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サステナブル(Sustainable)、
サステナビリティ(Sustainability)とは?

サステナブル(Sustainable)、サステナビリティ(Sustainability)とは、「人間・社会・地球環境の持続可能な発展」を意味します。

サステナブル(Sustainable)とは、本来は「維持できる」「耐えうる」「持ちこたえられる」を意味する形容詞です。ただし近年は、地球環境の持続可能性、人間社会の文明・経済システムの持続可能性の意味や概念として一般的に用いられるようになりました。その概念の変遷を振り返ってみましょう。

文 橋場一男

世界の「サステナブル」なアイデアを知りたい方はこちら

このままでは地球がもたない!
有識者たちのシンクタンク、ローマ・クラブが1972年に「人類の危機」レポートで警告

時代は、アポロ計画が終了した1972年に遡ります。

この年の3月に、ローマ・クラブ(※1)が発表した『成長の限界―ローマ・クラブ「人類の危機」レポート』(大来佐武郎訳、ダイヤモンド社1972年刊)(※2)は、世界に大きな衝撃を与えました。そこには、人口と工業投資がこのまま右肩上がりに幾何級数的成長を続けると、地球の天然資源は枯渇し、環境汚染は自然が許容しうる範囲を超えて進行することになり、100年以内に成長は限界点に達するという衝撃的な内容が記されていたのです。

その後、経済成長と環境保護は、ゼロサム(足してゼロのこと)関係にあるという前提の下に議論が進み、資本主義社会制度そのものに手をつけなければ環境問題は解決できないと主張する論者も現れます。しかし、こうした論調に、経済的発展を望む開発途上国や経済成長論者は異を唱えます。

  • ※1 ローマ・クラブとは、1970年にスイス・ヴィンタートゥールに本部を構える民間組織で、資源・人口・軍備拡張・経済・環境破壊などの全地球的な問題に対処するために設立されたシンクタンク。科学者、経済学者、プランナー、教育者、経営者などによって構成され、日本からも、政治学者の猪口邦子氏、元東京大学総長の小宮山宏氏、全地球問題担当大使の西村六善氏らが参加しています。
  • ※2 『成長の限界―ローマ・クラブ「人類の危機」レポート』とは、ローマ・クラブから委嘱された、マサチューセッツ工科大学のデニス L. メドウズ(Dennis L.Meadows)を主査とするプロジェクトチームの研究成果をまとめたもの。

経済成長と環境保護は両立できる
1992年の地球サミットで「アジェンダ21」が採択される

やがて1980年代に入ると、経済成長と環境保護の二者択一の考え方ではなく、1980年頃にドイツで生まれた、経済成長と環境保護は両立できるとする「エコロジー的近代化論(Ecological Modernization)」に注目が集まるようになります。

1984年に国連が設立した「環境と開発に関する世界委員会(ブルントラント委員会)」は、1987年に報告書『地球の未来を守るために(Our Common Future)』をまとめます。その内容は、持続可能な発展(Sustainable development)を、人類の課題であるとして取り上げ、経済成長と環境保全の関係について「将来世代のニーズを損なうことなく現在の世代のニーズを満たす」とする「持続可能な開発」の概念を発表するものでした。

報告書では「持続可能な発展」こそが「将来の世代のニーズを満たしうる」発展であると定義され、この報告書をきっかけとして「サステナビリティ」という言葉と概念が世界に広く認知されるようになったのです。

2005年に刊行された『持続可能な世界論』(南山大学学術叢書・ナカニシヤ出版刊)で、著者の深井慈子氏は「『持続可能な発展』を取り上げた背景には、途上国の懸念を払拭するために、環境と途上国の発展を両立させる道を探ることを国際政治の課題として位置づけようとする政治的意図が含まれていた」とも記しています。

1992年6月、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催された「地球サミット(環境と開発に関する国際連合会議)」では、21世紀に向けた持続可能な開発のための人類の行動計画「アジェンダ21」が採択されました。その骨子は、環境への影響を最小限に抑えた「持続可能な発展」です。

