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エネルギー効率のいい家を建てたい!地球にも家計にも優しい
省エネハウスとは?

想像してみてください、こんな家。

玄関を抜けると、電気をつけなくても明るい室内。夏は涼しく、冬は暖かい。
無駄なく電気を創って蓄えられるから毎月の電気代は最小限に。
災害時に停電が起きても、エネルギーを自給自足していつも通りに暮らすことができる。
CO2 排出量も減らせて地球環境にも優しい……。

そんな、エネルギー効率のいい家に住むことができたら、
毎日の暮らしはもっと豊かになるのではないでしょうか。

今回は、芝浦工業大学建築学部教授の秋元孝之先生に、
「エネルギー効率のいい家」のつくり方について伺いました。
聞き手は大和ハウス工業の福田映子。

「省エネハウスは気になるけれど、具体的にどうすればいいの?」という方は、
ぜひ参考にしてください。

Profile

芝浦工業大学建築学部建築学科教授

秋元 孝之先生

早稲田大学大学院理工学研究科建設工学専攻修了。カリフォルニア大学バークレー校環境計画研究所に留学。博士(工学)、一級建築士。専門分野は建築設備、特に空気調和設備および熱環境・空気環境。

大和ハウス工業株式会社
本社 住宅商品開発部 住宅商品戦略グループ 主任
一級建築士

福田 映子

住宅商品開発部に所属。2年間の国土交通省への出向を機に、災害による被害の多さを体感。停電対策の必要性を感じ、「電気を自給自足する家」を企画。他、Lifegenic(販売終了)やテレワークスタイル提案など、時勢に応じた企画を行っている。

Smart Made Housing.

エネルギー効率のいい住宅ってどんな家?

福田:いわゆる「省エネ」な家を志向される方は増えていると感じます。はじめに、秋元先生が考える「エネルギー効率のいい家」とは具体的にどのような家なのか、どんなメリットがあるのかについてお聞かせいただきたいです。

秋元先生:まず、住宅のエネルギー消費量が少ない家であること。また、住宅のエネルギー消費量が少ない=住宅から出るCO2排出量が少なくて済むので「地球温暖化の抑制に役立つ家」でもあります。
そして、エネルギー消費を抑えつつも、住む人にとって健康で快適な、安心・安全な暮らしが実現できることが重要だと考えています。いくら地球に優しくても、住む人が快適に過ごせなければ意味がないので…。

具体的には、(1)高断熱・高気密の家 (2)省エネ・高効率設備の家 (3)太陽光発電などの創エネ の3つのポイントがあります。最近話題のZEH(※)もまさにエネルギー効率がいい家と言えます。

※ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略。住まいの断熱性と省エネ性能を高めることと、太陽光発電などでエネルギーを創ることで、年間の一次エネルギー消費量(空調・給湯・照明・換気など)の収支をプラスマイナス「ゼロ」にする住宅のこと。

高断熱・高気密が重要である理由

住まい全体の高断熱化

福田:「エネルギー効率がいい家」をつくるには、多角的な取り組みが必要だと思いますが、中でも(1)高断熱・高気密の家は必須条件になると私も考えます。夏は外の暑さを極力取り込まずに冷房で冷やした空気を外に逃がさない、冬は外の寒さを極力取り込まずに暖房で暖めた空気を外に逃さない。住む人が快適に過ごせるだけでなく、冷暖房が最小限で済むので光熱費が抑えられ、お財布に優しいです。

秋元先生:ZEH基準相当の家と、従来型の家では年間光熱費に約12万円の差が生まれるというレポートもあります(※1)。さらに、高断熱・高気密の家は健康にも優しい家とも言えます。各部屋の温熱環境の差が少ないので、暖かい部屋と寒い部屋の行き来で起こりやすいヒートショック(温度差で起こる血圧の変動など)のリスクが減らせます。アレルギー疾患の発症リスクを軽減できるという報告(※2)もあるんですよ。

