日本の夏(6~8月)の平均気温の長期的な上昇や都市化によるヒートアイランド現象などで、
室内でも熱中症対策は重要になっています。
そこで、エアコンの適切な活用など室内熱中症を予防するポイントや、
快適な家づくりのコツをご紹介します。
1. 熱中症の発生状況とその原因は?
最悪の場合、死に至ることもあるなど、決して油断できない熱中症。外出先や運動中だけでなく、実は屋内でも頻繁に起きているのです。その原因を分かりやすくご紹介します。
熱中症の発生状況
総務省消防庁によると、熱中症になって救急搬送される人の数は、2018年に約9万5000人と前年の約1.8倍に急増しています。その後も、2021年を除いて毎年6万人から7万人が救急搬送されるなど、夏の熱中症対策は必須となっています。
また、医療機関での診断では、入院の必要のない軽症が60%以上、入院診療となる中等症が30%以上、3週間以上の長期入院が必要な重症も2%強、さらには死亡例もあるなど決して油断できません。まずは熱中症にならないよう対策することが大切です。
熱中症による救急搬送の発生場所
実は発生場所は住居が最も多く、次が道路(歩道含む)、その次が屋外駐車場や野外コンサート会場等となっています。住居には室内以外に庭・ベランダなども含まれ、室内での熱中症対策が十分でなかったことや、庭やベランダだからと熱中症への注意を怠ったことなどが考えられます。
※出典:総務省消防庁「令和4年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況」より
熱中症により救急搬送された人の年齢割合
熱中症になった年齢の割合は多い順に、満65歳以上の高齢者、満18~64歳未満、満7歳~17歳の少年という結果になっています。それぞれのライフスタイルも考慮した熱中症対策が求められますが、高齢者は自宅で過ごす時間も多いと考えられますし、働き盛りの成人も在宅ワークによる在宅時間が増えているため、室内を含む自宅での熱中症対策は、年齢に関係なく重要といえるでしょう。
※出典:総務省消防庁「令和4年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況」より
室内熱中症の原因
室内熱中症は、「環境」「体の状態」「行動」の3つの因子によって引き起こされます。環境の変化によって体のバランスが崩れ、汗や皮膚温度による体温調整が難しくなり、体温が上昇してしまうのです。
環境
気温(室温)が高い/湿度が高い/日当たりが良い/閉め切った屋内または部屋が狭い/部屋にエアコンがない/急に暑くなった日/熱波の襲来など
近年は夜間も気温が下がりきらず、就寝中に室内熱中症になるケースもニュースなどでよく見かけます。夜間もエアコンを使って適切な室温・湿度を保てば、室内熱中症の対策になります。タイマーで数時間後にオフにする設定もありますが、明け方まで寝苦しくなることも多いため、エアコンはつけたままにすることも考えましょう。その場合は設定温度に注意し、冷えすぎないようにしましょう。オンオフを繰り返すほうが逆に電気代がかかることもあります。
体の状態
高齢者・乳幼児・肥満と診断された方など/下痢やインフルエンザでの脱水状態/糖尿病や精神疾患といった持病/二日酔いや寝不足といった体調不良/低栄養状態など
行動
激しい筋肉運動や慣れない運動/長時間の屋外作業/水分補給ができない状況
たとえデスクワークであまり動いていなくても、水分は体から失われていきます。しかも喉の渇きはしばらく続くと慣れてしまい、水分不足に気づきにくくなることもしばしば。在宅ワーク中なども、適度に休憩を取り、積極的に水分補給をするようにしましょう。
※環境省「熱中症予防情報サイト熱中症の基礎知識」をもとに作成
2. 熱中症の症状と応急処置
万が一、熱中症になったらどうしたらいいのでしょうか。ご自身の体調の変化や周囲の方の異変に早く気づくために、注意すべき症状と応急処置、医療機関を受診する目安についてまとめました。
熱中症と思われる症状
以下のような体調の異変を感じたら(あるいは見かけたら)、その方は熱中症にかかっている可能性があります。
- 顔のほてり
- 体温が高い
- 汗のかき方がおかしい(顔がほてるのに汗が出ていない、大量に汗をかいているなど)
- 体のだるさや吐き気
- めまいや立ちくらみ
- 呼びかけへの反応が鈍い、意識が遠のく
- まっすぐ歩けない
- 筋肉痛や手足のけいれん(てんかんによる症状の場合もあるので注意が必要です)
- 頭痛
