大和ハウス工業株式会社

DaiwaHouse

特集:未来をつくるって、つまりどういうこと? 挑戦をつぶす「失敗させない」文化。ビリギャル小林さやかさんが考える、未来をつくるマインドセット

特集:未来をつくるって、つまりどういうこと?

挑戦をつぶす「失敗させない」文化。ビリギャル小林さやかさんが考える、未来をつくるマインドセット

2024.08.30

    映画化もされたベストセラーのモデルとして、一躍脚光を浴びた「ビリギャル」こと小林さやかさん。その本とは、言わずと知れた『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』です。小学校4年生程度の学力だった高校2年生のギャルが、著者の坪田信貴先生に導かれて慶應義塾大学に受かるまでを描き、120万部を超えるミリオンセラーになりました。

    それから小林さんは大学を卒業し、ウェディングプランナーとして働いたのち、再び学びの道へ。コロンビア大学教育大学院に入学し、2年間のプログラムを終え、今年5月にオールAで卒業しました。

    認知科学を勉強した小林さんは今、未来に向けて「日本人のマインドセットを変える」ための活動に取り組んでいるそうです。「挑戦していないと、やっぱり幸せを感じられないんです」と語る小林さんの背景にある思いとは?

    「ビリギャル」を科学的に理解したかった

    小林さやかさんは社会人生活を送った後、2つの大学院で学び直しました。2019年4月、聖心女子大学大学院へ。修了後の2022年9月、34歳の時に今度はコロンビア大学教育大学院に入りました。そもそもなぜ、大学院に行こうと思ったのでしょうか。

    「20代の頃、ありがたいことに年間120回くらい講演会に登壇していたんです。最初は、依頼してくださった方々の期待に応えるために必死でした。でもやりがいはある一方で、だんだん慣れが生じてきてしまって。7年ほど"ビリギャル"として同じ内容を話すうちに、成長している実感がなくなってしまいました。心に穴が空いて、スースーするような感覚があったんです。それで、高校時代に勝る努力や挑戦をしたいなと思いました」。

    コロンビア大学教育大学院で専攻したのは、認知科学です。認知科学は、人を含めた動物の認知的行動、例えば「考える」「学ぶ」「覚える」といった認知行動のメカニズムを解明しようとする学問のこと。なぜこの分野を選んだかというと、「ビリギャルがなぜ慶應大学に行けたのかを、私自身が科学的に理解したかったから」だと言います。

    「時々、『この子は元々頭がよかったから受かったんだ』と指摘されることがありました。当時のIQがどの程度だったか、それはタイムマシンに乗らないとわからないので、今考えても仕方がありません。坪田先生が本で伝えたかったのは、『本人にちゃんと意思があり、正しい努力の方法を教わり、それをサポートしてもらえる環境があれば、人は誰でも成長する』ということ。そういうマインドセットについて、ちゃんと学びたいと思ったんです」。

    日本人のマインドセットを壊したい。子どもの幸福度が下がっているわけ

    ニューヨークで学ぶうち、日本人のマインドセットについて発見がありました。

    「日本人には失敗を恐れ、リスクを取らない傾向があると感じました。恥をかくのを恐れて、挑戦が苦手。例えば授業でも、アメリカ人は聞かれてもいないのにずっと喋っていて、私は間違えるのが怖くて口が動かなかった。失敗を恐れるマインドセットを持っているだけで"負けている"気がしました」。

    小林さんはこのマインドセットが生まれる要因に、結果を重視しすぎる文化があると考えています。

    「インスタライブをした時に、ある男の子が質問を送ってくれたんです。『ビリギャルに触発されて早稲田大学に行きたいと思っています。三者面談で話したら、商業高校から早稲田はさすがにリスクが大きいからやめろと言われました。さやかさんもそう思いますか?』と。私は『リスクというのは何なのか聞いてきて』と答えました。がんばったにもかかわらず不合格になることをリスクというのだとしたら、何もできないですよね。仮に不合格だったとしても、挑戦することによって彼の知識はすごく増えて、未来の選択肢も広がります。挑戦しなかった世界線の彼と、挑戦した世界線の彼はまったく違うはずです」。

    「プロセスに光を当てた瞬間に、失敗が失敗ではなくなります。受験が終わって勉強しなくなったとしても、他のものにまた興味が湧くようになるはず。結果ではなくプロセスを見ることこそ、『サステナブル』なんです」。

