大和ハウス工業株式会社

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スタッフからの現地便り

ふたつの海の風に吹かれて

  • 更新日:2009年04月22日
  • カテゴリ:四季だより

■ノジギク(野路菊)キク科キク属
本州瀬戸内海沿岸、四国、九州の海沿いに生育する多年草。11~1月に白い花をつける。主に海沿いに生えるが、内陸に生えることもあり、これを見て命名された。高知の足摺岬から佐田岬の海岸に分布するアシズリノジギクは、葉が厚く反り気味になり、葉裏は毛で白く見え、表も白く縁取られたように見える。このアシズリノジギクの特徴をもつ株と、葉が薄くノジギクの特徴をもつ株が見られた。区別しにくい株も多くあるという。
 佐田岬で多く目にする薄い板を重ねたような緑色片岩の地層。訪れたのは、その斜面が満開のノジギクの花で白く覆われた頃でした。

【カラフルな実たち】
 まずはロイヤルシティ佐田岬リゾートの中心に位置するムカイパークへ向いました。駐車場辺りからは宇和海を遥か遠くまで見ることができます。ムカイパークに接するB街区を歩き始めると、雪をうっすら冠ったような樹が見えました。近くに寄ると雪のように見えたのはセンニンソウの実についているひげでした。

■センニンソウ(仙人草)のひげ キンポウゲ科センニンソウ属
日本全土の日当たりのよい林縁などに生育するつる性半低木。7~10月、花弁に見える4個の白い萼片を持つ花を多数つける。葉は小葉3~7個がセットになる。葉の縁に鋸歯がない点が、よく似るボタンヅルとの大きな違い。果実の無い毛を仙人のひげや白髪にたとえてついた名。クレマチスの仲間。
道を下っていると斜面にあるクサギの実がちょうど目の高さに見えます。白い花もきれいですが、星形の赤い萼と藍色の実も鮮やかで目を引きます。C街区の林の縁ではカラスウリが実をつけていました。この実の中に入っている種子が大黒様のシルエットに似ているのをご存知ですか?打ち出の小槌やカマキリの頭という人も。ちょっと変わった形をしているので、機会ががあったらご覧ください。

■左:クサギ(臭木)の果実 クマツヅラ科クサギ属
日本全土の日当たりのよい林縁などに生育する落葉小高木。8~9月に筒状で5つに裂ける白い花を多数まとめてつける。萼は紅紫色で花後は星状になり、中央に藍色の果実がつく。葉や枝は傷つけると悪臭があるので名がついたが、花には芳香があり、チョウなどを集める。若葉は食用、根は薬用、果実は染料に用いられる。
■右:カラスウリ(烏瓜)の果実 別名タマズサ ウリ科カラスウリ属
本州から九州のやぶなどに生育するつる性多年草。8~9月、暗くなってから白いレース状の花をつけ、翌朝にしぼむ。ガによって花粉が運ばれる。果実は楕円形で朱赤に熟す。名はカラスが好む瓜(実際は好まない)、果実の小さなスズメウリに対して大きなカラスとついた。朱墨に色が似ているので唐朱瓜から、など諸説がある。別名のタマズサ(玉章)は種子の形を結び文にたとえてついた。
 さらに歩いているとオーナーさんが声をかけてくださいました。オーナーさんからはいろいろな情報を教えていただけるので、楽しい時間です。名残おしいのですが先に進み、林の中の歩道を上がってみました。少し暗いのでヒサカキなど常緑の低木が見られます。ヒサカキは枝中に黒い実がつき、上部には蕾もついています。近くには変わった葉形のカンコノキが。葉の先端が広がりヘラのような形をしています。事務所に向って進んでいると、小さな赤い実をたくさんつけている樹がありました。よく見るとこの樹の実ではなく、絡みついたヒヨドリジョウゴの実でした。

■左:ヒサカキ(姫榊、非榊)の果実 ツバキ科ヒサカキ属
本州から九州の山地の林床に生育する常緑低木~小高木。雌雄異株。3~4月に花弁5個の小さな花を下向きにつける。花は帯黄白色で臭気がある。果実は秋に紫黒色に熟す。名の由来は、サカキに似ていて小型なので姫榊、サカキに似ているがサカキでないので非榊、などの説がある。関東ではサカキの代用品として持ちいれられる。
■中:カンコノキ トウダイグサ科カンコノキ属
本州の近畿地方以西から沖縄の沿岸に成育する落葉または半落葉低木、または小高木。日本固有。雌雄異株ときに同株。6~10月、葉の付け根に淡緑色の花をつける。花弁はない。小枝の先は刺状になる。果実はカボチャのような形で、熟すと裂けて朱色の種子が顔を出す。名は独特な形が『かんこ舟』に似ていることから、扁平な果実の形が『かっこ』という菓子ににているから、などの説がある。
■右:ヒヨドリジョウゴ(鵯上戸)の果実 ナス科ナス属
日本全土の山野の林縁に生育するつる性多年草。8~9月、白または淡紫色の花弁が反り返り、黄色い雄しべが目立つ小さな花を多数つける。果実は秋に赤く熟し、ヒヨドリが好んで食べるから名がついたといわれるが、悪食のヒヨドリぐらいしか食べないから、という説もある。人間には有毒。
【海の色の変化を楽しんでみたい】

