大和ハウス工業株式会社

DaiwaHouse

連載:私をつくる、モノやコトのはなし。ファッションの力で世界を変えるために。スカーフに込めた願い

連載:私をつくる、モノやコトのはなし。

ファッションの力で世界を変えるために。スカーフに込めた願い

2024.03.29

    井上さんのロングインタビューはこちら

    「今の行動」に希望を持てるか。ザ イノウエブラザーズが語る、未来のつくり方」

    「今の行動」に希望を持てるか。ザ イノウエブラザーズが語る、未来のつくり方」

    詳細を見る

    さまざまな国や地域の労働環境や貧困などの社会問題を解決するために、作り手と共に伝統をアップデートして、新たなビジネスを生み出すThe Inoue Brothers...(ザ イノウエブラザーズ)。井上聡さんと弟である清史さんは、日系二世であることからデンマークで受けた差別を原体験として、ローカルコミュニティにおける数々の課題に立ち向かってきました。

    ボリビア・ペルーのアルパカ、パレスチナの手刺繍、沖縄の琉球藍染。世界各国の伝統文化に着目し、ザ イノウエブラザーズのビジネススキルと作り手の知識を合わせながら新たな商品を生産しています。

    「不公平な立場にいる作り手たちの力になりたい」と尽力し続ける井上聡さんに、「自らを奮い立たせるモノ」について聞きました。

    どちらが"善"か"悪"かではない

    井上さんのそのスカーフ、素敵な青色ですね。

    これはパレスチナのスカーフ「ケフィエ」です。この白黒バージョンは、PLO(パレスチナ解放機構)執行委員会議長であり、パレスチナ国初代大統領であるヤーセル・アラファートが巻いていた印象が強いかもしれません。

    パレスチナの伝統品ですが、あえて"中道=どちら派でもない"という意味を込めて、青色を選びました。このスカーフを巻いていると、パレスチナの人もイスラエルの人も穏やかに接してくれます。

    僕たちは「どちらが善でどちらが悪なのか」を発信したいわけでも、プロパガンダでもなくて。"かっこいい"から商品を手に取ってほしいですし、一着一着の服の背景にあるストーリーを通じて、着る人たちのマインドが少しシフトしたら嬉しいと、ファッションという"手段"を選び活動してきました。

    こうして、色を変えるだけのシンプルな方法で、メッセージや意味が変わるのもおもしろいですよね。このスカーフは僕にとって、人々が共に生きていくために重要なことを教えてくれるリマインダーになっています。

    周りの幸せが実現しないと、自分の幸せは完成しない

    パレスチナといえば、ザ イノウエブラザーズとして「タトゥリーズプロジェクト」も欠かせないモノですよね。このプロジェクトについても少し聞かせてください。

    2012年5月にイスラエルの軍事占領下にあるパレスチナ自治区を初めて訪れ、長い間続いてきた民族間の紛争を目にし、パレスチナとイスラエル、この2つの民族が共存していかなければいけないと考えました。パレスチナ自治区に暮らす女性たちによる手刺繍"タトゥリーズ"を通じてパレスチナの文化を世界に伝えるべく、「タトゥリーズプロジェクト」が始まったんです。

    ©ADISH

    一時、中にいる権力者たちが共存を、若者たちが変化を望んでいない限りは、僕たちにできることはないと身をもって感じて、プロジェクトを休止していました。ですが2020年、イスラエル人とパレスチナ人の20代の若者たちが手をとって立ち上げたブランド・ADISH(アディッシュ)と出会って希望を見出しました。

    井上さんが着用しているハーフパンツはADISHのもの。

    僕たちとADISHは共にプロジェクトを進めるようになりましたが、 2023年10月7日にパレスチナのガザ地区を支配するハマスがイスラエルを攻撃したことにより状況は一変し、今もプロジェクトは休止せざるを得ない状態が続いています。

    自分の周りが幸せではない限り、僕も100%は幸せにはなれないと思っています。だから、実は今は人生で一番精神的に苦しいかもしれない…。僕の子どもたちにそのことを説明して、クリスマスもお正月もお祝いしませんでした。「今世界でこういうことが起きているんだよ」と話すと、すぐに納得してくれましたね。

    僕がファミリービジネスを選んだわけ

    お子さんたちをはじめ、ご家族は理解者であり同志なんですね。

    ザ イノウエブラザーズは弟の清史と始めたプロジェクトですが、妻のウラの存在もとてつもなく大きいです。僕らの日本でのルーツは大阪にありますが、日本での会社を大阪においているのもそれが理由。心強いファミリーがサポートしてくれています。

    弟の清史さんと。©ROBERT LAWRENCE

    幸せを一番感じさせてくれるのは、やはり家族の存在です。仕事を一生懸命に頑張れば頑張るほど、家族との時間が削られるのではいくら働いても幸せになれない。今もすぐ子どもたちとコミュニケーションを取れる環境を作っていて、子どもたちも「お父さんは家族より仕事の方が大事だ」と感じたことはないんじゃないかな。

    僕にとっては、できるだけ家族との時間を優先するのが大切で、ザ イノウエブラザーズとして目の前の課題に向き合い続けられる秘訣ですね。

    PROFILE

    井上聡Satoru Inoue

    1978年、デンマーク生まれ。コペンハーゲンで広告代理店のインターンから実践的なグラフィックデザインを学び、数年後にはアートディレクターに就任する。早くして亡くした父の、お金や名声を優先せずに自らの正義を貫く生き方を胸に、2004年に弟である清史さんとソーシャルデザインスタジオThe Inoue Brothers...(ザ イノウエブラザーズ)を結成。現在は沖縄に移住し、伝統工芸である琉球藍染に着目したプロジェクトも手がけている。

    未来の景色を、ともに

    大和ハウスグループも「生きる歓びを、分かち合える世界」の実現に向け、様々な取り組みを進めていきます。

    大和ハウスグループは、事業を通じて社会に新たな価値を創出し、持続可能な社会の実現を目指しています。SDGsへの取り組みについてはこちらをご覧ください。

    大和ハウスグループのSDGs

    大和ハウスグループのSDGs

    詳細を見る

    この記事をシェアする

    サステナビリティ(サイトマップ)