  • ※1温暖地(東京)の場合(住団連調べ)。太陽光発電による売電は含まない。数値はシミュレーションによって試算したもの。
  • ※2近畿大学岩前篤教授による健康調査。

福田:高断熱・高気密は住宅の耐久面でもメリットがありますね。

秋元先生:その通りです。断熱性と気密性が低い家は、窓周りだけでなく壁や躯体の中で結露が起こりやすいため、カビの発生や躯体の傷みにつながります。住宅自体の寿命を縮めるばかりか、健康もおびやかされてしまいます。

熱の出入りをコントロールする設計上の工夫とは?

福田:高断熱・高気密の家をつくるための具体的な方法についてもっとお伺いしたいです。

秋元先生:高断熱・高気密の家を建てるには、外気の影響を受けやすい屋根や天井、外壁を断熱し、室内の表面温度と室温を近づけることが大切です。また、日射を遮る軒の工夫や、熱の移動が起こりやすい開口部(扉・窓など)の強化が特に重要になってきます。現在の建築基準だと、開口部の熱の移動は、夏の冷房時に73%、冬の暖房時に58%起こると言われています(※)。開口部の熱の出入りを抑えるには、たとえば高断熱のサッシやペアガラスなどの採用が有効です。

※一般社団法人日本建材・住宅設備産業協会「省エネ建材で、快適な家、健康的な家」より

高性能断熱複合サッシ 概念図

xevoΣで採用している、2枚のガラスの間に乾燥した空気を挟んだ「高断熱複層ガラス」。断熱性が高く熱を逃がしにくい。サッシの外側には太陽光や風雨に負けないアルミを、内側には熱を伝えにくい樹脂を使用することで、寒い時期でも結露が起こりにくい。

福田:開口部からの熱の出入りを抑えるという意味では、弊社のxevoΣで採用している深い軒やバルコニーも役立ちます。太陽の高度が高くなる夏は日差しを遮って涼しく、太陽の高度が低くなる冬は広い窓から日差しを室内の奥まで取り入れることができます。

夏は日差しを遮り、冬は陽光をたっぷりと採り込む。

秋元先生:深い軒は日差しを遮るのにとても有効で、xevoΣは昔の日本家屋のプリミティブなデザインをうまく現代に翻訳して採用しているなと感じます。光エネルギーは最終的に熱になるので、不要な光はなるべく外で遮るのが理にかなっています。また、天井高のある大空間では断熱気密性が低いと上下の温度にムラが出ますが、高断熱・高気密の家ならその影響を最小限に留められます。

福田:ダイワハウスの特徴でもある大開口、天井高も、高断熱・高気密だからこそ実現する特徴だと自負しています。

今後は住まいの電気を「自給自足」するニーズが高まる?

福田:冒頭に挙げたその他のポイント、(2)省エネ・高効率設備の家と (3)太陽光発電などの創エネについてはいかがですか?

秋元先生:(2)は省エネ性能の高い空調設備で暖冷房費を抑えたり、自然光やLED照明をうまく利用して照明電力を抑える方法です。(3)については消費したエネルギーを自家発電で補う方法で、近年特に注目が集まっています。

福田:創エネに関連した話題として、あまり知られていませんが、全世帯の毎月の電気料金には、お客さまの電気使用量に応じた「再生可能エネルギー発電促進賦課金」が含まれています。これは、再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社が買い取る際の費用の一部をお客さまが負担するもので、その額は年々増えています。一方で、家庭で創った電気の売電価格は下がる傾向です。電気を買うのも売るのもおトクとは言えない時代で、電気をなるべく買わず自分で賄う「自給自足」のニーズが高まると考えられますが、先生のご意見はいかがですか?

