってしまいがちです。しかし、ここで諦めてしまったら室内は乱雑なままとなり、イライラが加速してしまいます。まずは、小さなことからより良く変えていきしょう。
家事で使うものの配置や片付け方などを少し工夫することで、暮らしのストレスは減らすことができます。まずは、「手間がかかっている」「散らかりやすい」「動きにくい」といった、家の中にある小さなストレスについて考えてみましょう。
たとえば、「食器棚にある手前のお皿をどけてから、後ろのお皿を取っている」「クローゼットがある寝室まで遠いから、上着がソファの上に脱ぎっぱなし」といった小さなストレスを感じていませんか。お皿を整理する収納グッズを使う、玄関にコートハンガーを設ける、などの対策をとるとモヤモヤが減りますよ。
中には、日々の家事を通じて、わが家にとって快適な家具や道具の選び方、家事動線のつくり方について考えるきっかけが生まれることもあります。たとえば、食器棚に扉があると見た目はスッキリしますし、ほこりなどがつきにくくなりますが、一方で開け閉めの手間が一つ増えてしまう、という面もありますよね。どちらが良いか、何を優先して選ぶかはご家庭によって異なります。こういった場合も家族で一緒に考えることが、家事をもっと楽しみたいという思いを育むことにつながります。
住まいの一工夫で家事が楽しくなる「家事シェアハウス」
家事シェアを取り入れよう!といっても、課題があるご家庭はとても多いもの。家事の担当を明確に決めても、「トイレットペーパーを替える」「食卓を拭く」といった「名もなき家事」に夫婦どちらかが気づかず負担が偏ってしまうことが少なくありません。
また、仕事が急に忙しくなったり、子どもが体調を崩したりしたときなど、「今は分担通りにできないから変わってほしい」「家事が行き届いていない部分に気づいて、カバーしてほしい」と思うことも出てきますよね。
なので、家事は分担ではなくシェアして、その時の状態に合わせてフレキシブルに動き、フォローし合える状況をつくることが理想的。そこでダイワハウスが提案するのが「家事シェアハウス」です。家事のプロセスと現状を共有し、効率よく、かつ自然に家事に取り組める家です。
自然に家事ができる
「家事シェア動線」
動線の工夫や、家事に使うものの場所をわかりやすくすることで、自分のことは自分でしやすくなる上、家族全員が無理なく、楽しく家事に参加できるようになります。家族全員で家事を分け合える仕組みをつくることが大切です。
A:専用がうれしい「自分専用カタヅケロッカー」
玄関の「自分専用カタヅケロッカー」はどのスペースが誰のものか明確にできるので、子どもを含めた家族全員の整理整頓に対する自主性を育むことにつながります。また、靴やスリッパなどのものが散らかりにくく、家に入った瞬間から心地よさと安らぎを感じられるでしょう。
B、C:洗濯家事がぐんと楽になる「ファミリーユーティリティ」
玄関からつながるファミリーユーティリティは「手を洗う」「着替える」「洗濯物を出す」などが1カ所でできるのがうれしいポイントです。家から帰ったときにとる行動を考慮して空間の役割と動線が考えられており、洗濯家事がラクになることはもちろん、まず家事を済ませてからリビングに行けるためリビングも片付き、もっとくつろげるようになるでしょう。
D:散らかる書類たちをすっきりまとめる「お便り紙蔵庫」
冷蔵庫に貼ったりリビングに放置したりしがちなDMやチラシなどを、すっきりまとめられるスペースです。
E:お料理もしやすくなる
「キッチン横マルチスペース」
収納スペースがキッチンの隣にあると便利ですね。タブレット端末やレシピ本などを置いておけばすぐ取り出せまし、ごみ箱も置けば家事のしやすさはもちろん、キッチンの見た目をもっとすっきりさせることができるでしょう。
F:リビングが片付く「自分専用ボックス」
散らかりやすいリビングは、家族一人一人の専用ボックスを設けて、自分で管理するのがおすすめ。
G:2階に持って上がるものの一時置き場にも便利な「階段ポケット」
2階に持って上がる必要がある洗濯物などは一時置き場があると便利です。各自が持って上がるようにすることで誰か一人に負担が偏ることもなくなるでしょう。子どもの作品などを飾るディスプレースペースとしても使い勝手が良さそうです。
まとめ
今回のコラムでは、子育て中のイライラの原因や、ストレスを軽くするための工夫についてお伝えしてきました。子どもは成長すれば、自分で身の回りのことをするようになるので、子育てのうち、特に大変な時期は数年間で終わります。しかし、その数年間をより楽しく、気持ちよく過ごして子どもと向き合っていくことが大切です。ちょっとした工夫で暮らしの快適さは大きく変わるもの。ぜひ、この記事を参考に家族みんなで家事について考えてみましょう。
Profile
大美賀 直子さん
All About「ストレス」ガイド。メンタルケア・コンサルタント。公認心理師、精神保健福祉士、産業カウンセラーの資格を持ち、カウンセラー、作家、セミナー講師として活動する。現代人を悩ませるストレスに関する基礎知識と対処法を解説。ストレスマネジメントやメンタルケアに関する著書・監修多数。