在宅勤務をしていると、仕事の合間をぬって家族の世話をしたり、
家事をこなしたりといった状況になることもあります。
作業効率が上がるテレワーク環境を考えた前編に続いて、
後編では仕事と生活が上手に共存する住宅について
大和ハウス工業のハウジングマイスター(社内認定)、藤井麻貴子がナビゲートします。
仕事に集中すべき時と、家族とのつながりを保っておくべき時間帯、オンとオフを上手に区切り、
またゆるくつながる作業空間とは一体どんなものでしょうか?
Profile
大和ハウス工業株式会社
福岡支社 住宅事業部 設計課 主任技術者
藤井 麻貴子
一級建築士、インテリアプランナー、ハウジングマイスター(社内認定)
日常生活の動作を効率良く行い、少しでも多くのお客さまにご自身の時間を持っていただくために「楽に暮らせる家」を家づくりの基本と考えている。社内コンペにおいて「テレワーク」をテーマに奨励賞を受賞した経験を持つ。
LDKの一角にミニワークスペースをつくる
集中して仕事に取り組みたい。でも家族が家のどこで何をしているのかもゆるやかに把握しておきたい…。そんな相反する二つのニーズをお持ちの方には、個室タイプの書斎ではなく、リビングやダイニングの一角にミニワークスペースをつくることをおすすめします。
生活動線の一部にあって、家族の気配を感じながら仕事に向かえるワークスペース。在宅勤務が週1日程度であれば、こうしたセミオープンの書斎スペースを選んで家族と共有するのも、限りある敷地を有効活用するコツです。具体的なアイデアをご紹介します。
リビングのテレビ裏のワークスペース
リビングの一角に書斎スペースを設けたいというご要望はとても多いです。最近ではテレビを設置した壁の裏を回遊式の収納スペースにする設計が人気ですが、ここにワークスペースを兼ねることもできます。リビングで過ごす家族の様子が分かり、キッチンと近い場所に設計すれば仕事と家事の両立にも便利です。
テレビ裏の収納スペース。利用しないときは引き戸を閉めてすっきりとした空間に。
リビングを見下ろせるワークスペース
間仕切りなしでも空間の領域分けをするには「高低差」が有効です。家族のくつろぎの場となるリビングはロースタイルの包み込まれるような空間に、ワークスペースは一段高い位置に設計することで、リビングで過ごす人とワークスペースで仕事をする人の視線が交わらないちょうど良い距離感が生まれます。
間仕切りをつくらず高低差によって領域を分ける。仕事の手を休めてロースタイルリビングを見下ろせば、くつろいでいる家族の気配を感じる。時には子どもの学習スペースにも転用可能。
透明の間仕切りを備えた個室
こちらは個室のようなセミクローズドのワークスペースですが、透明の間仕切りを設けることで隣のリビングで過ごす家族の様子が分かるようつながりを工夫しています。オンライン会議のときにはブラインドを閉めて集中空間をつくることも可能です。
オフィスにあるガラス張りのミーティングルームのようなワークスペース
寝室の一角にミニワークスペースをつくる
LDKの一角だと仕事に集中できないというときには、昼間は使わない寝室をワークスペースとして利用する方法もあります。
寝室の奥の静かな空間を有効活用
寝室からクローゼットに抜ける回遊動線上に設けたセミクローズドタイプのワークスペースは、隠れ家的な空間が確保でき、仕事に集中できます。
窓から外を眺めることができる。天井まで届く大容量の造作収納を確保
寝室のヘッドボードを作業台に
アレンジする
ベッドのヘッドボードを兼ねたカウンターをデスクとして活用する方法なら、もっと手軽にワークスペースがつくれます。間取りの都合で書斎をあきらめていた方にもおすすめの方法です。
照明やガジェット類の電源・配線計画、収納スペースの位置もあらかじめ考えておきたい
このようにいろいろな場所に小さめのワークスペースを複数確保しておけば、夫婦共働きで電話対応やオンライン会議などがバッティングした場合でも、部屋を分けてそれぞれの仕事を進めることが可能になります。
オープンスペースでも「時間軸」で区切れば
集中できる空間が生まれる
「職」と「住」の境界を「間取り」ではなく、「時間軸」で区切るのも一つのアイデアです。例えば間取り上あまり余裕がない場合、広々としたダイニングテーブルは家事をしながら仕事をするにはうってつけのワークスペースにもなります。
お客さまのライフスタイルをヒアリングするうち、家族それぞれの生活時間帯がかぶらないことが判明したご家庭には、LDKをまるごとワークスペースとして利用することも選択肢の一つとしてご提案しています。家族が出かけているときには仕事空間として独占し、食事の時間になったら壁にそなえつけた収納スペースと窓際の作業台へ仕事道具をスムーズに移動させておけば、ダイニング周りが散らかりません。
イレギュラーな生活リズムになってバッティングするときは、ダイニングテーブルと壁側のデスクに分かれて仕事や勉強の空間をシェアすることもできる。
「視線の先」を工夫して、
仕事時間もくつろぎ時間も豊かに過ごす
リビングやダイニングのような共用スペースにワークスペースを計画するときには、「視線の先」もデザインしておきたいもの。仕事中に生活感あるものが見えてしまわないように、暮ら しを連想させるようなものが視界に入らない工夫をしておくと集中力が保てます。
冷蔵庫まですっきり隠せるキッチンの半透明の収納扉。仕事中はもちろん普段の暮らしもすっきりシンプルに保ちたいもの
その逆で、くつろぎの時間に無機質なオフィス家具や事務用品が目に入ると、雑然と感じられてしまうことがあるかもしれません。仕事道具をしまう収納棚はキッチンやダイニングと同じデザインで統一しておくと、すっきり見える上に空間が広く感じられるメリットもあります。せっかくならインテリア性の高いステーショナリーで室内の一体感も追求したいですね。納得してつくりあげたワークスペースは、仕事のモチベーションも高めてくれるはずです。
まとめ
ワークスタイルやライフスタイルに応じて、一人ひとりベストなテレワークの環境は異なるものです。今回ご紹介したアイデアをぜひ参考にして、仕事と生活が上手く共存した最適なテレワークスペースを手に入れてください。