「忙しいから仕方ない」という親の理屈は子どもには通用しないもの。
共働き世帯だからこそ気を配りたい、子どもとのコミュニケーションについて40年以上の家庭教師歴を持ち、多くの親子に出会ってきた松永先生に伺いました。
子育てで最も大切なことの一つが「食事」ですが、忙しい共働き世帯では手を抜きがちな部分でもあります。最近はデパ地下が充実し、おいしく色合いも美しい料理がバラエティ豊かに売り場に並んでいるでしょう。しかし、子どもが食べたいのは出来合いではない親の手作りの料理です。忙しい中、時間と手間をかけて作ってくれたという事実が子どもにとっては重要なのです。
とは言え、8時まで仕事をして帰宅すると9時を過ぎ、そこから作り始めて食事を終えるのは10時を回るという生活が、子どもの健康に良いはずがありません。そんな時、休日の作り置きが活躍します。週末にまとめて作って冷凍し、帰宅したら温めて出すだけでも良いのです。
また、小学校高学年くらいになったら、子ども自身に役割を与えるのもいいですね。野菜のカットなど下ごしらえを済ませておき、作り方をメモなどで伝えて、親が帰宅するまでの間に仕上げてもらうのです。少々失敗しても叱らないこと、自分でできたという達成感を持たせることが大切。次はもっと上手くやろうという意欲が湧くでしょう。
平日は親子で会話をする時間がないという方には、メモや交換日記などで子どもと文章のやり取りをするようアドバイスしています。子どもが出かけた後や寝た後に書いてテーブルの上に置いておけば、たとえ不在でも「おはよう」や「おかえり」という言葉の代わりになるでしょう。さらに、家の中に掲示板があれば、複数の家族が参加して情報を共有できるのでお勧めです。
伝える内容は何でも構いません。「今度の日曜日の予定は?」「〇〇がないから買っておいて」など、伝言に使ってもいいのです。
SNSやメールは便利な反面、安易に物事を済ませてしまいがちです。手書きの文字によってお互いの気持ちがより伝わりやすくなるでしょう。子どもにとっては、自分の言葉をいつでも受け止めてもらえるという安心感につながります。
話をする時間がなかなか持てないというお悩みの解決策は他にもあります。一番良いのは、子どもと一緒に家事をすることです。洗濯物を畳んだり、食事の後に一緒に片付けをしたりしながら、普段はできないような濃密な会話を試みてください。最初は面倒がっていても、楽しい会話ができるとなれば、進んで家事をするようになるでしょう。生きていくために必要な家事の技術も身につくので一石二鳥です。
お風呂に一緒に入るのも良い方法です。まさに「裸の付き合い」ができるのがメリット。子どもと過ごす機会が少ない方には貴重な時間となるはずです。
また、時々でも良いので、同じ布団で一緒に休むのもおすすめです。眠りにつくまでのわずかな時間でも、安心感に満たされて、子どもと素直な会話ができるでしょう。
仕事に家事に子育てに、1日30時間あっても足りないのに、趣味など到底持てないとお考えの方もいらっしゃるかもしれません。しかし私は、働くパパ・ママにこそ、趣味を持ってほしいと思います。幸福な人生とは、たくさんの趣味に彩られるものだと信じているからです。
ここで言う趣味とは、単なるショッピングや、テレビやゲームに時間を費やすことではありません。趣味とは、ガーデニングや手芸、音楽、絵画など自分の体で何かを創作すること。スポーツやキャンプなどで体を動かすのも良いでしょう。
忙しい中でも打ち込める趣味を持てば、毎日がきっと充実します。そんな親の姿を見て、子どもも好きな趣味を見つけて夢中になる素晴らしさを学びます。つまり、親が趣味を持つことは、子どもに幸せな人生をプレゼントすることなのです。
松永 暢史(のぶふみ)先生
教育環境設定コンサルタント。教育や学習の悩みに答える教育相談事務所V-net(ブイネット)を主宰。主体的な子どもに育てるための方法を提案している。著書に『賢い子どもは「家」が違う!』(リベラル社)、『将来の学力は10歳までの「読書量」で決まる!』(すばる舎)など。
2018年3月現在の情報となります。