ただ、こうした体調の変化は人によって感じ方が異なる上、同じ環境にいても、一人ひとりの体の状態や行動などによって熱中症のかかりやすさは違ってきます。誰もが熱中症にかかる可能性があることを忘れず、体調の変化を感じたら、早めに応急処置や医師の診断を受けましょう。
熱中症が疑われるときの対応
環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」には、保健活動に関わる方向けに、熱中症の症状に合わせた対応が紹介されています。ただ、熱中症は急速に症状が悪化することもあるため、重症度が高いときはもちろん、軽症でも症状が改善しないときは医療機関を受診しましょう。
重症度Ⅰ度(軽症)
- 意識ははっきりしている
- 手足がしびれる
- めまい、立ちくらみがある
- 筋肉のこむら返りがある(痛い)
↓
涼しい場所へ避難して服をゆるめ、体を冷やし、水分・塩分を補給しましょう。誰かがついて見守り、良くならなければ、病院へ。
重症度Ⅱ度(中等症)
- 吐き気がする・吐く
- 頭ががんがんする(頭痛)
- 体がだるい(倦怠感)
- 意識が何となくおかしい
↓
重症度Ⅰ度と同様の処置をして、すぐに医療機関を受診しましょう。
重症度Ⅲ度(重症)
- 意識がない
- 呼びかけに対し返事がおかしい
- からだがひきつる(けいれん)
- まっすぐ歩けない・走れない
- 体が熱い
↓
救急車を呼び、到着までの間、積極的に冷却しましょう。
※出典:総務省消防庁環境省「熱中症環境マニュアル2022」
3. 室内熱中症を予防する10の対策ポイント
デスクワーク中やくつろいでいるとき、就寝中など、室内での熱中症は活発に活動していなくても起こります。対策として、十分な水分補給と適切な室温・湿度の調整など10のポイントをご紹介します。
1. こまめに水分や塩分を補給する
汗をかくことは体の体温調節に役立ちます。知らない間に失われていく体の水分を補給し、しっかり汗がかけるように水分を補給しましょう。喉が渇いたときは、すでに脱水症状は始まっているといわれます。喉の渇きを待たず、定期的に水分をとることが大切です。通常の水分補給は水やお茶で十分ですが、ビールなどのアルコールは体内の水分を排出する働きがあり、かえって水分不足を招くので熱中症対策にはなりません。また、大量に汗をかいたときは塩分も多く失われるため、水分と塩分の両方を補給することが大切です。
2. エアコンや扇風機などを使って適切な室温と温度を保つ
環境省は、熱中症対策としての室温は28℃を目安としていますが、これは28℃を上回ると熱中症の危険度が増すという意味。無理に28℃を維持する必要はないので、ご自身や家族が暑いと感じない温度に調節しましょう。ただ、外との気温差が大きいと部屋から出入りするときに体への負担が大きくなるため、湿度を下げるなどで快適さを保ち、室温を下げすぎない工夫も必要です。
加えて、熱中症予防を目的にアメリカで提案された暑さ指数(WBGT)も参考にしましょう。表示は摂氏度ですが、湿度、周辺の熱環境、気温を取り入れた指数で、28を超えると外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意する「厳重警戒」、25~28で運動や激しい作業をする際は、定期的に十分に休息を取り入れる「警戒」となっています。
3. 風通しを良くする
風の取入口と出口を設けるなど、部屋や家全体の風通しを良くします。
4. 日光を遮る、日陰を作る
窓はブラインド、すだれ、遮光カーテンなどで日光を遮り、必要以上に室温が上がらないようにしましょう。ベランダなど窓の外に植物によるグリーンカーテンを作ると、日陰ができる、壁の温度の上昇を抑える、見た目にも涼しいなどの効果が期待できます。
5. 気化熱を利用する
打ち水は、水自体の冷たさで地面を冷やすのに加え、水か蒸発するときの気化熱で地面の温度を下げる働きがあります。特に朝や夕方など地面の温度がまだ低い時間帯に行う方が効果的です。
6. 遮熱・断熱で室温を保ちやすくする
外からの熱を防ぐ遮熱、内部と外との熱の出入りを極力減らす断熱など、リフォームや新築などで自宅の住宅性能を充実させれば、室温を一定に保ちやすくなり熱中症対策にも役立ちます。
7. 通気性の良い服を着る
襟元が開き、ゆったりしたデザインの服は、服と体との間に空間ができやすく、熱がこもるのを防いで熱中症対策に効果的です。また、吸汗性、速乾性に優れた素材の服は、汗が蒸発しやすく体温調節に役立ちます。
8. 睡眠不足や栄養不足を避ける