事務所横の階段を上がるとA街区です。時々振り返るとB街区がよく見えます。上がりきると他とは違う景色が広がりました。日当たりの良い小高い山のようになっています。見渡しがよいためか、イヌザンショウの実は鳥に食べられ、実のついていた枝だけ残り珊瑚のようです。ぐるっとまわるような道から時々見える海はとても近くに感じ、1日中眺めていたくなります。ここから見る夕日に染まる海はきれいでしょうね。

■イヌザンショウ(犬山椒)の果実のあと ミカン科サンショウ属
本州から九州の日当たりのよい低山などに生育する落葉低木。雌雄異株。6~11対の小葉が集まってつく。7~8月に黄緑色の小さな花をまとめてつける。果実は9~10月に赤く熟し、裂開すると光沢のある黒い種子が顔を出す。サンショウに似るが刺が互性してつき(サンショウは対性)、葉や実に香りが少ないので『イヌ』がついた。『イヌ』は役に立たない代名詞。
【野鳥のレストラン】
  最後に蒼洋の丘街区へ。ここは新しい街区です。歩道を下っていると白い実をつけたムラサキシキブがありました。林の中で白い実のムラサキシキブを見るのは珍しいことですが、四国には白い実の種類も自生しているそうです。舗装した道に出ると日当たりがよく、キツネノマゴやキランソウ、シロノセンダングサなどが道沿いを占領しています。
たくさんの鳥の声に誘われて、樹々が茂った斜面にせり出した展望台に立つと、目の前に大海原が広がっていました。ふと足元を見ると、ヒマワリの小さな花が。鳥が運んだものだな、と考えていると、頭の上から鳥が飛び立ちました。ここは鳥たちのレストランのようで、たくさんついたヤブニッケイやシロダモの実を食べに来ていたようです。邪魔をしないようにそろそろ引き上げましょう。
 
■左:白実のオオムラサキシキブ(紫式部) クマツヅラ科ムラサキシキブ属
オオムラサキシキブの白実と思われる。オオムラサキシキブは本州の東海地方以西から四国南部、九州南部、沖縄の海岸近くに生育する落葉低木。ムラサキシキブの変種で、葉が肉厚で大きく広い。名はここから。ムラサキシキブは紫色の美しい果実を紫式部にたとえてつけられた名。
■右:ヤブニッケイ(藪肉桂) 別名マツラニッケイ、クスタブ、クロダモ クスノキ科クスノキ属
本州福島以南から沖縄の河岸近くの山地に生育する常緑高木。6~7月に淡黄色の小さな花を数個ずつつけ、果実は11~12月に黒く熟す。葉は3本の葉脈が目立ち、裏は白っぽい。葉や樹皮などに香りがあり、種子からは香油をとる。名は藪に生える肉桂。『肉』は樹皮が厚いことから、『桂』は中国で香木のことをさす。
 宇和海と瀬戸内海に囲まれた細長い半島の佐田岬は、緩やかな起伏があるので散策を楽しみながら適度な運動ができます。朝は海から昇る朝日を、夕方は海に沈む夕日を楽しんでみてはいかがでしょう。
 
■海に囲まれた佐田岬半島(平成19年8月撮影)   ■海を見渡せる分譲地(平成19年4月撮影)
★ワンポイント

『早口言葉?』
 ヨモギに白いボンボンがついていました。実のようにも見えますが、実ではなく虫えい(虫こぶ)です。ヨモギシロケフシタマバエが作ったもので、ヨモギハシロケタマフシと名前がついています。舌を噛みそうな名前ですが区切ってみると、ヨモギ・ハ・シロ・ケ・タマ・フシとなり、ヨモギの葉につく白い毛玉状のフシ(虫えい)という意味です。植物などの標準和名はカタカナで表記されますが、漢字にしてみると姿が目に浮かぶものが多くあるので、このフィールドノートでは漢字の名前をなるべく記載するようにしています。名前の由来も同様です。名前から昔の人の素晴らしい感性や、昔の生活を知ることで、植物をもっと身近に感じていただければ、と思っています。

