人生の約1/3もの時間が睡眠に費やされるといわれます。
誰しもが毎日寝ているにもかかわらず、その大切さを忘れがちかもしれません。
睡眠不足が続くと心身の健康に大きな影響を及ぼす可能性があり、
季節の変化に伴う暑さや寒さ、
仕事や子育てのストレスなどの要因で睡眠の質が低下することがあります。
今回は睡眠を専門とする医師の坪田聡先生に、
睡眠の質を向上させるための、
寝室の環境や住まいづくりのポイントについてお伺いしました。
理想の睡眠時間、睡眠の質とは
よく、理想の睡眠時間は7~8時間といわれますが、実際には非常に個性的で、人それぞれ最適な長さは異なります。一般的には年齢を重ねると短くなる傾向にあり、60代の平均睡眠時間は約6時間といわれています。
つい夜更かししたときなど、7~8時間の睡眠が取れない日もあるでしょう。しかし、質のよい睡眠が取れていれば、無理に時間を調整しようと考える必要はありません。以下のような状態であれば問題ないと考えられます。
- 布団に入った後すぐに寝つける
- 夜中に目覚めることが少ない(1回~2回)
- 朝自然に目覚め、熟睡したと感じられる
- 日中は、昼食後の15時くらいまでの時間を除いて、眠気を感じない
- 平日と休日の睡眠時間に大きな差がない
長期的な睡眠不足が身体に与える影響
睡眠不足が慢性的に続くと糖尿病、脂質異常症などになりやすいという研究結果があります。これは、睡眠不足が続くと身体が危機的な状況だと勝手に反応して、エネルギーをため込みやすくなるためです。また、副腎皮質刺激ホルモンやコルチゾールといったストレスホルモンや、成長ホルモンの分泌にも影響を与えます。
ストレスホルモンは睡眠不足で分泌が増え、長期的にその状態が継続すると、うつ病や認知症などのリスクにつながると考えられています。成長ホルモンは睡眠不足で分泌が減り、子どもの成長のほか、細胞の新陳代謝などに関連するため、美容にも影響があります。このように睡眠は健康を維持するための大切な役割を果たしているのです。
よい睡眠のための、環境の整え方
在宅勤務など家で過ごす時間が長い場合
家で過ごす時間が長くなったことで、寝つきが悪く、睡眠が浅いと感じる方は、家の中で軽い運動をするとよいでしょう。また、なるべく太陽の光を浴びることをおすすめします。
食後20分程度の昼寝は午後のパフォーマンス向上に役立つのですが、熟睡するのはよくありません。ベッドやソファはつい横にならないような配置にしておき、ワークスペースに背もたれのあるチェアを用意するなど、昼寝が短時間に限定される環境を整えるとよいでしょう。
夫妻、子どもと一緒の寝室にもメリットがある
安眠するためには、家族それぞれ個室があった方が静かに眠れるイメージがありますが、実は一緒に眠ることによって安心する、落ち着くといったメリットもあります。これは、コルチゾールなどのストレスホルモンの分泌を抑え、不安感を和らげるオキシトシンの分泌が増えるためと考えられています。
布団や枕は、家族が使いやすいものを選ぶ必要があります。同じベッドで寝る場合は、寝返りが隣で寝ている家族に伝わりにくい高機能なマットレスを選びましょう。また、ベッドを一人ずつ分けて違うマットレスにすれば、好みによって硬さを選べて、将来的に異なる部屋でそれぞれ寝ることになっても使えます。
快適な睡眠・目覚めを実現するための住まい方の工夫
光:カーテンで明るさを調整し、自然光で起きる
目覚まし時計やアラームなどの音よりも、光によって目覚めた方が、スムーズな覚醒を促せます。有史以前より、太陽とともに生活してきた人間本来の性質に合わせた目覚め方です。
できれば寝室は窓が南側か東側にある部屋にして、起床時間より少し前に光が差し込むようにカーテンの隙間を開けておいたり、自動で開くカーテンを使用したりするとよいでしょう。間取り上、自然光を取り入れるのが難しい場合は、決まった時間から徐々に明るくなる照明を置くのもおすすめです。天井の照明は柔らかな電球色のもの、明るすぎないものを選びましょう。
色:眠りやすい、気持ちを落ち着かせる色をインテリアに
