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連載:5分でわかる!サステナブルニュース「再配達」
2024.05.31
「即日配送」「翌日には届きます」。
ネット通販を利用するとこうした便利な言葉を頻繁に目にします。欲しいと思った物がすぐに届くのは本当に便利なことです。ですが近い将来、あなたが頼んだ物は、指定の日時に届かなくなるかもしれません。
実は今、物流業界は「2024年問題」に直面しているのです。この問題を緩和させる一つの策として「再配達の削減」が挙げられます。「荷物が届くのを忘れてた。でもまた届けてもらえばいいか…」と思っている方は、ぜひ「再配達の何がいけないのか?」を考えてみてください。
物流業界が直面する2024年問題とは、残業時間の規制によって、トラックドライバーなどが不足し、運送能力が低下する問題です。2025年には全国で約28%、2030年には約35%の荷物が運べなくなると指摘されています。
特に東北地方や四国地方は事態が重く、最も深刻な秋田県では、2030年にマイナス46%と試算されています(※1)。たった6年で物流量がほぼ半減してしまう可能性があるのです。
ただでさえ荷物の運び手不足が懸念される中、追い打ちをかけているのが、年間約5億個にものぼる「再配達」の存在です。ポストに入っている不在通知、一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。電話やアプリで連絡すれば、すぐに無料で再配達をしてくれます。その気軽さゆえに再配達は"当たり前"の存在となり、今では大きな問題になっています。
※1:出典:野村総合研究所「トラックドライバー不足時代における輸配送のあり方」(2023)
再配達、実際に何が問題なのでしょうか?
全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)事務局長の平田裕之さんは、「国土交通省の調べによると、2023年10月の再配達率は11.1%、つまり、10人に1人の配達員が再配達"だけ"をしている計算になります。これは年間6万人のドライバーの労働力に匹敵します」と説明します。
「2024年問題が叫ばれる一方で、荷物の数は右肩上がりです。国土交通省は、2025年に再配達率を7.5%にする目標を定めていますが、野心的な数字であることは間違いありません」(平田さん)
さらに平田さんは「再配達は環境面の負荷も重大です」と指摘します。
「年間、再配達によるCO2の排出量は25.4万トンにものぼっています(令和4年度国土交通省試算)。これは東京ドーム約104杯分、家庭のCO2排出量では約6万6649世帯分に相当します」(平田さん)
©JCCCA
「再配達削減は、なんとなく地球環境によさそう」と感じますが、まだピンときませんよね。でももしかしたら、こんな未来がやってくるかもしれません。
「CO2排出の弊害として、イメージしやすいのは地球温暖化でしょう。地球温暖化は皆さんの生活に直接的に影響を及ぼすようになっています。例えば、2023年は世界的な猛暑でトマトが不作になり、例年の約2倍の値段になりました。トマトに限らず、地球環境の変化が、皆さんの財布に直撃する未来が現実になりつつあります」(平田さん)
「再配達も同様です。これまで再配達は、すべてが送り手側の負担でした。ですが、もしかしたら、頼んだ物が希望の日時に届かなくなるかもしれません。新鮮な水産物や農作物が届かなくなるし、再配達を頼んだら別料金がかかる、なんていうこともありえる話です」(平田さん)
では一体、再配達を減らすためにどのような取り組みができるのでしょうか? 再配達の原因の一つに「そもそも荷物が来ることを知らなかったこと」があげられます。
「配達という行為は、送り手と受け手のタイミングが合わないと成立しません。受け手の意識が低ければ再配達は増える一方です。まず始めやすいのが『置き配』です。玄関前や車庫など、あらかじめ指定した場所に届けるようになれば、再配達は確実に減ります」(平田さん)
こうした状況を受けて、各企業や自治体が取り組みに乗り出しました。
長野県諏訪市の実証実験では、受け手の自宅に簡易宅配ボックス「OKIPPA(オキッパ)」を4カ月間設置した結果、再配達率が84.6%減ったという成果を出しています。
大和ハウス工業と株式会社ナスタは、防犯カメラ機能付きのインターホンを搭載した戸建住宅向け宅配ボックス「Next-Dbox+S(ネクスト・ディーボックス プラスエス)」を共同開発し、導入を進めています。
24時間自宅前を録画でき、夜間でもナイトビジョン機能を用いることで、鮮明に撮影・録画することが可能。
実は、戸建住宅への宅配ボックスの設置率は、マンションと比べて半分程度と低い数値です(ナスタ調べ)。ただ玄関に置くだけでは盗難・破損の心配がありますが、堅牢なセキュリティで保護された宅配ボックスであれば、その心配はありません。併せて、24時間自宅前を録画できるインターホンを開発。夜間でもナイトビジョン機能を用いることで、鮮明に撮影・録画することができます。
すでにAmazonやZOZOTOWNでは購入時に置き配を選択することができるようになっています。まずは私たちができる第一歩として、「置き配」の活用は必須となりそうです。
「置き配」以外でも、ドライバーや輸送能力の低下をどう補うか、送り手側も物流の効率化に乗り出しています。
人口が約700人の山梨県小菅村では、2021年からドローンによる自動配達が始まっています。注文を受けてから、すぐに商店で品詰めをしてドローンが離陸。注文してからすぐにドローンがやってくるので再配達のリスクも限りなく減ります。牛丼やビールなどの食品も安全に届けることができ、今では夏場にアイスクリームが溶けずに最短で配達することができるまでの精度になっています。
受け手と送り手の間をつなぐ物流拠点の効率化も急務です。
大和ハウス工業が手がける物流施設「DPL流山」。
大和ハウス工業は、約200カ所にのぼる「DPL(ディープロジェクト・ロジスティクス)※2」という物流施設すべてに、オンライン上でのトラック予約受付サービス「MOVO Berth(ムーボ・バース)※3」を導入しています。2024年問題を見据え、2018年から導入を開始しました。
MOVO Berthでは、荷待ち・荷役時間をデジタルに記録、実態の把握を可能にしたことで車両の集中を計画的に分散し、荷待ち時間を削減しています。また、入出荷情報を事前に取得し、車両の到着順に作業計画を立てられるため、事務作業や庫内作業の効率化を実現。ドライバーだけではなく、物流を支える倉庫で働く人たちの労働環境も改善できています。
「MOVO Berth」の画面イメージ。
加えてトラック待機に伴う近隣の道路渋滞や、アイドリングによる排気ガスの排出量の削減にも貢献しています。DPLの入居テナントは、この「MOVO Berth」の基本機能を無償で利用することができるそうです。
昨今、物流デベロッパーとしてのシェアや存在感を高める大和ハウス工業。実は、1955年の創業当時に手がけていた祖業は「倉庫」でした。原点と向き合い、物流拠点の効率化から、物流業界全体の効率化や環境問題への対応策を模索、牽引しています。
前出の平田さんは「再配達が、物流に関わる方々のオーバーワークにつながっているとまずは知ってもらいたいですね。また、大和総研の調べによると、再配達が1%減ると約2万トンのCO2が減ると言われていますから、環境にも影響を与えることなんです」と指摘します。
再配達の削減のためには荷物の送り手(企業)、受け取り手(生活者)双方が意識を高めることが必要です。日々できる小さなことから始めて、再配達の削減に努めましょう。
大和ハウスグループも「生きる歓びを、分かち合える世界」の実現に向け、様々な取り組みを進めていきます。
Sustainable Journeyは、
2024年3月にリニューアルしました。