木枯らしが吹く時期は動くのが億劫になりがち。
屋内でじっとしていると筋肉が衰えて、より寒さが堪(こた)える体になってしまいます。
冬こそ積極的に運動を取り入れて、寒さに強い体をつくりましょう。
最初に筋肉の3つの役割についてご説明しましょう。一つ目はよく知られている、体を動かす役割。二つ目は熱をつくって体を温める役割。三つ目はさまざまな物質を分泌する役割です。今回は二つ目に注目します。
やせている人は、太っている人よりも寒がりの傾向があります。これは筋肉量が少ないから。寒さに強い体をつくるためには、筋肉をつけることが大切なのです。
人間の筋肉は20歳から50歳までの30年間をかけて1割程度減りますが、50歳を超えると年に1~1.5%と、急激に減少します。筋肉は鍛えれば強くなり動かさないと衰えるので、歳をとるほど、意識して筋肉を使うことが必要なのです。
体を温めるという観点で特に注目したいのは、肩甲骨の間の筋肉。意識しないとあまり動かすことのない筋肉です。肩を上げ下げしたり、前後に動かしたりするとポカポカしてくるでしょう。また、肩の上げ下げなどによって胸郭(心臓や肺を包んでいる骨格)を大きく動かすと、呼吸機能の維持や向上にも効果があります。
現代人は仕事や勉強で椅子に座り続けることが多い生活を送っています。長い時間座っているとエネルギー消費量が減って肥満につながったり、生活習慣病や認知症のリスクが高まったりすると言われます。また、肩や首のこり、腰痛の原因にもなり、筋肉の量や柔軟性が低下します。長時間椅子に座り続ける時は、30分に1回、少なくとも1時間に1回は立ち上がり、ついでに歩いたり腰を伸ばしたりするのが良いでしょう。
歩き回った後は、ゆっくりと椅子に座ります。時間をかけるほど足腰の筋肉を使うことになり、トレーニングになるからです。こうした日常のちょっとした動作を意識して行えば、筋肉をこまめに鍛えることが可能です。
筋肉を動かして体ポカポカ 肩甲骨・胸郭のストレッチ
肩甲骨を動かす(1)
- 1背中側に手を回し、左手首を右手で持ち、両腕を広げるように引き合います。
- 2力を抜き、右手で左手を右方向に引っ張り、ストレッチングします。
- 3反対側も同様に行います。
肩甲骨を動かす(2)
- 1ひじを曲げて左腕を上げ、右手でひじをつかんで両腕を広げるように両手を引き合います。
- 2力を抜き、右手で左ひじを右方向に引っ張り、ストレッチングします。
- 3反対側も同様に行います。
肩を触ってひじを大きく回す
指先で両肩を触り、ひじを回します。始めは小さく、だんだんと大きく回しましょう。前後とも行ってください。
胸郭全体を大きく動かすと呼吸機能の維持や向上にも効果があります。
胸郭を動かす
- 1椅子に座り、背筋を伸ばして右手を頭の後ろにつけます。息を吐いてからゆっくり吸い、ひじを天井に向け、左わき腹を縮めて右わき腹を伸ばします。この時、目線を右ひじに向け、ひじを少し後ろに引くとさらに胸郭が広がります。
- 2息をいっぱい吸い、ゆっくり吐きながら元の姿勢に戻します。5回繰り返し、反対側も同様に行います。
立ち上がるだけでもトレーニング
同じ姿勢を長時間続けていると体に悪影響を与えます。30分~1時間に1回は立ち上がり、歩き回ったり腰を伸ばしたりしましょう。
1両手を組んで全身を伸ばします。
2左右に少し体を倒して、体のわきも伸ばしましょう。
3腰に手を当て、上を見るようにして腰を反らします。ついでに腰も回しましょう。
温めてリラックス 手のひらマッサージ
体の表面に見えている血管は太くなったり細くなったりして体温を調節しています。単純に両手をこすり合わせてマッサージするだけでも、血行促進と体温上昇の効果があります。
1両手のひらをこすり合わせる。
2手のひらで反対側の手の甲をこする。
3指の付け根を5秒ほど握って離す。
4指を1本ずつ5秒ほど握って離す。
アドバイス
後藤 真二さん
スポーツクラブNAS株式会社 スポーツ健康医科学研究室 室長。健康になれるクラブづくりを目指して、安全かつ効果的で楽しいプログラムづくり、健康セミナーなどを行う。教育学博士、健康運動指導士。
2019年12月現在の情報となります。