花や緑は、庭やインテリアを飾るだけの存在だと思っていませんか。
実は、私たちにさまざまな恩恵をもたらしてくれるのです。
特に子育て世代のご家庭では、植物に積極的に関わるのがお勧め。
今回は子どもの成長と植物について、
グリーンを使った空間デザインブランドである
parkERs[パーカーズ]さんに教えていただきました。
パーカーズは「青山フラワーマーケット」を展開する株式会社パーク・コーポレーションの空間デザインブランドで、植物とともに過ごす空間づくりを提案しています。
田村さんは美術大学を卒業後、アーティストの元でフラワーデザイン(切花、生け込み、プリザーブドフラワー)を学び、その後、パーカーズのメンテンンス業を経てプランツコーディネーターに着任。植物を育成するメンテナンスとディスプレイデザイン、両方の立場から緑化の提案を行い、想いやストーリーを感じられる花と緑の空間造りを目指しています。
【1】「食育」から「植育」へ
「食育」という言葉は、ここ10年ほどでかなり一般的になってきました。食育とは、さまざまな経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を身につけ、健全な食生活を実践できる人間を育てること。2005年には食育基本法という法律もできています。
ただ、ここでは植物を育てる過程はそれほど重視されていません。私たちパーカーズは、「食育」から一歩進んだ「植育」(=植物を植え、育て、植物について知ること)がこれからの時代に必要ではないかと考えています。子どもたちは日々、身の回りのモノやコトに刺激を受けて成長します。植育によって子どもたちは、より多くの経験を積み、刺激を受け、さまざまな面で大きく成長することができます。
植物と付き合う過程で、子どもの気持ちや行動にはさまざまな変化が現れてくるでしょう。
1. 植物を植える
どんな花を咲かせたいか、いつ実を収穫したいかなど、目標を立てる。期待を抱く。植物の命に責任感を持つ。
2. 植物を育てる
愛情を持って植物を育てることで優しさを培う。収穫の喜びを得る。自然に親しみ、感性を養う。
3. 植物を知る
植物の名前や形、色、味を知る。地球上における植物の役割と偉大さを知る。環境問題を知る。
パーカーズの主催する植物のワークショップには、毎回多くの親子が参加してくださいます。自分の幼少期のように、子どもにも土に親しんでほしいけれど、なかなかその機会がないという親御さんがたくさんいらっしゃるようです。花の苗を植えたり、シロツメクサで冠をつくったりする中で、お子さんはもちろん、親御さんもとてもいい笑顔で夢中になってくださいます。
私自身も息子と一緒に、今年の夏は家庭菜園でミニトマト、ラディッシュ、バジル、パクチーなどを育てています。毎日どれくらい伸びたか確認したり、水やりをしたり、子どもなりに責任感をもって取り組んでいます。プランター育ちの野菜や果物は、スーパーで買うものより味が劣ることが多いのですが、それでも自分で世話をした野菜や果物を収穫して食べる経験は、子どもにとって何にも代えがたいようです。
【2】植育を楽しむヒント
子どもに花や緑への興味を持たせるには、ちょっとしたきっかけがあるといいですね。買ってきた種や苗を鉢に植えるだけではないアイデアをご紹介します。
捨てるはずの種から出るのはどんな芽?
アボカド、カボチャ、ビワ、柿、ブドウなど、食べ終わった果物や野菜の種を捨てずに、植えてみましょう。種はよく洗って、一度乾かしてから土に植えます。もし芽が出たら大成功。再び実が成るまで育てるのは難しいですが、普段食べている果物や野菜の芽がどんな形をしているのか観察して楽しむことができます。
根っこのニョロニョロを観察
ジャガイモなどの根菜の切れ端をガラスの器に入れて観察してみましょう。根っこが出てきてニョロニョロと張り巡っていくのを見ることができます。水が腐らないよう、時々入れ替えるのをお忘れなく。
何も植えないプランターのマジック
プランターに土だけを入れて庭やバルコニーに置いておきましょう。風で飛ばされてきた草の種が芽を出し、根付き、花を咲かせるかもしれません。自分の住んでいる地域にどんな植物が自生しているのかを知ることができますよ。
おもしろ植物を触ってみよう
ざらざら、つるつる、ふわふわ。植物の中には、触感がおもしろいものがたくさんあります。好奇心をかき立てられ、思わず触れたくなる植物を、子どもの手の届く位置に置いてあげましょう。
トキワシノブ
鉢からはみ出して伸びてくる根っこが、まるで猫の脚のような手触り。シダの仲間です。
エバーフレッシュ
昼間は葉っぱを広げ、夜になると閉じる休眠運動がおもしろい、常緑の植物です。
アロマティカス
丸い葉には細かい産毛が生え、耳たぶのような手触り。ミントのような香りも楽しめる多肉植物です。
【3】子育ての住まいに植物の効用を
植物は室内環境や人間そのものに、さまざまな効果をもたらすと言われています。子育て世代のご家族には、ぜひ植物のチカラを活用していただければと思います。
風邪につながる空気の乾燥を防ぐ
特に冬場、室内の空気が乾燥すると風邪を引きやすくなります。室内に植物を置くと、根から吸収した水を葉の表面から水蒸気として放出し、空気の乾燥を和らげてくれます。この水蒸気には雑菌が入っておらず、とてもクリーンなのが特長。植物は高性能な「天然の加湿器」とも言えます。
空気を浄化する
小さい子どものいる家庭では、空気環境にもしっかり配慮したいもの。そこで植物を室内に取り入れると、二酸化炭素を吸収し、酸素をはき出してくれます。サンスベリアやスパティフィラム、ポトスなど空気清浄効果の高い植物には、ホルムアルデヒドなどの有害物質を吸収して分解してくれる働きもあります。
サンスベリア
スパティフィラム
ポトス
勉強で疲れた目を癒やす
ずっと机に向かっていると、目が疲れ、視力が低下し、ドライアイになりがち。そんな時に植物を眺めるだけで、脳の一部(大脳皮質)が活発化して緊張がゆるみ、疲れが和らぐと言われています。
まとめ
このように、植物の力は子どもの成長にもさまざまな面で関わってきます。新しく家を建てるなら、間取りを計画する際に、植物を置く場所を検討してみてください。どこでどんな風に植物と接したいかをあらかじめ考えることで、眺められるだけではなく、さまざまな効果を得ることができ、人にも植物にとっても快適な環境がつくれると思います。