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スタッフからの現地便り

能登の新緑を味わう

  • 更新日:2010年06月26日
  • カテゴリ:自然観察
 
■左:コナラ(コ楢)の花 別名ホウソ、ハハソ、ナラ ブナ科コナラ属
北海道から九州の日当たりのよい山野に生育する落葉高木。雑木林の代表種。4月~5月、銀色の毛が密集した葉が開き始める頃、多数の雄花を5cmほどひも状に枝から下げ、新枝の葉の付け根に2~3個の雌花を付ける。どんぐり(堅果:ケンカ)はその年の秋に熟す。名前は小型のナラ。しなやかなものをナラナラと言ったからという説がある。
■右:ウワミズザクラ(上溝桜) バラ科サクラ属
北海道西南から九州に生育する落葉高木。4~5月、房状に白い花を咲かせる。樹皮に傷をつけると強い臭気がする。沢沿いなど湿り気のある場所に多い。この材の表面に溝を彫り焼いて亀甲占いに使ったことからついた名。
桜の時期が過ぎた能登は、春から初夏へ変化の途中。若葉の色を残した樹々が迎えてくれました。

コナラの新芽が銀色の毛を纏って光る林では、ウワミズザクラの白い房状の花が咲いていました。樹々に絡みついたミツバアケビは濃い紫色の花をつけ、フジは房の上の方で花が数個開き始めたところ。この時期の能登はちょうどツツジの季節。ユキグニミツバツツジがあちらこちらで紅紫色の花をつけ、林床を彩っていました。朱橙色のレンゲツツジも所々で咲いています。道路脇でベル状の小さな花をつけたウスノキも見つけました。こちらはツツジの仲間でも目立たない花なので、気をつけていないと見逃してしまいそうです。
 
■左:ミツバアケビ(三葉木通、三葉通草) アケビ科アケビ属
北海道から九州の山野に生育するつる性落葉樹。4~5月、濃紫色の花をつける。3枚の萼片が花弁のように見えるのが雌花。、粒状なのが雄花。葉は3枚が1セット。果実は普通3個ずつつき、9~10月に紫色に熟し縦に割れ食べられる。名の由来は果実の色から『朱実(明美)』、熟すと果実が開くので『開け実』からなどの説がある。

■右:フジ(藤) 別名ノダフジ マメ科フジ属
本州から九州の山野に生育する日本固有のつる性落葉樹。4~7月、紫色で蝶形をした花を20~100cmの房状につけ、元から順に咲く。つるの巻き方は左肩上がり。関西地方以西に成育するヤマフジは右肩上がりで花房が10~20cmと短い。名の由来は不明

  
■左:ユキグニミツバツツジ(雪国三葉躑躅) ツツジ科ツツジ属
秋田県南部から鳥取県東部の日本海側や近畿地方の山地や林縁に生育する落葉低木。4~6月、紅紫色で漏斗形の花をつける。葉は菱形で枝先に3枚輪生する。葉柄や雌しべ、雄しべに毛がないのが特徴。日本海側の多雪地帯に分布することからついた名。
■中:レンゲツツジ(蓮華躑躅) 別名オニツツジ ツツジ科ツツジ属
北海道西南部から九州の高原などに生育する落葉低木。4~6月、朱橙色で漏斗状の花をつける。ツツジの仲間では花が一番大きい。つぼみの形がレンゲに似ていることからついた名。葉や花が有毒なので放牧地でも家畜が食べずに残る。
■右:ウスノキ(臼の木) 別名カクミスノキ、アカモジ ツツジ科スノキ属
北海道から九州北部に分布する落葉低木。4~6月赤みを帯びた黄緑色のスズランのような花を2~3個つける。果実は夏に赤く熟す。先端がくぼんだ果実の形を臼にたとえた名。ヒメウスノキはよく似るが、枝は緑色で稜がありジグザグに曲がる。オオバスノキは萼が角張らない。
林を少し離れて見てみると、マルバアオダモが白く細い花弁の花をまとめてつけ、まるで枝の上に雪が積もったようです。もう少し樹高の低いミヤマガマズミも白い小さな花をまとめてつけています。よく見るとミヤマガマズミよりも葉が小さく細長いものも。花のかたまりも小さいコバノガマズミです。近くでは春の山菜の王様、コシアブラの若木が葉を広げています。コシアブラは新芽が舌を楽しませてくれるだけでなく、秋には葉が淡いレモン色の薄紙のように紅葉し、目も楽しませてくれます。雲が厚くなってきたなと思っていたらポツポツ落ちてきたので、1日目はこの辺りで切り上げる事にしました。
 
