近年、スポーツの場はもちろん街歩き、
通勤などシーンを問わず利用機会の広がりを見せるスニーカー。
しかし、正しいお手入れ方法が分からず、
汚れやニオイが限界になったら新しいものに買い替えるという方も少なくないようです。
今回は靴やバッグの修理・クリーニングを行う靴専科の大友良祐さんに、
スニーカーを長く愛用するための、お手入れのコツや保管方法について伺いました。
靴専科
大友良祐さん
靴やバッグの修理・クリーニングを行う靴専科の技術責任者。「どうして洋服はすぐに洗うのに、靴は洗わないんだろう?」という疑問から靴クリーニングに関する研究をスタートし、長くキレイに使えるようにするための修理・クリーニングを提供する。
ビジネスから普段使いまで、
素材別スニーカーのお手入れ方法
最近はビジネスウェアのカジュアル化が進み、スニーカーを履く方が増えている印象です。スーツに合わせる革靴のケアは靴磨き店に頼んだり、ご自身でお手入れされたりする方が多いですが、スニーカーは扱い方が分からず、間違ったケアで素材を傷めてしまうこともあるようです。まずは素材別のお手入れ方法をご紹介します。
レザー(スムース革)
形状がスニーカーであっても、素材が革なら通常の革靴とお手入れ方法は同じです。専用クリーナーで汚れを落としたあと、保革クリームで栄養を与えます。擦れ汚れが目立ちやすい白のレザースニーカーは、メラミンスポンジに専用クリーナーを少量つけて軽くこするとキレイになります。ロゴやラインが消えやすいので、目立たない場所で試してから行ってください。靴の中のニオイが気になる場合、丸洗いしてしまいたいところですが、ご自宅でレザー素材を水洗いすることはおすすめできません。代わりに内側を固く絞ったぬれタオルで拭いたあと、陰干ししましょう。
スエード素材
こちらも水洗いは厳禁。内側も外側も、固く絞ったぬれタオルで拭きます。陰干しして乾燥させたら、硬めの歯ブラシなどでブラッシングをして毛を起こします。このとき、色が濃くなる方向にブラッシングするのが正解です。
キャンバス素材
キャンバス素材は水洗いできますが、ご家庭でするとソールに使われている接着剤が溶け出したり、洗剤のすすぎ残しが原因で黄ばんだりしてしまうこともあります。中性洗剤で洗ってすすいだあと、靴が完全に水に漬かるよう30分ほどつけ置きして、内部に残った洗剤成分を完全に落としてください。タオルで水気を拭き取り、乾燥したタオルを靴の中に詰めて1〜2時間ほど置くと乾きが早くなり、かつスニーカーの形を保つ効果を発揮します。その後は、内側が完全に乾くまでしっかりと陰干しを。針金ハンガーの両端を折り曲げてスニーカーを引っ掛けると乾きやすくなります。
こんな裏ワザも…
靴ひもの黒ずみはスティックのりでこすり落とす
靴ひもは外して別々に洗いますが、ひもを通すハトメに当たる部分の黒ずみはキレイに落ちないことも。洗う前の乾いた状態で汚れ部分にスティックのりを塗り、乾かしてから指でこすると汚れがポロッと取れるので試してみてください。
ソールの汚れ落としにはメラミンスポンジ
全体を拭き上げる時間がないときは、ソールの汚れだけでも落としましょう。ソールがキレイだと、それだけで全体が清潔な印象になります。水にぬらしたメラミンスポンジでこすると驚くほどキレイになります。
内側が湿っぽいときは、ヘアドライヤーの冷・温風で乾かす
雨にぬれたときや、洗ったあとなどスニーカーの中が湿っぽいときは、ヘアドライヤーの温風と冷風を交互に当てて乾かしましょう。スニーカーの素材を傷めにくく、完全に乾いたかどうかが分かりやすいです。
洗濯や修理の頻度は?
