大地震への不安もさることながら、昨今は台風や集中豪雨などの自然災害にも見舞われて、
防災対策が欠かせない日本列島。2011年の東日本大震災以降、
私たちの防災意識は格段に高まりましたが、実際に被災したら何が一番困るのか、
どんな備蓄や対策が役立つのか、きちんとイメージできないこともまだ多いでしょう。
そこで災害危機管理アドバイザーの和田隆昌さんに、食料や日用品の効率的な備蓄のしかたや
停電時の対策など、アドバイスをいただきました。
食料編日常生活で効率的に備蓄ができる「ローリングストック」
大災害に見舞われても、できることなら住み慣れた家で安全に避難生活を続けたいもの。実際、誰もが避難所に入れるわけではなく、家が全壊してしまった方から優先となるため、家での備蓄は必須なのです。
そうした場合、3日間~1週間の食料の備蓄が必要といわれています。ただし、防災用の非常食は「気づいたら消費期限が大幅に切れていて全て廃棄した」といったことになりやすいのが現実。こうした事態を回避するためにおすすめしたいのが「ローリングストック」です。
「ローリングストック」とは普段から加工食品や飲料を少し多めに買い揃えておいて、消費期限の迫ったものから使い、一定量減った段階で買い足していく方法です。残り1週間分になった時を補充の目安にするといいでしょう。日常生活で消費しながら備蓄することで、常に一定量の備蓄品や飲料水が家に確保できますし、備蓄用食料のバリエーションや選択肢が増えるのもメリットです。なかでもいちばん重要になる備蓄は水です。1人が使う水の量は平常時で3リットル/1日。自宅で避難生活を送ることを想定し、家族の人数×4日分ぐらいの水を常に備蓄しておきましょう。
ローリングストックとは?
「ローリングストック」を実践すれば、消費期限が長い特別な防災用食品を必ずしも買い揃える必要はありませんが、在宅避難なら普段食べてもおいしい食品を選びたいもの。少し前までは防災用食品といえばまずくても仕方がないという認識でしたが、今は味も品質も素晴らしく向上しており、アルファ米、缶詰、レトルト食品など選択肢は豊富です。
おすすめの防災用食品
「アルファ米シリーズ」
尾西食品
お湯でも水でも戻せてバリエーションも豊富。おかずがいらない五目ごはんやチキンライスなどが便利です。
「缶deボローニャ(パン)」
ボローニャ
災害発生時は調理の必要のない食品が重宝します。乾パンのような食品は飲料がないと食べにくいものですが、このパンはしっとりとして甘みがあり、喉が渇くことなくおいしく食べられます。
「野菜の保存食セット」
カゴメ
流通が停止すると野菜や果物などが手に入らなくなり、ビタミン不足で抵抗力が低下して、病気や不調の原因になりがちです。ビタミン不足を補うために数種類用意しておくといいでしょう。
「水もどし餅(きなこ餅)」
クロレラ科学研究所
非常時のストレスの解消に甘味も重要です。水さえあれば瞬時に柔らかなお餅になるこの食品は腹持ちも良く、ミネラルも摂取できます。
日用品・衣類編家族ごとに異なる備蓄品の揃え方
災害時にないと困るのは食料や飲料だけではありません。いざという時のために必要な日用品の備えもかかせません。ただし、非常用持ち出し袋と自宅での備蓄品を混同しないように気を付けること。避難所生活で必要になるモノと、自宅で避難生活を送るために必要になるモノは異なるということを意識してください。
たとえば、非常用持ち出し袋に重い2リットルボトルの飲料水や大量の荷物を入れても、持ち運ぶのが大変で逆に避難の妨げになりかねません。非常用持ち出し袋は玄関付近の目に付くところに置き、背負って走れる程度の重量(5kg以下)に抑えましょう。また健康を維持するために最低限必要なモノだけを入れるのもポイント。必需品は500ミリリットルの水ボトル2本、持病の薬、お薬手帳、明るくて騒がしい避難所でも眠れるよう、アイマスク、耳栓も入れておきます。お風呂に入れないのでウェットティッシュもあると役立ちます。
一方、自宅での避難生活に備えて倉庫や押し入れなどに備蓄しておきたいのは、医薬品、生理用品、断水時に使う1週間分の非常用トイレ袋など。LED懐中電灯や予備の電池も用意しましょう。電波が届かなくなりスマートフォンは意味がないと思われるかもしれませんが、過去の大災害の際も電波の復旧は非常に早いです。情報取得のためにも、携帯電話の充電器は大切です。
