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生活を考える

音楽を通じて人を育む、
驚きの情操教育があった

音楽を通じて心豊かな人間を育てることを
目的とする驚きの教育方法があります。
それが「スズキ・メソード」です。
ヴァイオリニストの鈴木鎮一氏が1946年、
長野県松本市に音楽教室を設立したことに始まり、
いまや世界四大音楽メソッドの一つともいわれ、
46カ国で約40万人の生徒が学んでいます。
幼いうちから良質な音楽を繰り返し聴き、奏でることは、
子ども達にどのような成長をもたらすのでしょうか。
物理学者にして、鈴木鎮一氏に直接教えを受けた
情操教育の体現者でもある早野龍五さんに話を伺いました。

「音楽家ではなく、人を育てる」。
 スズキ・メソードの歴史と理念

スズキ・メソード創始者
鈴木鎮一氏

(公社)才能教育研究会

鈴木鎮一先生は、鈴木バイオリン製造株式会社の創業家に生まれ、ドイツに留学した経験もあるヴァイオリニストで、1930年代から江藤俊哉氏、豊田耕兒氏など世界的なヴァイオリニストを育てました。それらの経験を踏まえて、子ども達に楽器を持たせ、音楽を通じて人を育てる「スズキ・メソード」を始めたのです。教室の卒業生には大谷康子氏や葉加瀬太郎氏など国際的に活躍する音楽家もいますが、物理学者の僕のように別の道に進んでいる人も多くいます。僕は5歳から高校に入学するまで鈴木先生の教室に通いました。先生は生徒の演奏にも高いレベルを求められましたが、だからといって「プロを目指して頑張りなさい」とおっしゃることは決してありませんでした。

AI(人工知能)時代に向けて、子ども達が将来、充実した人生を送り、社会で活躍する人間になるには、幼少時にどんな能力を伸ばしておくべきなのか、親御さん達にとっては悩ましいところです。「1年でも早く我が子に英語を覚えさせようか、プログラミングも学ばせた方がいいだろうか」と浮き足立ち、「でも、サッカーなどのスポーツもやらせたいし…」と、あれこれ思いを巡らす人も多く見られます。そんな中で時間を割いて悠長にピアノやバイオリンを習わせても、子どもの将来の糧にはならないのではと、疑問をお持ちになるかもしれない。音楽でご飯が食べられるようになる人はほんの一握りですから。ただ、ノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマン教授は、著書『幼児教育の経済学』の中で、学校に入って習うであろうということを、幼少期に1~2年先行して学習を始めても、小学校の高学年になるとその差はほとんど見られなくなると述べています。

では、幼少期に養うべき力とは何なのか。それは学校で習うような技術や知識ではなく、「非認知能力」。つまり、忍耐力・協調性・集中力といったものです。例えば、粘り強さは生まれつきの性質のように思いがちですが、家庭での幼児教育によって伸ばせるのだとヘックマンは強調しています。振り返ると、鈴木先生は当時、全く同じことを言っていたことに僕は改めて気付きました。「音楽を教えることが私の一番の目的ではありません。私は人を育てたいのです。良い音楽を聴き、演奏することを学べば、子ども達は感受性、規律、忍耐力などを身に付けることができます」と。「非認知能力」は幼少期に伸ばすべき能力であることを何十年も前によくわかっていらっしゃったのですね。

スズキ・メソードが培ってきた独自の教育方法とは?

スズキ・メソードの基本は耳から入る「母語教育法」にあります。赤ちゃんはお父さんやお母さんの話す言葉を毎日繰り返し聞いているうちに、いつのまにか言葉を覚えて話せるようになります。こうしたプロセスは音楽教育にも生かせるとひらめいた鈴木先生が生み出した教育法で、生まれたときから良い音楽を繰り返し耳にするうちに自然と子どもに音楽的センスが身に付きます。伝統的な音楽学習では「ソルフェージュ」という楽譜を読む基礎練習から始めるのが一般的です。しかしスズキ・メソードでは、楽譜が読めない3~4歳の幼少期から遊びの感覚でお手本となる音楽を何度も聴き、耳で覚えます。すると自分が弾くようになったとき、お手本とずいぶん違うことに気が付く。一流の演奏を聴くことで自分の音楽表現との差がわかるようになるのですね。

