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窓は大きいほどいいの?美しく機能的な窓を作るために
知っておきたい4つのこと

明るく開放的な住まいは誰もが憧れるもの。
そのために「窓はできるだけ大きくしたい」「南側に窓をとってたくさん光を取り入れたい」
といった要望を設計士に伝える方もいらっしゃるようです。

しかし、“窓とはこうあるべき”といった定説は必ずしもあてはまらない…と、
ダイワハウスのトップデザイナー集団「ZIZAI DESIGN OFFICE」に所属する井恵三は提言します。

今回は美しく機能的な窓をプランニングする上で知っておきたいポイントを解説します。

Profile

大和ハウス工業株式会社
ZIZAI DESIGN OFFICE 室長

櫻井 恵三

プランニングの際、頑なに守っていることが2つあります。1つは曖昧なゾーニングはせず、最初からラインを通して配置していくこと。もう1つは、そこに気持ちを逃がす“ゆらぎ”を加えることです。ノイズをそぎ落とした中に、あえてバランスを崩した部分をさりげなく設けることで、真に安らぎのある空間をご提案します。

はじめに「窓」から家づくりは始まる

家づくりにおいて、窓のプランニングはどのタイミングで行うと思いますか?間取りが決まった後に「この部屋のこの面にはどんな窓をつけていきましょうか?」と決めていくのではありません。我々設計士は、間取りのご提案をするずっと前から「この方向から光や風を取り入れるために、これくらいの大きさの窓が必要だな」ということを考えて、設計に落とし込んでいます。窓の位置によって間取りのゾーニングも決まるので、「窓から設計が始まる」と言っても過言ではないほど、住宅の質を決める重要な要素です。

窓は光や風を取り込むだけでなく、窓越しに外の景色を眺めたり、外観のアクセントになったりと、さまざまな役割を持っています。ですので、住まい全体、あるいは家の外の環境とも調和をとりながら計画する必要があります。

では、窓のプランニングにおいて知っておきたい4つのポイントを解説していきましょう。

1)窓は大きければ大きいほど快適な住まいになる?

お客さまからよく「窓をできるだけ大きくとって明るい家にしたい」という声をいただきますが、実は窓は大きければ大きいほどいいというわけではありません。

びわ湖大津プリンスホテル住宅博

この写真のように壁一面が窓だったらどうなるでしょうか?こちらは展示場なので開口部を大きくとっていますが、実際の住宅地だと外からの視線が気になりますし、大きく開いた窓の外に隣家の勝手口や室外機など余計な物が見えてしまうこともあります。せっかく大きな窓を作ったのに、カーテンを閉めきって生活したらもったいないですよね。

それに、大きく開き過ぎた窓は心理的に落ち着かないという側面も持っています。開いているところ(窓)と、閉じているところ(壁)のメリハリをつけことが心地良い住まいをつくる大切なポイント。開放感は感じられながらも、プライバシーに配慮することが窓プランニングでは重要です。

2)南側の窓にこだわらなくてもいい

日本では日照時間の長い南向きが好まれるので、南にリビングを配置し、その窓から光を取り入れるケースは多いでしょう。しかし、周囲の状況によっては必ずしも南側がベストとは限りません。西や東に窓をとった方が快適な明るさになることもあります。

「西向きの窓だと夏場の西日がきついのでは?」という懸念も、今のサッシは日射遮蔽性能がかなり高いため、暑さを心配する必要はないでしょう。太陽の高度が低いという点では、西向きも東向きも同じで眩しさはありますが、工夫次第で効果的に採光できます。

ある事例をご紹介しましょう。この土地は西に道路、南に隣家が接近しており、東が開けていました。南側に庭とリビングを配置するのが一般的ですが、隣家によって日差しが遮られる部分があったので、東に大きな窓を作り、そこから光を取り込もうと計画しました。

南ではなく東メインで光を取り入れた事例

ただ、東は午前中しか日が入らないので、午後も日差しを取り込めるように東南に吹き抜けを作り、上からも光を取り込む設計にしました。南側の隣家との境には壁を立てて、南側は思い切ってアプローチにしました。周囲の状況次第では、南開口部がベストではないという一例です。

「どこから光を入れるのがその土地にとってベストなのか」「窓からどんな景色が見えるか」は、現地調査をしてこそ分かることです。隣家の状況やその土地に吹く風、街の雰囲気などを設計士が現地調査で感じることは、いい住まいをつくるうえで欠かせない作業です。

3)大きな窓の耐震性は大丈夫?冬は寒くないの?