秋元先生:ご指摘の通りだと思います。電力会社からはなるべく電気を買わず、自家消費を増やし、経済的にも負担がない状態を目指せるのが理想ですね。創エネには太陽光発電・燃料電池などいくつかの種類がありますが、それぞれにメリット・デメリットがあるため、異なるシステムを組み合わせて弱点を補い合うとレジリエンス性能が高まります。そこに蓄電池や電気自動車を組み合わせれば、創った電気を無駄なく使い切ることができてさらに効率的ですね。

福田:ダイワハウスでも太陽光発電と燃料電池のエネファーム、そしてつくった電気を溜めておける蓄電池を連携させた「全天候型3電池連携システム」をご提供しています。エネルギー効率のいい家づくりには欠かせないシステムだと考えています。

業界初(※1)
全天候型3電池連携システム

太陽光パネルとエネファームで創った電気を蓄電池に貯める全天候型3電池連携システムで雨天でも約10日分(※2)の電力と暖房・給湯を確保できるので、電気がずっと使えて安心。

停電時にはエネファームで発電した電力も蓄電できる「切換盤」を採用。太陽光発電との連携で、長期的な停電にも備えることができます。

太陽光発電やエネファームで発電した電気を充電するリチウムイオン電池は、エリーパワー社製を使用。大容量・大出力で停電時にも安定した電力を供給します。安全かつ長寿命で販売台数が年々増えています。

  • ※12019年2月当社調べ(プレハブ住宅業界)
  • ※2水道・ガスが使える場合

エネルギー効率のいい家は資産価値が高まり
これからのスタンダードに

福田:エネルギー効率のいい住宅は初期コストがかかりますが、毎月の光熱費が安くなり、地球にも負荷をかけないなどメリットが多いと言えます。こうした省エネ住宅が今後義務化されていく可能性についてはいかがですか?

秋元先生:一部で「2020年にZEHが義務化になるのでは?」という噂がありましたが、課題が多く見送られたのはご存じの通りだと思います。現状、2年以内の施行が予定されているのは、延床面積300m2未満の住宅を新築する際の建築士から建築主への省エネ説明の義務化です。

福田:ダイワハウスでも住まいの省エネ性能を5段階の星マークで表示する第三者認証制度の「BELS(ベルス)」を採用するなど、日頃から省エネ性能に関する情報提供を心がけています。

秋元先生:住宅のプロがエネルギー効率のいい家のあり方を示す意義は大きいです。“省エネ技術のソムリエ”のように、住まい手の予算に応じた省エネプランを提案できれば、省エネ性能の目利きが増えて、ZEHが義務化されなくても質の悪い住宅システムは自然に淘汰されていって、省エネ住宅が業界の標準になると期待しています。

福田:そのような住宅がさらに広まっていくためには何が必要でしょうか?

秋元先生:どれほど快適で過ごしやすい家なのかを、多くの人が知れる機会を増やすことが大切だと思います。既存の住宅に長く住んでいると、夏は暑く、冬は底冷えする状態が当たり前になっていて、質の高い住宅に住むとどれほど快適になるのかを想像できません。実際に体感できる展示場やモデルハウスで快適さを周知して欲しいですね。

全国の住まい体験施設

右:断熱性の実験装置
左:ダイワハウスの技術や性能を体感&実感できる「TRY家Chubu」

福田:将来的に省エネ住宅の資産価値が上がることも考えられますか?

秋元先生:日本では住宅の中古市場自体が活性化していませんが、最近は中古物件の取引にも省エネ性能のラベリングシステムの導入が検討されており、BELSの評価も提示していく動きがあります。近い将来、エネルギー効率のいい家の資産価値は高まっていくと考えています。

福田:本日はありがとうございました。

まとめ

住宅のエネルギー効率を高めることは、ご自身の快適さのため、家計のため、そして将来、次世代へ健全な地球環境をのこすために、今後ますます重要な観点になってくることでしょう。これから家づくりを考える方は、間取りやインテリアだけでなく住宅のエネルギー効率にも着目して、ぜひ快適なお住まいを手に入れてください。

※掲載の情報は2020年8月現在のものです。

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