    「私の人生に無駄なものはなかった」と小林さんは断言します。

    「何が起きても、前向きに考えられる。私は最近離婚したのですが、結果で判断するとネガティブに捉えがちなことかもしれません。でも、そこに至るまでのプロセスで成長できますし、お互いが幸せになるために必要でした。そういうマインドセットがあるから、後悔せず、『これからどんな出会いがあるだろう?』と立ち上がれるんです」。

    プロセスを重んじるマインドセットは、子どものウェルビーイングや子どもが自身の未来をつくっていくための"生きる力"にもつながると話します。

    「仕事のプロジェクトで成果を出した時など、自分の能力を使って何かを成し遂げた時に人は幸せを感じます。これを体験するには、挑戦が不可欠。大人が子どもの前の障害物を取り除き、失敗させない社会では味わえないですよね。そうすると、子どもたちのウェルビーイングが下がるのも当たり前です。成功体験を積めないので自信も持てず、生きる力を養えないんです」。

    大人が自分の人生を謳歌する。教育とは「憧れ」

    ビリギャルだった高校生の頃、小林さんはどのように未来の見え方が変化していったのでしょうか——。未来をつくる出発点は、モチベーションにあるそうです。

    「モチベーションのスイッチは、『I can do it』と『I wanna do it』の両方があることです。私が勉強を始めたのは高2ですが、小4のドリルからスタートしました。坪田先生が調整した結果の難易度だったのですが、そのレベルだと机に向かうことが苦ではないし、ハイスピードで進められてエンジンがかかってくる。最初から難しいことをやろうとすると自信を持てません。小さな『できた』を繰り返すことで、大きな力になる。これが『I can do it』です。もう一つ重要なのが、『I wanna do it』。当時の私には、慶應って嵐の櫻井翔さんが通っているイメージで(笑)。入学したら、きっとキラキラした人たちにいっぱい会えると思ったんです」。

    「I can do it」と「I wanna do it」、日本人は両方とも持ちづらいのではないかと小林さんは指摘します。

    「なぜかというと、日本人にとっての『がんばる』は『我慢』に近い。『みんながやっているからやらなきゃ』は、モチベーションが上がらなくて当然です。もしタスクが難しすぎると感じたら、自信を持てるレベルに下げる。難易度を調整することは大事だと思います」。

    モチベーションを上げた先に必要なのが、グリット、つまりやり抜く力です。

    「アンジェラ・ダックワースさんという方の『やり抜く力 GRIT』という本が世界的に話題になりました。子どもだけがやり抜く力を身につけるのは難しい。子どもは親のマインドセットに大きな影響を受けます。親が何かに没頭していたり、仕事を楽しんでいたりする姿を見ることで、子どもにも自然とやり抜く力がついていく。大切なのは、親がロールモデルになることだと思います」。

    だからこそ、小林さんがこれから力を入れていきたいと考えているのは、「大人のエンパワーメント」です。

    「教育が子どもにフォーカスしすぎていて、大人が自分たちの人生を置き去りにしている気がします。ワクワクしないで生きている大人が多くいると思いませんか? 子どもにとって、周りに憧れられる大人がいるかどうかって、とても大事だと思います。対象は親に限る必要はありません。自分の人生を謳歌する面白い大人がたくさんいて、子どもがそういう人に出会える機会が増えたらいい。憧れられる大人を増やすために、私はこれから大人をエンパワーメントする事業を始めます。教育って、憧れなんです」。

    PROFILE

    小林さやか

    小林さやかSayaka Kobayashi

    『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應⼤学に現役合格した話』(坪⽥信貴・著)の主⼈公であるビリギャル本⼈。慶應義塾⼤学卒業後はウェディングプランナーとして従事した後、ビリギャル本⼈として500回以上の講演や記事執筆など、幅広い分野で活動しながら、教育科学の研究のため聖⼼⼥⼦⼤学⼤学院に進学、修⼠課程を修了。また、「⼦どもの能⼒を信じて引き出すことができる教育者の育成」を研究テーマに、 ⽶国コロンビア大学教育⼤学院で認知科学を専攻し、 2024年5月にオールAにて修了。新著に『私はこうして勉強にハマった』(サンクチュアリ出版)がある。

    未来の景色を、ともに

    大和ハウスグループも「生きる歓びを、分かち合える世界」の実現に向け、様々な取り組みを進めていきます。

    大和ハウス工業が運営する「みらい価値共創センター コトクリエ」では、小学生(4~6年生)向けの「ジュニア・コトクリエカレッジ」や、主に高校生を対象とした探求学習支援制度など各種イベントを開催しています。

    コトクリエ

    コトクリエ

    詳細を見る

    この記事をシェアする

    サステナビリティ(サイトマップ)