■ヨモギハシロケタマフシ
ヨモギシロケフシタマバエがヨモギの葉裏や葉柄につくる虫えい(虫こぶ)。中に幼虫が1匹入っている。本州から九州に分布する。
★写真集

■左:イヌビワ(犬枇杷) 別名イタビ クワ科イチジク属
関東地方以西の暖かい地方の海岸沿いの山野に生える。落葉低木。ビワとつくがビワの仲間ではなく、イチジクの仲間。実は黒く熟すと食べられる。秋に鮮やかな黄色に紅葉する。果実がビワに似るが味が劣るのでついた名。『イヌ』は劣るという場合も使われる。
■中:アオツヅラフジ(青葛藤) 別名カミエビ ツヅラフジ科アオツヅラフジ属
北海道から沖縄の草原や林縁に分布する落葉つる性植物。雌雄異株。7~8月、黄白色の小さな花を数個づつ付ける。球形の果実は秋に黒色に熟し、表面は粉をふいたようになる。葉はハート型。つるは葛籠を編むのに用いた。名はここからついた。茎が常に緑色なのでアオ。
■右:キツネノマゴ(狐の孫) キツネノマゴ科キツネノマゴ属
本州から九州の道端や草地に生育する1年草。8~10月に淡紅紫色や白色の花を穂状につける。シソ科の花によく似る。ハナバチが花粉を運ぶ。花穂がキツネの尾に似ているが小さいので孫がついたという説や花の形が子ギツネに似ているからなどの説がある。この小さな花の名がついたキツネノマゴ科の植物は熱帯に多く分布する。

■左:シロダモ(白ダモ)の花
■右:シロダモの果実 別名シロタブ、タマガラ クスノキ科シロダモ属
本州から九州、沖縄の山地に生育する常緑高木。雌雄異株。10~11月に黄褐色の小さな花を葉の付け根につける。雌株では花と同時期に前年の実が赤く熟す。春に白みがかった緑色からベージュ色の若葉が垂れ下がり、遠くから見ると花が咲いているようにも見える。葉は3本の葉脈が目立つ。葉裏が白いことからついた名。
 
■左:キランソウ(金瘡小草、金襴草) 別名ジゴクノカマノフタ シソ科キランソウ属
本州から九州の草地や道端などに生育する多年草。3~5月に濃紫色の唇形花と呼ばれる形の花をつける。シソ科にしては珍しい丸い茎をしている。多くは四角。金瘡小草は漢名から。張り付くように葉を広げることから別名がついた。薬効があることから地獄の釜に蓋をするという由来もある。
■右:コセンダングサ(小栴檀草)の種子 キク科センダングサ属
本州関東地方以西から沖縄の荒れ地に生育する1年草。9~11月に花をつけるが、花弁に見える舌状花はなく筒状花のみが集まって咲く。白色の舌状花を4~7個つける変種のシロノセンダングサもある。樹木のセンダンの葉に似ていることから名がついたセンダングサにくらべ小さいことからついた名。種子には刺状の突起があり、動物などについて運ばれる『ひっつきむし』のひとつ。
 
■左:コニシキソウ(小錦草)の紅葉 トウダイグサ科トウダイグサ属
アメリカ原産の帰化植物。日本全土の道端などで見られる1年草。地をはって広がる。葉に暗紫色の斑紋が入る。写真の株はわかり難いが全体に毛があることから、無毛のニシキソウと区別ができる。名の由来は葉の緑色と茎の赤色の調和が美しいことから錦という説や、2色草からという説がある。
■右:ネムノキ(合歓の木)のさや マメ科ネムノキ属 
本州から沖縄の山野や川岸に生育する落葉高木。6~7月に淡紅色の長い雄しべが目立つ花をつける。秋に長いサヤに入った種子が熟す。花は夕方開き翌朝しぼむが、葉は反対に夜になると閉じるのでこの名がついた。花はマメ科と思えない形をしているが、さやを見るとマメ科というのがわかる。

■展望台から宇和海を望む
八幡浜から臼杵や別府に渡るフェリーも見ることができる。
※上記写真は一部を除き平成20年11月撮影

担当スタッフ紹介

ガイド写真

自然観察指導員1級造園施工管理技士
グリーンアドバイザー

関口 亮子

群馬県前橋市出身、恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒業、現在「むろたに園芸研究所」勤務、設計、草花植栽、園芸講座講師を担当、特に自然風の庭造りを得意とする。

 

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