貧困と飢餓のない世界を目指して
「地球サミット2002」で合意されたMDGs
その成果は「SDGs」へと引き継がれる

それから10年後、2002年に南アフリカ共和国、ヨハネスブルグで「地球サミット2002(持続可能な開発に関する世界首脳会議)」が開催され、「アジェンダ21」の持続可能な発展への取り組みを強化するためには、環境面だけでなく南北問題(先進国と途上国の経済・社会格差の問題)や貧困の克服が不可欠であることが確認され、「持続可能な開発に関するヨハネスブルグ宣言」などが採択されました。

貧困と飢餓の撲滅に関しては、その2年前となる2000年に、アメリカ・ニューヨークで開催された「国連ミレニアム・サミット」で、貧困と飢餓の撲滅を始めとする8つの目標を掲げた「ミレニアム開発目標(MDGs)」が採択されています。このビジョンは開発分野における国際社会共通の枠組みとして用いられ、一定の成果を上げました。達成期限となる2015年までの15年間で、開発途上国の1日1ドル25セント未満で暮らす人々の人口比が、47%から14%に減るなど具体的な数値にも表れ、グローバルな目標の設定により数百万人を貧困から救出できることを証明したのです。

その成果は「2030アジェンダ」に引き継がれます。2015年9月、ニューヨーク国連本部で「国連持続可能な開発サミット」が開催され、150を超える加盟国首脳の参加の下、我々の世界を変革する:「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。これは、序文、政治宣言、持続可能な開発目標(SDGs:17のゴール、169のターゲット)、実施手段、フォローアップ・レビューで構成されています。

なかでも行動指針としてまとめられた「持続可能な開発目標(SDGs)」は、「地球サミット2002」で合意されたMDGsの15年間の成果を土台とする新たな行動目標となり、国家、企業、個人がその目標の達成に向けた取り組みに挑んでいます。

人間、社会、地球環境、それぞれにおいて持続可能な発展を目指すことがサステナブルな社会を実現する

企業でもさまざまな取り組みが行われています。例えば、コカ・コーラ、ネスレ、イケアなど80社以上のグローバル企業は、一丸となって、SDGsの達成のためにイギリス政府がどのように貢献していくかを問う公開書簡をイギリス首相へ送り、民間企業が役割を果たすためのフレーム作りを求めました。また、伊藤園、ユニリーバ、エリクソンでは既に、中核的事業とSDGsの具体的目標を結びつけた測定可能な目標の開発に積極的に取り組んでいます。

実際に、2016年に世界中の986社を対象として実施されたPwCの調査結果によると、「SDGsに取り組む用意がある」が71%、「自社ビジネスがSDGsに与える影響を測定するツールを有している」が13%、「5年以内にSDGsを事業戦略に組み込む予定がある」が41%という結果になっています。

国が主体となって推進されていたMDGsが国だけでなく民間企業も積極的に取り組むSDGsへ変わり、世界的な課題解決のための取り組みはより重要視され、広がりを見せています。

このように、今日の国際社会における「サステナビリティ」は、地球環境保護の観点だけでなく、社会(経済格差・社会格差)や人間(人権、教育、ジェンダー)、途上国の諸問題の解決などを含めた「持続可能な発展」を意味する言葉として世界で認知され、サステナビリティ=「人間・社会・地球環境の持続可能な発展」と理解されるようになりました。

サステナブルな社会を実現するために解決しなければならない課題

持続可能な社会の実現のために国連が分類した5つのP(分野)People(人類),Planet(地球),Prosperity(豊かさ),Peace(平和),Partnership(パートナーシップ)の課題を見ていくと、それぞれの分野の課題が、深いところでつながっていることが見えてくる。人間、社会、地球環境のあらゆる問題は統合的に解決していかなければならないのだ。

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