「そろそろ家族のために家を建てようかな」と思ったとき、まず何から考えますか。
最寄り駅や間取り、環境や子どもの教育などはじめの一歩はさまざまかと思います。
そして次に考えることと言えば、家づくりのためのお金についてでしょうか。
家づくりには大きなお金がかかります。
家づくりのお金の中身は大まかに、建物本体と付帯工事、そして諸費用となっています。
また、その家を建てるための土地がなければ、まず先に土地を用意する必要もあります。
まずは、それぞれ必要なお金についてしっかりと押さえておく必要があるでしょう。
家づくりでは建物本体にかかるお金の割合は7割
家づくりの費用では、やはり建物本体の占める割合が高いと言えます。 しかしながら、その建物本体は全体の7割程度となっており、それ以外にも解体工事や造成工事、基礎補強、電気設備関連などの付帯工事費が2割程度、そして残りの1割は諸費用というものです。もしご両親やご親族等から受け継いだ土地がある方は、その土地に家づくりを始めることができますが、多くの方は土地の購入から家づくりを始める場合が多いでしょう。 その場合には土地を購入するための土地代のほかに、やはり諸費用がかかります。
この諸費用という言葉はよく耳にすると思いますが、それでは家づくりの諸費用には何があるのでしょうか。今回は諸費用について細かく確認していきましょう。
諸費用の中身を知っておこう
家づくりを進める中では、予算が足りずあきらめる設備もあるかも知れません。しかし諸費用は不動産を取得する上で避けられない、必ずかかるお金となります。では、諸費用というのはどのような内容のお金でしょうか。
必ずかかる費用
1)不動産登記費用
不動産(土地と建物)を購入した場合には、土地と建物のそれぞれに所有権の登記が必要となります。この不動産の所有者は誰なのか、どこにその土地があって、どのくらいの面積なのかなどを、国が登記簿に記載します。またこの情報は誰でも閲覧できる情報となります。登記簿はその不動産の情報を表す表題部と権利を表す権利部に分かれています。 住宅ローンなどを利用した場合には、不動産に抵当権といった権利を登記しますが、その場合は権利部に表記されます。この登記によって、不動産の所有権利を保全されることとなり、安心して取引を行うことができます。
2)各種税金
登録免許税
土地を取得した場合には前の所有者から新しい所有者に所有権移転登記を、またそこに新しい建物を建築した場合には所有権保存登記を行います。これらの登記は不動産のある住所を管轄する法務局で行い、その際に納付するのが登録免許税です。住宅ローンを利用した場合に設定する抵当権設定登記のときにも同様に課税されます。
印紙税
不動産の売買契約書や建設工事請負契約書、または住宅ローンを利用したときに金融機関と結ぶ金銭消費貸借契約書には収入印紙を貼る必要があります。収入印紙とは国に印紙税を払うための証票です。収入印紙を貼り、消印することで、税金を納税したこととみなされます。
不動産取得税
土地や建物を取得すると、固定資産評価額を基準に不動産取得税が課税されます。取得した日から60日以内に、不動産の所在地を所管する都道府県税事務所に申告する必要があります。建築や土地・家屋の購入、その他贈与や交換などで不動産を取得した方に課税されます。
固定資産税・都市計画税
固定資産税・都市計画税とは土地・家屋等を所有している方に市町村が課税する地方税です。毎年1月1 日現在、固定資産課税台帳に所有者として登録されている方のところに通知が来ます。年の途中で所有者が変更になる場合は、その支払いについて不動産売買契約書にて特約を設けて、その案分を決めることもあります。
消費税
不動産では土地には消費税がかからず、建物本体および付帯工事費といったそれ以外のものには消費税がかかります。建物本体および付帯工事費の金額に対してですので、その消費税も大きな金額となります、しっかりと予算に入れておきましょう。また、仲介手数料や司法書士への報酬にも消費税はかかります。ただし例外として、個人から購入する場合には消費税は発生しないこととなっています。
さらに必要に応じてかかる諸費用
3)手数料・報酬・保証料
司法書士報酬
所有権の登記費用や、住宅ローンを利用して住宅や土地に抵当権を設定するときに、手続きを司法書士に依頼する場合には報酬が発生します。その金額は司法書士事務所によって異なりますので、事前に確認が必要でしょう。
仲介手数料
土地を購入しようと考えたときに、多くの方は不動産会社に相談することでしょう。仲介手数料とは、土地の取引をするとき発生する、売主との間の価格の交渉や、契約事務などについて、その取引が成立したときに不動産会社に支払う手数料のことをいいます。
住宅ローン手数料
住宅ローンを利用する金融機関に支払う事務手続きの手数料。住宅ローン契約時に決まった金額を支払う方法(定額制)と借入額に応じて支払う方法(定率制)があります。
住宅ローン保証料
金融機関に保証会社がつく場合に支払います。一括前払いと金利上乗せの2種類の支払い方法があります。「フラット35」や保証会社がつかない場合には保証料はありません。
物件検査手数料