スズキ・メソードの教本は、1巻目から楽しい曲「キラキラ星」で始まります。そして進むうちに短くて簡単だけれども、バッハなど古典の名曲が並ぶようになります。練習のためだけの音階を並べた教則本ではなく、1曲目から音楽を楽しめて、みんなで弾けるようなスタイルになっているのが特徴です。ただ、10分の曲をちゃんと弾き切るにはかなりの集中力と何度も繰り返す忍耐力が必要です。毎日練習を続けるのは幼い子どもにとっては大変で、それだけに少しずつ難度を上げて上達し、弾けたときは本当にうれしいものです。こうした喜びの体験はもちろん、「自分が弾けるようになったのは、時間をかけて何度も練習をしたから」という自覚を本人が持つことを、スズキ・メソードでは大事にしています。音楽に限らず、学校の勉強や将来、社会に出ても、集中して時間をかけないと物事は身に付かない。そのことが経験則としてわかるようになり、それによって目指すレベルに到達できた経験は子ども達にとって大きな宝物になるのです。

「子どもは家庭で育つ」。
スズキ・メソードが考える家庭のあり方

音楽と一口にいっても、現代では多彩なジャンルや個々の楽しみ方があり、みんなが同じ音楽を聴くような機会は減りました。そうした中で、クラシックは時代や世代を超え、国境を越えてつながる音楽で、普遍的な価値を持っています。両親も祖父母も、さらにもっと前の世代もどこかで聴いたことがある音楽といえばクラシックでしょう。子どもが将来、留学や仕事で外国に滞在したとき、その国の人も知っている音楽を一緒に弾ける機会があれば、言葉は通じなくても広く深くコミュニケーションを取ることができます。

一方で、例えば平成の初めに年間約15万台も売れていたグランドピアノやアップライトピアノは、今では年間約1万5千台しか売れていません。これにはピアノを置ける場所がなかったり、音漏れの問題だったりと、今の住宅事情も大きく関係しています。特に騒音に対する社会的な許容値は昔に比べて格段に厳しくなりましたから、真剣に楽器の練習をするためには、近隣の迷惑にならないように音に対する配慮が必要になりました。ヘッドホンの使える電子ピアノやサイレントバイオリンを選ぶという手もありますが、最初はやはりアコースティックな楽器で習うべきでしょう。バイオリンの場合は、いかにして楽器の胴体と人間の体を共鳴させて弾くかを学ぶ必要もあります。

そして、スズキ・メソードは昔から「親子で学ぶ」ことを基本とし、それは今も変わりません。週1回、親も子どもと一緒にレッスンに通い、残りの6日は家庭で練習を繰り返します。以前はお母さんが子どもの練習を毎日見てあげるやり方が一般的でした。ただ、現在は共働きの家庭が多くなり、それがだんだん難しくなっています。こうした状況の中で家庭での教育をどう実現していくかは、それぞれの家庭でも工夫をしなければなりませんが、我々もさらに良い方法を考え、伝えなければなりません。それがスズキ・メソードを普及推進している私達「才能教育研究会」のこれからの研究課題です。

快適防音室&静音室「音の自由区」で、
集中して演奏を学ぶ環境づくり

「幼少期に納得のいく演奏ができるまで、繰り返し練習し、取得した経験こそが、将来の大事な宝になる」と、早野先生は話してくれました。それでは、それを実現できる環境づくりに目を向けてみましょう。楽器の練習を家で行う場合、一番の課題はやはり「音」の問題。そこで注目したいのが、ダイワハウスが提案する快適防音室&静音室「音の自由区」です。これまで“狭い・低い・暗い”というイメージのあった防音室とは違い、建物と一体設計にすることで、広い部屋と高い天井、明るい窓といった空間を実現。グランドピアノを置ける十分な広さはもちろん、吹き抜けや大開口、さらには、LDK全体の防音室化といったオーダーにも対応します。ゆとりに満ちた部屋の角には、吸音材「コーナーチューン」が設置可能。用途に合わせて低音から高音までバランスを整えることで、響きにほどよい余韻と深みが生まれ、心地よく演奏を楽しむことができます。

さらには、防音の弱点になりやすい窓やドア、換気扇なども防音仕様。部屋をトータルに防音することで、住居内の他の部屋や近隣への音漏れ防止はもちろん、車の騒音など屋外からの音も気になりません。また、リビングの隣に防音室を設ける場合などには、防音ドアの代わりに、独自の防音ガラス引き戸「静音スクリーン」を採用すれば、より開放的で明るい防音室を演出できます。隣室とのつながりが生まれることで、演奏をする子どもをリビングから見守れますし、子どもも閉塞感を感じることなく、演奏に集中できます。このようなゆとりある空間で、夜でも気にすることなく練習できる環境があれば、子ども達の「集中する力、諦めない力」はもちろん、音楽を「楽しむ心」も育んでいけるのではないでしょうか。

PROFILE

早野 龍五(はやのりゅうご)さん

公益社団法人才能教育研究会会長。日本の物理学者、原子物理学者。専門はエキゾチック原子研究。東京大学名誉教授。2017年4月より株式会社ほぼ日のサイエンスフェローとしても活躍中。

※掲載の情報は2019年7月現在のものです。
※2023年4月更新

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