スニーカーのサステナブルな取り扱い方
スニーカーの寿命は一般的に2年程度といわれますが、リペアやメンテナンスをすれば4~5年は履き続けることができます。なるべく長く愛用するための扱い方・心得を伺いました。
洗濯について
靴は本来、丸洗いできるように作られていません。一枚布で作られている服と違って、靴は足を保護するためにゴムや金具などいろいろな部品が使われているので、洗いにくく、乾きにくいためです。
とはいえ、足からの汗を吸収しているので、汚れやニオイが気になる方もいるでしょう。その場合は前章で述べたように固く絞ったぬれタオルで拭くだけでもかなりキレイになりますし、丸洗いする代わりにインソールを入れて定期的に交換するのも方法の一つ。
キャンバス素材のように一部、水洗いできるものもありますが、生乾きのまま履いてしまうとニオイの原因になるので、乾燥は徹底的に。靴は、服のように半日~1日干せば乾くわけではなく、少なくとも3日は干しておく必要があります。
注意していても、ご家庭で洗濯すると思わぬトラブルが発生しがち。凝ったデザインの高価なスニーカーなど、自分でするには不安があるようならプロに任せたほうが安心です。
修理について
一般的な革製のビジネスシューズはソールと本体が分離しているので、かかとがすり減っても修理が容易ですが、スニーカーの場合は本体と一体になっているものも多く、ソールがゴム製ですり減りやすいため、本体まですり減って穴が開いてしまうこともあります。そうなると修理代も高く、元々の価格との兼ね合いで、買い替えを選ぶ方がほとんどです。新品購入時にソールを上から貼って補強しておくと、スニーカーを長持ちさせることができます。
毎日の扱い
定期的に防水・防汚スプレーをすることも大切なポイントです。ニオイ防止のために、1日履いたら3日は休ませましょう。旅行や出張先で連日履く場合は、靴の内側に丸めた新聞紙を入れると湿気&ニオイ対策になります。10円玉を片方につき4〜5枚入れるのも消臭効果が期待できます。
捨て方
「靴をどうやって捨てたらいいのか?」といった悩みもよく耳にします。廃棄はお住まいの自治体の処分方法に従いましょう。靴専科の一部の店舗では、下取りサービスも行っています。
サンダル、ムートンブーツ、ロングブーツのお手入れ方法
スニーカー以外にも、お手入れ方法に迷ってしまいそうな靴について、ご自身で行えるお手入れをご紹介します。
サンダル
素足で履くサンダルはインソールの指痕が気になるもの。固く絞ったぬれタオルで湿らせたあと、中性洗剤を歯ブラシにつけてこすり、ぬれタオルで拭き取ります。その後、自然乾燥させます。シーズン終わりにお手入れをしてから、サンダルをしまいましょう。
ムートンブーツ
普段のお手入れは、歯ブラシなどを使って表面についたほこりや汚れを毛の流れに沿ってブラッシングして落とします。定期的に防水・防汚スプレーをして汚れを防ぐことも大切です。
ロングブーツ
表面は素材別のお手入れ方法に従います。しまうときには、型崩れを防ぐブーツキーパーを入れましょう。500mlのペットボトル2本を底でつなげてガムテープで固定し、タオルでくるんだものでも代用できます。
靴を長持ちさせる理想のシューズクロークとは?
1日履いた靴はすぐにしまわず、風通しのいい場所で乾かしてからしまうのが理想的です。革製のビジネスシューズやパンプスは、シューキーパーを入れてシワを伸ばしておきましょう。
玄関から回遊式のシューズクロークがあれば、空気の通り道が確保されているので、靴を収納しながら湿気を取ることができるでしょう。小窓か換気扇を備えていれば理想的です。靴のお手入れグッズがしまえる収納スペースや、靴を履くときに腰掛けられるベンチ、外出前に足元も含めたコーディネートを確認できる姿見なども設計しておくといいかもしれません。
コレクターの方は靴を買ったときに入っている箱のまま、履かずにとっておく方も多いですが、あの箱は保管には不向きです。靴は湿気によるカビが大敵なので、基本的に箱にはしまわないようにしましょう。シーズンオフの靴など、スペースの都合で箱に入れて収納する場合は、何カ所か穴を開けておくとカビを防ぐことができます。
まとめ
革製のビジネスシューズに比べると、スニーカーは使い捨てになりがち。普段のお手入れとメンテナンスをしながら、足元のおしゃれをもっと楽しんでみませんか。