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不動産の相談事例

不動産は、人生で最も大きな買い物の一つです。不動産を所有・継承するということは、安心安全な場所で長年家族と共に暮らすということでもあります。しかし、安心安全な暮らしは、時代や社会環境によって変化します。そのため、自分たちに合った不動産を選択し充実したものにするためには、一つひとつ問題点を整理して、家族にとって適切な対応が必要です。

安心安全な暮らしができる不動産を選択するには、将来の分譲住宅購入や建て替えを視野に入れることが重要です。しかし、分譲住宅購入や建て替えには、それぞれにメリットとデメリットがあります。どちらを選択するかは、不動産の現状や家族・自身の希望によって異なります。

ここ最近の不動産の相談事例を紹介します。不動産の分譲住宅購入や建て替えに関する相談では、相続や将来の家族の暮らしについての悩み事が多いように思います。不動産の分譲住宅購入や建て替えのメリットとデメリットを理解し、自分にとって最善の選択をするための参考にしてください。

【事例1】境界問題の事例

  • 登場人物・・・Aさん、Aさんのご両親、Bさん(Aさんの隣人)
  • Aさんのご両親はAさんとは別居

Aさんは、都心の喧騒から逃れるために、静かな町に引っ越すことを決めました。Aさんは土地を購入し、そこに二世帯住宅を建てる計画を立てました。Aさんのご両親は年を取っていたので、Aさんはご両親と一緒に住むことを望んでいました。しかし、Aさんが計画を進めていく中で、隣の土地の所有者であるBさんとの間に境界問題が発生しました。Bさんは、Aさんが建てようとしている建物が自分の土地に越境していると主張しました。Aさんは驚き、Bさんの土地の境界線を確認するために、地元の役所に行きました。役所での調査の結果、Aさんの土地の境界線は、思っていたよりも少し内側にあることが判明しました。これにより、Aさんの二世帯住宅の建築計画は一時的に停止しました。二人は何度も会い、話し合いを重ね、最終的にはAさんがBさんの土地の一部を買い取ることで合意に達しました。

最終的に、Aさんの家は無事に完成し、ご両親と一緒に新しい生活を始めることができました。境界問題がどのように解決され、隣人との関係性を良好にすることにより解決した相談事例です。困難な状況に陥る前に、事前の調査等の準備がいかに必要であるかを示してくれています。自宅を建てるための土地購入はどのような家を建てたいかを含めて信頼できるハウスメーカーに相談することが大切です。

【事例2】兄弟相続の事例

  • 家族構成・・・Fさん、Fさんの弟、Fさんの母親
  • それぞれ別のお住まいに居住

Fさんの父親が亡くなり、Fさんの母親と弟が実家を相続しました。Fさんは都心で働いており、将来母親には施設に入ってもらいたいこともあり、相続した実家を売却しようと考えていました。一方、Fさんの弟は地方都市の実家での生活を望んでおり、相続した家を建て替えることを考えていました。Fさんは、実家を売却すれば、その資金を今後の生活に使うことができるとし、将来の住宅購入の費用にもなると主張しました。一方、Fさんの弟は、実家の土地に新しい家を建てれば、地方都市での静かな生活を送ることができると反論しました。話し合いの結果、二人は互いの意見を尊重し合うことを決めました。Fさんは、弟が地方都市での生活を楽しむことができるように、実家の土地に新しい家を建てることを承諾しました。一方、Fさんの弟は、Fさんが都心での生活を楽しむことができるように、他の財産をFさんに相続してもらうことにしました。残された母親は、弟と住むことになりました。

この相談事例は、母親が亡くなってしまってからの再度トラブルが起きないように事前に不動産の名義や遺言等についても話し合い、母親の生前中に相続対策をしておくことが必要です。二世帯住宅を建てる前に親の相続や兄弟の相続、自分の相続も考えて専門家や信頼できるハウスメーカーに相談しておきましょう。

【事例3】二世帯住宅建築か分譲住宅購入か

  • 家族構成・・・Sさん、夫(次男)、保育園に通う子どもたち
  • Sさんのご両親は別で郊外にお住まい

Sさんは幼い子どもたちの今後の教育と、今は元気ですがいずれ介護が必要となってくるご両親の両方について悩んでおり、新しい家について計画を立てました。現在住んでいる賃貸住宅は夫の地元で、都心で便利な場所にあり、まわりには新築の分譲住宅がどんどん建築されています。一方、Sさんのご両親は郊外で暮らしており、広大な土地と立派な庭付きの戸建住宅にお住まいでした。Sさんは、都心の分譲住宅を購入するか、ご両親の住む実家を二世帯住宅に建て替えをするかどちらが最善か頭を悩ませました。Sさんは、子どもたちにとっては都心の生活が良いかもしれないと考えました。進学に希望する学校や夫の職場にも近いからです。しかし、ご両親の介護を考えると、郊外で二世帯住宅を建てることが最善の選択かもしれません。

