健康で充実したシニア期を送るために、飼い主がしてあげられることは何か。
愛犬のクオリティ・オブ・ライフ(QOL=生活の質)の向上について、
犬専用のフィットネスクラブ「わんわんフィットネス」の
セラピストにお話を伺いました。
獣医学の進歩や飼い主の健康意識の高まりから、長寿命になっているペット。単に寿命を延ばすのではなく、健康上の問題がない状態で日常生活を送れる「健康寿命」を延ばし、最期までいきいきと暮らせるようにしてあげたいものです。
そのためにまず大切にしたいのが日々の運動量を確保すること。運動不足になると、筋肉の衰えから関節のサポートができなくなり、関節疾患や骨折などのリスクが大きくなります。また、体内環境の調節が効きにくくなり、免疫力の低下から内臓疾患などが起こる可能性も。そういった症状を防ぐために、適度な運動と筋力トレーニングが重要です。
関節疾患になると、動くことを嫌がるので散歩に行かなくなり、その結果太ってしまうという悪循環に。人間と同じく、肥満は犬にとっても大敵です。一度の心拍で体に送れる血液量には限度があり、太るとより多くの心拍数が必要になります。そのため、適正体重の犬よりも心臓に大きな負担がかかり、最終的には寿命を縮める可能性が高くなります。
愛犬が部屋の中や限られた場所を行ったり来たりする、クルクル回り始めるといった行動は、体がエネルギーを発散できていない時に起こるストレスサインの一つです。まずは、運動の基本である散歩をしっかりと行いましょう。
犬種や体の大きさ、関節疾患の有無などによって適正散歩時間は異なりますが、目安として15~60分の散歩を1日2回と考えてください。
人間と同様に、犬もストレスがたまります。頭と体の運動で発散できるように気を配ってあげましょう。
悪天候で十分に散歩ができない、散歩・運動嫌いで運動不足が心配という場合には、室内でできる運動を試してみましょう。例えばタオルの引っ張りっこ。犬と飼い主でタオルの端と端を引っ張り合う単純な遊びですが、運動の補助になります。
足腰が弱くなったシニア犬でも、散歩に出かけることは気分のリフレッシュにつながります。芝生の上を歩かせたり、低い段差のある場所におやつを置いて誘導し、上り下りさせたりする方法があります。
また、おやつを探す知育トイで遊ぶ頭の体操も効果的。QOL向上のために、愛犬に合ったストレス発散法を見つけてください。
7歳以上のシニア犬になると、関節は硬くなり筋肉も衰えます。興味を喚起する刺激も減り、運動不足の悪循環に陥ってしまうかも。高齢期になったからといって適切な運動をさせないでおくと、衰えはどんどん進行します。
体力も心配なシニア犬におすすめの運動は、水中療法(ハイドロセラピー)。衰えた筋力を取り戻すことができ、関節や骨への負担も極端に少ないトレーニングです。浮力や水圧のかかるプールの中で体を動かすことで血液の循環が良くなり、関節の可動域が拡大。シニア犬だけでなく、中年犬の生活習慣病や肥満の予防、若犬の将来発症する可能性がある遺伝性疾患の予防、また手術後のリハビリにも適しています。
水中療法を自宅で行うのは少々難易度が高いため、犬専用のフィットネスに通うなど、専門知識を持つ施設で行うのが安心です。
運動後は、犬もとても疲れます。マッサージをしてあげたり、新鮮な水を与えるなど、アフターケアをしっかりしましょう。また、相応の運動をした後は内臓も疲れています。負担を減らすために、運動後すぐは食事を与えず、120分以上経ってから食事を与えましょう。
アロマオイルは、痛みの緩和や精神面の落ち着き、虫除けなどの効果が期待できます。いつものお手入れにプラスしてみてはいかがでしょうか。
取材協力:わんわんフィットネスNAS若葉台
アドバイス
深澤 優希さん(ハイドロ・セラピスト)
スポーツクラブNAS若葉台内「わんわんフィットネス」で、セラピストとして活動。豊富な知識と経験から、犬の健康とQOL向上のためのさまざまな方法を提案している。
2017年7月現在の情報となります。