熱中症の因子である「体の状態」で、注意するポイントに挙げられた睡眠不足や低栄養状態を避けることも、熱中症になるリスクを軽減します。特に睡眠をしっかり取れるよう、就寝時もエアコンを使うなど快適な環境を整えましょう。
9. 体が暑さに慣れる行動を意識して行う
気温が高い日が続くと、体は次第に暑さに慣れていきます。ただ、涼しい日の後に急に暑くなるなど気温が急変した場合、体が暑さに慣れる時間がなく、熱中症になりやすいとされます。あまり暑くならない時期から、無理のない範囲で軽く運動したり入浴で汗をかいたり、意識して体を暑さに慣らしていきましょう。
10. 同居する家族やペットの様子をよく確認する
同じ家に住んでいても、部屋ごとに室温や湿度は違うことがあります。家族が家のどこにいて、どんな状態なのかを注意しておきましょう。また、犬や猫などは人間より汗をかく部位が少なく、体温調節が苦手。ペットの様子にも気を配りましょう。
4. 室内熱中症、家の場所ごとの注意点と対策
室内熱中症になるリスクはリビングや寝室などの各部屋に潜んでいます。ベランダ・テラスを含む家の場所ごとの注意点と対策のポイントをまとめました。
リビング
一般的に家族が集う場所となるリビングは、平日の朝夜や休日の日中に使う、在宅ワークのため平日の日中に使うなど、長時間の利用も多い部屋です。ただ、部屋が広いと室温・湿度を均一に保つのが難しくなり、エアコンの設定温度とは異なる部分も出てきます。部屋の中を動くだけで暑い・寒いと感じる、各所の温度・湿度を測ると差があるなどの場合は、エアコンとサーキュレーターを併用して室温・湿度をある程度均一にしておきましょう。また、読書や仕事に集中していると、水分補給や休憩を忘れがちなので、定期的な水分補給を心がけましょう。
ベランダ・バルコニー・テラス
洗濯物を干したり植物に水をやったりと、暑い時間帯に出ることも多いベランダやバルコニー、テラス。室内と同じ格好で出てしまい、作業に熱中している間に熱中症になるケースも考えられます。まとまった時間で作業するときは、屋外のための服に着替え、こまめな水分補給を忘れないようにしましょう。扇風機(ファン)付きの作業着などがあると便利です。
キッチン
コンロなど火を使って料理をすると熱と蒸気による湿気が発生し、高温多湿のコンロ周辺は熱中症が起きやすい環境になります。換気扇で熱と湿気を外に逃がし、サーキュレーターでエアコンの効きを均一にする、水分補給を心がけるなどの対策が重要です。場合によっては火を使わずに食事の準備をすることも考えましょう。
寝室
真夏は特に、夜になっても室温があまり下がらないこともしばしば。そうした状況で、就寝中にエアコンを切ると熱中症になりやすい環境が生まれてしまうので、夜間もエアコンを使って、室温が上がらないよう気をつけることが大事です。また、就寝中も体の水分は失われるため、寝る前の水分補給も忘れないようにしましょう。
子ども部屋や高齢者の居室
成人に比べて、子どもは体温調整機能が未発達で、体温が上昇しやすく、熱中症になるリスクが高いため、子ども部屋の室温・湿度には十分注意しましょう。しかも子どもは自らの体調の変化を言葉や態度で伝えきれないこともあり、周囲の大人が様子をしっかり観察する必要があります。高齢者も暑さを感じにくい傾向にあり、熱中症リスクは高いといえます。高齢者の熱中症の半数以上は住居で起きていることを忘れず、同居している高齢者の居室での様子に注意を払いましょう。
浴室、脱衣所、トイレなど狭くてエアコンがない場所
一般的に浴室、脱衣所、トイレなどは狭くて窓がないことが多く、エアコンもついていない場所。このため室温が上がりやすく、滞在時間が長くなると熱中症になるリスクも増します。こうした場所に入る前、出てきた後は水分を補給し、首元など熱中症予防に効果的な部分を冷やすといった対策も行いましょう。
5. 室内熱中症のリスク軽減も期待!快適な家づくりのコツ
熱中症を起こす主な因子は「環境」「体の状態」「行動」でした。これから新築やリフォームを考えている方にとっては、断熱性能を高めるなど快適な家をつくることは、環境面からの熱中症対策にもつながります。そのポイントをご紹介します。
断熱性能が高い家にする
断熱性能が低いと、夏場にエアコンをつけてもなかなか涼しくならなかったり、2階の屋根に近い部屋が暑かったりします。その点、断熱性能が高い家なら、屋外からの熱気を遮断することで室温や湿度を一定に保ちやすくなるため、熱中症対策に役立ちます。冷暖房の効果も高まるため、省エネにも貢献できます。
例えば、断熱性能の向上に加えて、省エネと創エネを組み合わせたZEH(ゼッチ)住宅※なら、冷暖房の効率も高まるだけでなく、家計への負担も軽減できるかもしれません。
