※平成26年9月撮影

神戸の海岸通りで海に面して建つ旧大阪商船神戸支店は、1922年に建築されたビルです。渡邊節氏は、このビルを建築するにあたって欧米の建築視察に出掛け、視察先で体験した多様な様式や新素材、新工法などを神戸支店の工事に活かしました。外壁にテラコッタ（素焼きの焼き物）を使用し、プラスター（石膏などを原料にした左官材料）を輸入・国産化。外観は欧米のオフィスビルの伝統様式を採用しており、ルネッサンス風オフィスビルの特徴がよく示されています。特に1階ベース部分のルスチカ（切石積み）風は荒々しく圧巻です。全体として三層構成で、中間部の外壁の柱型はフラットなテラコッタ張りで頂部に楣飾りが付き、その上に軒蛇腹があり最上階を形成。南面の隅角部分は円弧状の破風となり、その中央に渦巻きを持った飾り額が付いています。重厚で迫力のある外観は、港町・神戸のシンボル的存在になっています。

渡邊節氏の設計で1934年に建築された神戸証券取引所。1967年に取引所が廃止された後は、新聞社や映画館が入るビルとして使用されました。その後、1994年にオフィスビルである神戸朝日ビルディングとして建て替えられてリニューアル。現在は、コンサートや演劇などのイベントが行われる神戸朝日ホールも併設されています。低階層の外壁デザインなどに、渡邊節氏が設計した旧神戸証券取引所の名残がただよっています。