私たちが何気なく行っている日常的な動作は
子ども時代に体験した動作が基礎となっています。
長年にわたりあそびと成長を見つめ続けてきたボーネルンドに
子どもの運動と発育についてアドバイスをいただきました。
子ども時代の経験は成長後に大きく影響するもの。大人になってから基本的な体の動作を習得するのはとても難しいことがスキャモンの発育発達曲線※に示されています。運動に関係のある脳の神経系の発育は、12歳までにほぼ100%に達し、それまでに体得した動きは大人になっても自然にできるということです。
一流のスポーツ選手には、幼い頃にさまざまな体あそびやスポーツを経験した人が多く、子どものうちに身につけた多様な動作が成長後の複雑な動きを支えることが分かります。反対に12歳までに基本的な動きを経験できていないと、複雑な動作ができないまま成長してしまうことに。幼少期に経験しておくべき体あそびを十分にできるよう、環境を整えましょう。
※スキャモンの発育発達曲線
発育発達学を専門とする山梨大学大学院中村和彦教授は、人間の基本的な体の動きは36種類に分類できると提唱しています。この「36の基本動作」を偏りなく幅広く身につけるには、子ども自らが好奇心を持って動くことが大切です。
楽しい、やりたいと思えることに繰り返し挑戦する自発的なあそびの中で、子どもたちはさまざまな動作を習得していきます。一方、スポーツ教室では特定の筋肉を使って同じ動作を繰り返しがちで、大人からの指導に合わせて運動するので受動的になってしまうため、注意が必要です。幼少期にはたくさんの動きを自然に体験できる体あそびをさせてあげましょう。
文部科学省は幼児期(3〜6歳の小学校就学前)に1日60分程度の運動を推奨しています。これは世界保健機構(WHO)でも推奨されている指針です。毎日60分と聞くと大変に感じるかもしれませんが、幼稚園や保育園での活動に加えて家庭でも気軽に楽しめるあそびを10分ずつでも取り入れれば達成できる課題ではないでしょうか。
家の中では単純ながら発展性があり、継続的に楽しめるあそびがお勧めです。ボールを腕や足に挟んで転がったり、上に乗ってバランスをとったり、アイデア次第であそび方はたくさんあります。また、親子でストレッチやマッサージをしたり、あそび感覚で拭き掃除などの家事をしたりするのも体あそびの一つです。朝の時間や夜のお風呂上がりなど習慣的に5分、10分ずつでもあそびの時間をつくりましょう。
お互いの温もりや優しさを感じるコミュニケーションの機会でもある親子の体あそび。子どもの成長を感じ、一緒に喜ぶことが大切です。
人間の複雑な動作を支える基本的な動作は36種類に分類できます。
できるだけ多くの動作を12歳までに身につけましょう。
アドバイス
株式会社 ボーネルンド
「あそぶことは生きること」を提唱し、子どものあそびと成長について研究と実践を重ねてきました。公園や幼稚園・保育園・小学校などの屋内外の遊び場づくり、親子が自由に遊べる室内あそび場「キドキド」の全国展開、世界中のあそび道具の販売など、あそびを通して子どもの健やかな成長を応援する事業を行っています。
2017年8月現在の情報となります。