まとめて揃えておきたい、あると便利な備蓄品
飲料水・生活用水 | 1人1日3リットルが目安。飲用のみで最低3~4日分を用意 ※マンションは1週間分推奨 |
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非常食 |
家族が3日間困らない程度 保存期間が長く、火を通さなくてよい食品。日用品をストックして古いものから消費
※マンションは1週間分推奨 |
医薬品・生理用品・非常用トイレ・オムツ等 |
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緊急時の避難・救助用 |
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衣類 |
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停電対策 |
※保安灯「停電時に自動点灯するもの」を寝室のコンセントに設置 |
避難所への持ち込み用 |
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役に立つ日用品 |
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長期避難用 |
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キャンプ用品など災害時にあると便利なもの |
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また意外に役に立つのが布粘着テープ。ガラスの破片を取ったり、修理に使ったり、止血、骨折の固定など救急治療にも活躍します。卓上コンロに使うガスボンベも多めに備蓄しておくといいでしょう。
そして、乳幼児のいる家庭は、おむつやミルクの備蓄も忘れずに。災害時にすぐ配給されない可能性があります。幼児や高齢者は特に感染症にかかりやすいので、衛生用品・オーラルケア用品なども必ず備蓄しておきましょう。
ライフライン編被災後の暮らしを考える「備える家」とは?
災害で電気・ガス・水道などのライフラインが停止すると、家族の健康維持が難しくなります。避難所に行くことができてもストレスのたまる環境ですから、感染症も流行ります。実際、過去の大災害では避難所などで病気が悪化して亡くなった人も多く、熊本地震の際はこうした「災害関連死」が直接被害に遭った人の4倍を超えています(※)。家屋が倒壊する危険が少ないのであれば自宅生活が望ましく、備蓄にプラスして家そのものを災害に備えられるようにすることは重要といえるでしょう。
※内閣府「平成28年(2016年)熊本県熊本地方を震源とする地震に係る被害状況等について」より
災害に備える家
*一部対応できない商品・地域があります
今後、大きな地震災害が連続して起きる可能性がある日本の暮らしにおいて、まず大切になるのが住まいの耐震性の向上。ただそれだけでなく、二次災害となる健康被害に遭わないためにはインフラ停止に備えた対策も欠かせません。特に「都市部に住む人は電気への依存度が高く」電気のない生活は不便を極めます。ダイワハウスから登場した「災害に備える家」なら、本震や余震に耐え続ける優れた耐震性能がありますし、全天候型3電池連携システムで雨天でも約10日分の電力(※)と暖房・給湯を確保できるのは驚異的な備えといえます。現代の暮らしで電気がなくては、情報収集も健康維持もままなりませんから、長期停電時に電気が使えるのは何よりも安心。今後はこうした住宅設備を備えた家がスタンダードになっていってほしいものですね。
※水道・ガスが使える場合
PROFILE
和田 隆昌(わだ たかまさ)さん
災害危機管理アドバイザー。感染症で生死をさまよった経験から「防災士」資格を取り、災害や危機管理問題に積極的に取り込んでいます。専門誌編集長を歴任。長年のアウトドア活動から、サバイバル術も得意。主な著書に『まさかわが家が』(潮出版社)があり、講演会ほかTVなどマスコミ出演多数。
※掲載の情報は2019年6月現在のものです。