ふわふわの毛並みに癒やされたり、可愛らしい仕草に和んだり。
猫や犬との暮らしは私たちにたくさんの幸せをもたらしてくれます。
だからこそ、そんな時間が長く続くよう、安全や健康には十分配慮してあげたいものですね。
今回はアイペット損害保険株式会社に所属する獣医師の長尾麻矢さんに、
猫や犬の病気・ケガの実態や、飼育環境に関して気をつけるべきポイントを伺いました。
アドバイスいただいた方
ダイワハウスskye~スカイエ~幕張展示場にて撮影
猫や犬の傷病が減らないワケ
猫や犬を飼うご家庭は、昔に比べると飛躍的に増えてきました。その数は15歳未満の子どもの数1571万人(※1)を大きく上回る1972万頭(※2)と報告されています。
- ※1総務省統計局「人口推計」(2017年4月1日現在)
- ※2一般社団法人ペットフード協会「平成28年(2016年)全国犬猫飼育実態調査」
飼育環境も大きく変わりました。現代の猫や犬は室内飼いがほとんどです。部屋の中で長い時間一緒に暮らすことで、より人とペットの関係は近くなり、深い絆で結ばれるようになっています。
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さらに、寿命も大幅に延びています。以前は平均寿命7~8年程度と言われていた時もありますが、猫種や犬種の違いはあれ、今は10歳以上となっています。15歳を超えるご長寿猫犬も珍しくありません。これには獣医療の発達や栄養状況の改善などが奏効しているのでしょう。
ところで、室内飼いによって交通事故、犬猫同士のケンカによるケガなどのリスクは減ったはずなのに、病気やケガで動物病院に連れてこられる猫や犬はむしろ増加しています。これは、人間と同じように高齢化に伴う病気が増えていることや、人間が一緒に過ごす時間が増えてペットの症状が発見されやすくなったことが影響していると考えられます。
猫と犬で若干異なりますが、動物病院の受診につながる傷病のうち、手術に関するご請求件数のランキングは図の通りです。
手術件数ランキング
※2017年1月~12月にアイペット損保へ直接ご請求いただいた「うちの子」「うちの子ライト」のデータを元に作成しています。
「骨折」について知る
前述のランキングの中で、飼育環境を整備し、飼い主さんが気をつければほとんど防げる傷病は2つあります。「骨折」と「異物誤飲」です。今回は、「骨折」の実態や防ぎ方、住まいづくりにおけるポイントについてご紹介します。
骨折が起こりやすい時期
子猫や子犬を家に迎えてから2年くらいの間に、骨折はよく起こります。子猫や子犬の骨格はまだでき上がっていないうえ、性格もやんちゃなので、成猫や成犬に比べて骨折をしやすい時期なのです。小型犬の骨は大変細く、ボールペンくらいの太さしかありません。
骨折が起こると完全に治療が終わるまで走り回れず、ケージの中で何カ月も過ごす場合もあります。子猫や子犬の性格を形成する大切な時期にケージの中で生活し、人と十分に触れ合えずに過ごすことで、性格に影響してしまうこともあります。
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骨折が起こりやすい場所
犬の場合は、「段差」と「滑り」が危険の要因。リビングのソファ、階段、玄関など、わずか30センチ程度の段差でも骨折は起こります。高いところから低いところに飛び降りる時に前肢に負担がかかるので、前肢の骨折が多いのです。
飼い主さんが抱き方を知らず、腕の中で暴れてしまうことにより、飛び降りて骨折することも。また、滑りやすいフローリングで転倒して骨折することもよく見られます。
猫の場合は、「飛び出し」が危険の要因。大きな音などに驚いて外に飛び出して交通事故に遭った、人の後ろを歩いていてドアに挟まれた、人の足に踏まれてしまった、というケースが見られます。
骨折を防ぐための住まいの工夫
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子犬の時から、ソファの下で落ち着けるようなトレーニングをするか、高さの低いものを選びましょう。どうしても登ってしまう場合は階段やスロープを作ってあげましょう。床材には犬が滑りにくいフローリングや、カーペットを選ぶと安心です。
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猫は驚いて飛び出さないように飛び出し防止の扉を付けたり、ペットドアなどを付けて必要な時だけ出入りできるようにしましょう。また、猫はキャットウォークなど高いところが好きな生き物ですが、高齢になると踏み外して落ちたり、ジャンプから着地の衝撃が膝の負担になることも。入って欲しくない場所をガードしたり、年齢を考慮した工夫も必要です。
さいごに
骨折をして痛がるペットの姿は、飼い主さんにとっても大きなストレスになります。「あんなに苦しむ姿は二度と見たくない」と非常に後悔し、胸を痛める方がとても多いのです。これから猫や犬を飼う方、現在飼っている方は、そんな悲劇が起こらないように住まいの環境を整え、ペットが幸せな一生を過ごせるように配慮してあげてくださいね。
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