ダイワハウスの注文住宅である「xevoΣ」は、標準仕様でこのZEH(ゼッチ)基準相当なので、夏の熱中症のリスクはもちろん、寒い冬に、部屋間の温度差で起こるヒートショックなどのリスクの軽減も期待できます。
※ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス省エネと創エネを組み合わせることで、年間の一次エネルギー消費量がゼロまたはマイナスになる住宅。一次エネルギーとは化石燃料(石油・石炭・天然ガス)やウラン、太陽光など自然界に存在する状態のエネルギーのこと。
通風に優れた家(風通しのよい家)にする
立地や周辺環境、設計などの違いによって、風通しの良さは家ごとにまったく違ってきます。家づくりの際は、設計担当者と十分に相談して、風通しの良い家を建てるようにしましょう。ダイワハウスでは家づくりの「間取り相談サービス(無料)」なども行っていますので、お気軽にご相談ください。
窓は大きいほどいいの?美しく機能的な窓を作るために知っておきたい4つのこと
全館空調システムを採用する
2003年7月以降、すべての建物は24時間換気システムの設置が義務づけられていますが、部屋の場所によって温度や湿度はバラつきがあります。
ダイワハウスが提案する「あんしん空気の家」は、家全体の温度や湿度を均一にコントロールする全館空調システムです。「エアヒーリング」と「エアサルーン」の2タイプがあります。
エアヒーリングは、住まい全体の快適性などを重視する方におすすめ。機械室で温度調節された空気を、送風ファンダクトを通して、各室や行き渡らせるシステムです。また、家族一人ひとりの過ごし方や体質に合わせて、各部屋の温度をコントロールしたり、人がいない部屋の運転を控えめにして、冷暖房費の削減も行ったりできます。
エアサルーンは、主に家族が集まる1階リビングなどの快適性を重点的に高めてくれます。そのほか、洗面室や廊下などの普段人がいない非居室も、快適な温度にキープしてくれます。
庭、外構、エクステリア、設備を工夫する
ベランダにグリーンカーテンを作るだけでなく、夏の期間は庭や家が日陰になるよう植栽を工夫すれば、熱中症対策にもなります。
例えば、家の南側や西側の庭に落葉樹を植えると、春夏の間は葉が茂って強い日差しを和らげてくれます。逆に、秋冬は葉が落ちて、日差しが家の壁や室内まで届きやすくなり、部屋を暖める効果も期待できます。
このほか、窓に遮熱性能の高いカーテンやスクリーンを設置する、テラスを覆うようにオーニングを設置するなどで、日差しを和らげて熱中症を予防しやすい環境を作ることができます。
ダイワハウスでは、こうした庭・外構・エクステリアと建物のトータル提案を大事にしています。エクステリアも間取りの一部と考え、室内の間取りと連動させることで、より一層快適な住まいになります。
例えば、日当たりの良い南側のバルコニーは、洗濯物を干したりガーデニングや家庭菜園を楽しんだりするのに絶好のスペースです。ただ、見出し4の「室内熱中症、家の場所ごとの注意点と対策」でお伝えしたように、日差しが強く暑い場所に長くいると、熱中症になるリスクがあるので、涼しい格好をする以外にも軒の出を深くするなど、日差しを和らげることが重要です。また、軒や庇がないと、窓ガラスや外壁に直射日光があたり、室温が上昇することも考えられます。
一年中快適な家にするためには、こういった細かい部分のプランニングや施工力によって、住宅性能を向上させることが重要です。
室内熱中症を予防するために大切なポイントなどをご紹介してきました。熱中症の原因となる因子の「環境」「体の状態」「行動」への対策はどれも大事ですが、特に室内熱中症を予防するためには、室内温度や日当たりなど「環境」面での注意が必要です。
そういった環境面に気をつけて熱中症のリスクを軽減するためにも、これから家づくりを検討される方はぜひ、住宅性能にも着目し、一年中快適な家を目指しましょう。
お話を伺った方
清益功浩さん
All About 「家庭の医学」 ガイド 小児科医・アレルギー専門医。京都大学医学部卒業後、日本赤十字社和歌山医療センター、京都医療センターなどを経て、大阪府済生会中津病院小児科・アレルギー科で診療に従事。論文・学会報告多数。診察室外で多くの方に正確な医療情報を届けたいと、インターネットやテレビ、書籍などでも数多くの情報発信を行っている。
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