色が精神に与える影響は意外と大きいものです。ベージュやブラウンなど落ち着いたトーンの色や、鎮静効果がある青色、疲れを癒やす緑色などを壁紙やカーテン、寝具、家具などに取り入れるのがおすすめです。少し意外ですが、黄色もメラトニンというホルモンの分泌を促し、深い睡眠をもたらしてくれるようです。
音:静かな空間をつくる
睡眠中は極力、静かな環境が必要になります。目安として音の大きさが40dBを超えると眠りに悪い影響を与えるといわれるのですが、これは図書館くらいの静けさです。家電製品は音が小さいものを選び、寝ている間は寝室内のエアコンやヒーターを静音モードに抑えておくとよいでしょう。寝る前には、リラックスできる音楽を流すのもおすすめです。音楽によって家電などの音が気にならなくなり、より眠りやすくなります。
温度:季節によって最適な気温・湿度を目指す
寝る前には寝室の室温を調整しましょう。冬は15〜20度、夏は26~28度くらいが目安となります。寝具の中の温度は32~34度、湿度45~55%が適切です。スムーズに睡眠に入るためには体温が少し下がる必要があるため、冬に電気毛布を使う場合はしばらくしたら電源が切れるように設定します。また、室温は窓からの外気の影響を受けるので、布団やベッドは壁から20〜30cmほど離しておきましょう。
住まいを年中快適な室温に保つことで、睡眠の質は高まる
お伝えしてきたように、良質な睡眠のためには快適に過ごせる寝室の環境を整えることが大切です。中でも特に重要なのが温度と湿度を適切に保つこと。エアコンを稼働しても、住まい全体の気密性・断熱性が低いと効きが悪くなり、快適さを損なうだけでなく電気代もかかってしまいます。
夏は冷房の効果を十分に発揮できないと、温度のムラができて寝苦しさから結果的に疲れがたまることがあります。冬はトイレに行こうと布団から出て身体が冷え、目が覚めて寝つけなくなることもあります。一年を通して快適な室温を保てる住まいであることが、睡眠の質を高めるカギになると言えるでしょう。
外からの熱気や冷気をさえぎる高性能な壁構造や窓が採用された住まいに、全館空調が組み合わされていれば、家中が年中快適な状態になるので理想的かもしれません。熟睡しやすいというメリットに加え、部屋ごとの温度変化によって引き起こされるヒートショックも防止し、健康的に暮らせる住まいにできます。
ダイワハウスには、全国の気候に適した仕様の「外張り断熱通気外壁」や、空調の範囲を選択可能な「全館空調・エアヒーリング」「リビングフロア空調・エアサルーン」などが用意され、さらに遮音性能にも配慮していており、安眠のための住まいづくりができます。2階以上の床に「マルチプレックス遮音床」を採用すれば、下へ響く足音などを防ぎ、家族で生活リズムが異なる場合も安心です。
また、独自の空気清浄装置「空気浄化ef」は、ハウスダストや花粉、カビ、ダニなどを除去し、花粉症やアレルギーが気になる方の眠りをサポートします。さらに、ウイルスに対する抑制効果が99%以上※の「吸着性光触媒コーティング」を使用することで、より健やかに過ごせる住まいにできます。
※試験機関:奈良県立医科大学、試験方法:JIS R 1756準拠、試験結果:減少率99.806%の抗ウイルス効果
まとめ
冒頭で人生の約1/3の時間を睡眠が占めるとお伝えしました。テレワークでおうち時間が増えた方も多いかもしれませんが、一日で最も長い時間を過ごすのは寝室ではないでしょうか。睡眠は心や身体のコンディションを整えるための大切な時間です。しかし、寝ている間は意識がないため、その重要性をつい忘れがちです。健康的な生活の維持に欠かせない大切な場所として寝室を見直し、住まいづくりについて考える機会を、ぜひ一度持ってみてはいかがでしょう。
Profile
医師 / 睡眠 ガイド
坪田 聡さん
日本医師会、日本睡眠学会。ビジネス・コーチと医師という二つの仕事を活かし、睡眠専門医として行動計画と医学・生理学の両面から睡眠の質の向上に役立つ情報を発信している。『女性ホルモンが整う オトナ女子の睡眠ノート』(総合法令出版/2020年)、『快眠ごはん 眠れるカラダを食事でつくる』(海竜社/2020年)など著書多数。