冒頭で触れた通り、窓は大きければいいというわけではありませんが、必要に応じて大きな窓をとったとき、お客さまからよく聞かれるのが「大きな窓にすると寒くないですか?」というご質問です。一般的に窓は壁より約10倍熱が逃げやすいと言われますが、xevo Σの窓で採用しているガラス材やサッシは熱を逃がしにくい構造です。外の気温の影響を受けにくく、結露も起きにくい高性能なガラス材やサッシを選べば、過度な心配はされなくて大丈夫です。

また、耐震性の方も、窓を大きくするご希望があれば、あらかじめ構造的な検討をしっかり行うことができます。

準防火地域での窓選び

都市部に家を建てる方に知っておいていただきたいのが、「準防火地域」における窓回りの制約です。道路中心線あるいは隣地との境界線から1階は3m以内、2階は5m以内の開口部には、防火の基準を満たしたサッシやガラス窓を使わなくてはなりません。防火の基準を満たすサッシやガラスは限られるため、窓回りのデザインの選択肢が狭まるのが難点です。網入りのガラスかコストが高い耐熱強化ガラス、あるいは通常の窓にシャッターをつけるという選択肢になります。

その他にも、台風の多い地域ならシャッターが必要ですし、山間部は雪が積もってサッシ回りが凍るリスクも考える必要があります。窓回りの断熱性能が向上しているとはいえ、寒冷地で開口部を広げ過ぎれば住宅の断熱性能は低くなるでしょう。土地独自の気候風土を考慮して、窓のとり方や素材を検討しましょう。

4)外から見た窓、室内から見た窓のデザインを整える

住まいにとって、窓の機能性だけでなく、デザインも重要な要素です。例えば家を外から眺めたとき、窓があちこちに点在している家よりも、ある程度まとまっていて開口部と壁のメリハリがある家の方が洗練された印象になります。

窓の形状で言えば、一般的に多く採用されている引き違いの窓は多用し過ぎると野暮ったくなりがちです。「引き違いの窓はあまり使いたくない」とおっしゃるお客さまも最近は増えていますね。

最近人気があるのはFIX窓です。以前は、窓=風を入れるもの、という考えが根強く、開けられない窓にマイナスの印象を持つ方が多かったのですが、最近は採用するお客さまが増えています。

私が設計をした「WoodResidence MARE 駒沢展示場」では、リビングのメインの窓に大きなFIX窓を採用しています。窓を額縁に見立て、窓の外の庭の景色を絵画のように室内から眺める演出です。

また、最近はロースタイルのリビングが人気ですが、採用する場合はそこに人が出入りする掃き出し窓が本当に必要なのか?という検討はした方がいいでしょう。ロースタイルリビングには落ち着きを生み出すFIX窓を採用し、出入りするための引き違い窓は別の場所に作るという選択肢もあると思います。

▲登美ヶ丘展示場

FIX窓の注意点としては、外側に足場がないと窓の掃除がほぼ不可能ということ。あらかじめ、汚れをつきにくくするコーティング材を施工しておくといいですね。

細かな部分では、室内から見たときの窓枠も大切な要素です。通常、窓を囲むように四方に窓枠がありますが、枠を下の部分のみにして、左右と上部の壁紙を巻き込み仕上げにすると洗練された窓回りになります。小さなことですが、こうしたディテールのこだわりの積み重ねが、洗練された住まいをつくっていくものです。

まとめ

「外を眺めてくつろぎたい」「爽やかな風を取り込みたい」「光を取り込みたい」など、目的に応じて窓のプランニングは変わってきます。

窓の種類 特徴
引き違い窓 出入り可能(掃き出し窓の場合)
FIX窓 庭の景色を切り取って眺めるのに適している
縦すべり窓 風をキャッチして室内に取り込みやすい
天窓 光を取り込みやすい

窓のプランを考えるときには、家でどんな過ごし方をしたいのか、暮らしの中で何を大切にされているのかを、設計士に聞かせていただければ、目的にあった最適な窓をご提案いたします。

住まいにおいて窓は、採光や通風、眺望といった「外部とのつながり」を生み出し、移ろう日本の四季を感じられる場所でもあります。家にいながら、外部をどれだけ取り込めるかは、設計士が常に大切にしている部分です。これから家を建てる方は、ぜひ暮らしのご希望をお聞かせいただき、暮らしにあった窓を一緒にプランニングしていきましょう。

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