■左:コバノガマズミ(小葉の莢ズミ[草冠に迷]) スイカズラ科ガマズミ属
本州から九州の丘陵地や山地に生育する日本固有の落葉低木。4~5月、白い小さな花のかたまりをつける。丸い実は9月~11月に赤く熟す。ガマズミに比べ葉が小さくて細長く先が尖る。葉柄は短く、線状の托葉がある。花のかたまりもガマズミより小さい。
■右:ミヤマガマズミ(深山莢ズミ[草冠に迷]) スイカズラ科スイカズラ属
北海道から九州に分布する日本固有の落葉低木。5~6月に小さな花を多数まとめてつける。果実は秋に赤く熟す。若い枝は紫褐色。葉はガマズミより先が尾状に尖り、葉柄に長く絹毛がまばらに生える。名前はガマズミより深山で見られることからついたと言われるが、深山に限らない。ガマズミは漢名の音読みが転訛したという説がある。
 
■左:マルバアオダモ(丸葉青だも) 別名ホソバアオダモ、トサトネリコ、コガネアオダモ
                      モクセイ科トネリコ属

北海道から九州の平地から山地に生育する落葉高木。雌雄別株。4~5月、小さな花を雪が積もったようにつける。アオダモ(枝を水につけると水が青くなることからついた名)の仲間で、葉の縁に鋸葉がないので丸葉とついた。
■右:コシアブラ(漉脂) ウコギ科ウコギ属
北海道から九州の山地に生育する日本固有の落葉高木。8~9月、淡黄緑色の小さな花を枝先にたくさんつける。果実は黒く熟す。葉は5枚がセットで長い柄につき、秋に透き通るような淡い黄色に黄葉する。若芽は香りがあり春の山菜の王様ともいわれる。樹脂を漉して塗料(金漆:ごんぜつ)として用いられたことからついた名。
翌日目覚めると、雨はすっかり上っていたので、まだ水滴がついている植物の緑を楽しみながら朝食の前の一歩き。昨日はミツバアケビの花をあちらこちらで見たので、他のアケビはないのかな?と思っていたら、ありました。縁が波打った葉が5枚ずつついたゴヨウアケビです。少し変わった形の蛾が葉の上で雨宿りをしていたようです。クロオビシロフタオでしょうか。残念ながらゴヨウアケビの花は見られませんでしたが、昨日はどれも葉だけだったギンランが花をつけているのを一株だけ見つけることができました。
 
■左:ゴヨウアケビ(五葉木通、五葉通草) アケビ科アケビ属
北海道から九州の山野に生育するつる性落葉樹。アケビとミツバアケビの自然交雑種。小葉は3または5個で縁に波状の鋸歯がある。アケビも葉は5枚だが鋸歯がない。4~5月に暗紫色の花をつけるが果実はできない。能登には歯の縁が全縁(鋸歯がない)のアケビも自生している。名前は5枚の葉からついた。
■右:ギンラン(銀蘭) ラン科キンラン属
本州から九州の林内に生育する多年草。5~6月、白い花を茎頂に数個つける。キンランやササバギンラン(葉がササの葉に似る)に比べ小さい。黄色い花のキンランに対し花が白いことからついた名。
食後は現地スタッフと合流し、白いイカリソウが咲いているという緑地に。枯葉の間からつやのあるハート型の葉を出し、トキワイカリソウが白い花をつけていました。周辺には何株もあるそうですが、教えてもらわなければ気が付かなかったかもしれません。近くの遊歩道を歩いている途中「これは?」と聞かれたのは和紙の原料になるコウゾの仲間です。調べてみると、よく似ているコウゾとカジノキは雌雄別株。これは雄花と雌花が同じ株についているのでヒメコウゾでしょう。花がついてなければ見分けるのは難しそうです。(コウゾには雌雄同株もあると書いてある図鑑もあります)
 
■トキワイカリソウ(常盤碇草) メギ科イカリソウ属
東北地方から山陰地方の日本海側多雪地帯の林内に生育する多年草。4~5月に白色から紅紫色の長い踞がある花をつける。葉は常緑で光沢がある。花の形が船の碇に似ていて常緑なのでついた名。
■ヒメコウゾ(姫楮) 別名コウゾ クワ科コウゾ属
本州から九州の低山の林縁などに生育する落葉低木。4~5月、新枝の上部に赤紫色の雌しべが目立つ雌花を、下部に球形の雄花をつける。果実はキイチゴに似た形で橙赤色に熟し甘い。和紙の原料として栽培されるコウゾは本種とカジノキの雑種だが、コウゾとカジノキは雌雄別株。コウゾ(『紙麻(カミソ)』が転訛したという説がある)に比べ小さいことからついた名。
新緑に囲まれた能登志賀の郷リゾートは、夏から秋へと季節が変わるとともに緑の色が変わり、さまざまな花が咲き、散策する私たちを楽しませてくれることでしょう。次回はどんな自然が迎えてくれるでしょうか。



■能登志賀の郷リゾートの街並み
※上記写真はすべて平成22年6月撮影


担当スタッフ紹介

ガイド写真

自然観察指導員1級造園施工管理技士
グリーンアドバイザー

関口 亮子

群馬県前橋市出身、恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒業、現在「むろたに園芸研究所」勤務、設計、草花植栽、園芸講座講師を担当、特に自然風の庭造りを得意とする。

 

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