Sさんは、この問題を解決するために、家族全員で話し合うことを決めました。彼女は夫とご両親に自分の考えを伝え、彼らの意見を尋ねました。夫は、都心での生活が子どもたちにとって最善だと考えていましたが、ご両親は郊外での生活を望んでいました。結局Sさんは、子どもたちの今後を考慮して、現在住んでいる都心で分譲住宅の購入を決めました。彼女は、この決定が家族全員のための最善な選択だと信じていました。

この相談事例は、子どもの教育と親の介護をどのように考えていくのか現代の社会情勢を表す、大きな決断が必要な問題です。夫の地元であることと現在すでに長く住んでいる環境がとても素晴らしくそれを大切にしたい気持ちが大きく影響したと思います。また、親の介護について今すぐ必要という状況ではなかったことも、都心で分譲住宅購入を選択する要因になったかと思います。その上で、今後親の介護が必要となったときに親との二世帯住宅による生活を選択することは十分に考えられます。そのときは今回購入する分譲住宅を数年後に売却したり賃貸したりすることが可能です。また今回二世帯住宅を建築しないことになった理由には、実家を取り壊して建築するほど古くなかったこと、床面積が広く解体費用がかさむこと、さらに庭や外構の設備が大きくてその処分費がかかることでした。また建て替えになるため、仮の住居の手配や引っ越しが大変だということも大きい要因でした。

まとめ

同じような相談事例はよく見受けられます。それぞれの選択にはメリットとデメリットがありますので、それらを考慮に入れて最適な選択をすることが重要です。

二世帯住宅建築の場合

メリット 家族間の支援 二世帯住宅では、両親が子どもをみてくれたり、また両親を近くで見守ることが可能。
コスト削減 玄関や水回りなどを共用すると、建築にかかる費用を抑えることが可能。
デメリット プライバシーの問題 世代の異なる二世帯が同居するため、食事や入浴、就寝時間といった生活習慣や価値観の違い、訪問客の受け入れなどが原因で、家族間のトラブルに発展することもある
家計管理 二世帯住宅に住む場合、水道光熱費を世帯ごとにどう負担するかというのも家庭によって異なる。
相続の問題 二世帯住宅が親と子の共有名義だった場合、親が亡くなると親の共有持分は相続の対象になり、兄弟姉妹などがいる場合は遺産分割の方法を巡ってトラブルになる可能性がある。

分譲住宅購入の場合

メリット 購入前に確認 すでに完成している住宅をその目で確認してから購入することが可能。
統一感のある街づくり 分譲住宅が大型分譲地内の場合には、街づくりまで計画されている場合があり統一感がある。
費用が割安 分譲住宅は土地と建物がセットになっているため、購入価格は注文住宅と比べて抑えられる。
土地の評価 分譲住宅の土地は価値が保たれやすい。
デメリット 土地の広さが確定 分譲住宅の場合、「庭をもう少し広くしたい(狭くしたい)」などの要望を通すことは困難。
間取り等仕様変更不可 すでに住宅が建っているため、間取りなどの変更は難しい。
施工会社が決まっている 分譲住宅の場合は施工会社が決まっており、後から変更することはできない。
工事の経過を見ることができない 分譲住宅の場合は完成後の家を購入するため、工事の経過を見られない場合が多い。

最終的には、ご自身のライフスタイルや家族構成、予算などを考慮に入れて選択することが重要です。例えば、高齢の親と一緒に住むことを考えている場合、二世帯住宅建築が適しているかもしれません。一方、予算を抑えたい場合や、すぐに住み始めたい場合は、分譲住宅購入が適しているかもしれません。

今回は不動産の相談事例をもとに、実際起こりうる状況についてご説明いたしました。このような場合、事前に自分がどんな状態であるのかを、客観的に考えておくことがとても大切になります。ご心配の方はメリット、デメリットを考慮した上で、自分にはどの選択がベターなのか信頼できるハウスメーカーなどに相談しましょう。

執筆者

山田 一博

~測量・登記~ 京都やまだ事務所 代表・土地家屋調査士

20年土地家屋調査士業界で役員を続けており「相続・空き家等の不動産に関する問題を【境界を解決】する手法でお客様に提案したい」という思いから土地家屋調査士による士業連携サービスを行う事務所を開設。現在は学会等にて研究をする傍ら、執筆、セミナーを行う。特に相続不動産のコンサルティング、売却、生前贈与に関する相談を得意とする。

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