「フラット35」を利用する場合には、住宅金融支援機構が定めた技術基準に適合しているかを証明する適合証明書が必要です。適合証明書を取得するには、適合証明検査機関へ検査を申請し合格することで交付されます。物件検査手数料は適合証明検査機関によって異なります。
4)保険料
団体信用生命保険料
住宅ローンを利用した場合にリスクを減らすために加入する保険となります。 そのため、民間の住宅ローンの多くは、借入額相当の団体信用生命保険(団信)への加入を義務付けています。返済の途中で万が一、住宅ローンの名義人の死亡または高度障害状態になった場合に、保険会社からは住宅ローンの残高相当が金融機関に支払われ、その時点でローンは完済となり、残された家族には不動産が残ることとなります。
平成29年10月1日申込受付分からの「フラット35」は団信ありタイプも設定されて、その保険料は金利に上乗せされる形となりました。保険料は一般的な生命保険よりも安く、保険料は住宅ローンに含まれます。
火災保険料
新居に住み始めてから起こる不測の事態に備える保険には、さまざまな種類があります。 住んでいる場所、家族の状況等を踏まえて、必要に応じて加入することをおすすめします。また、住宅ローンを利用した場合には、どの金融機関でも火災保険の加入をほぼ義務付けているようです。火災で建物が焼失すると再建費用がかかる上、住宅ローンの返済も続きますので、保険の加入は必須といえるでしょう。火災保険のほかにも地震保険や盗難や事故などを含め、幅広くカバーする保険もあります。
費用一覧
諸経費の種類 | 内訳 | |
---|---|---|
登録免許税 | 土地 所有権移転登記 (司法書士費用別途) |
課税標準額×1.5% (軽減措置の適用 令和8年3月31日まで)※1 |
新築建物 所有権保存登記 (司法書士費用別途) |
課税標準額×0.15% (軽減措置の適用 令和6年3月31日まで)※2 |
|
抵当権設定登記費用 (司法書士費用別途) |
債権額×0.1% (軽減措置の適用 令和6年3月31日まで)※2 |
|
印紙税 | 売買契約書・建設工事請負契約書・ 金銭消費貸借契約書の印紙税 (1,000万円超~5,000万円以下) |
1万円 (軽減措置の適用 令和6年3月31日まで) |
売買契約書・建設工事請負契約書・ 金銭消費貸借契約書の印紙税 (5,000万円超~1億円以下) |
3万円 (軽減措置の適用 令和6年3月31日まで) |
|
住宅ローン金銭消費貸借契約書の印紙税 (借入額1,000万円超~5,000万円以下) |
2万円 | |
住宅ローン金銭消費貸借契約書の印紙税 (借入額5,000万円超~1億円以下) |
6万円 | |
不動産 取得税 |
不動産取得税(土地) 令和6年3月31日までに宅地および |
(固定資産評価額×1/2×3%) ―控除額 下記①か②の多い金額 以下のどちらか多い方の額が減額される。 |
不動産取得税(建物) 令和6年3月31日までの特例 |
(固定資産評価額―1,200万円)×3% 令和6年3月31日までの軽減措置特例 |
|
手数料・ 報酬 |
仲介手数料 | 売買価格400万円超の場合 3% +6万円+消費税 |
司法書士報酬 | 司法書士事務所によって異なる | |
住宅ローン融資の 銀行手数料※3 三井住友銀行WEB申込の場合 |
ご融資金額×2.2% | |
住宅ローン保証料 | 借入額×金融機関が定める保証料率 | |
物件検査手数料 | 新築一戸建ての場合おおよそ2万~3万 | |
保険 | 火災保険料 | (条件によって異なる) |
- ※1土地の売買や住宅用家屋の所有権の保存登記等に係る登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ
- ※2軽減措置の適用を受けるためには、登記の申請書に住宅用家屋の所在地の市区町村長の証明書(住宅用家屋の床面積が50m2以上であること等の一定の要件を満たす旨の証明)を添付の上、その住宅用家屋の新築または取得後1年以内に登記を受けなければなりません。
- ※3三井住友銀行 住宅ローン手数料
まとめ
諸費用はその家ごとにかかる費用が違います。また現在は軽減税制の適用可能かどうかなど、時期によってもその費用は変化します。そのため、まずは正しい情報を持った家づくりのプロにご相談してみてはいかがでしょうか。
上記の費用以外にも、家づくりを進める中で、地鎮祭や上棟式などを行う場合にはその費用がかかります。また、家具・家電、カーテンや照明といったインテリアなども新しい家にあわせたものを購入したくなるかも知れません。その他、引っ越し費用、ご近所への挨拶品代、場所によってはケーブルテレビの加入料や町会費など、予定しない費用が発生する場合もあるということを念頭におき、余裕をもって家づくりのお金を用意しましょう。
執筆者
山田健介
FPplants株式会社 代表取締役社長
住宅メーカーから金融機関を経て「お客さまにお金の正しい知識や情報をお伝えしたい」という思いからFPによるサービスを行う会社を設立。現在は全国のFPを教育する傍ら、執筆、セミナーを行う。特にライフプラン作成、住宅、保険に関する相談を得意とする。
※掲載の情報は2024年2月現在のものです。内容は変わる場合がございますので、ご了承ください。