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スタッフからの現地便り

可憐な花に誘われて、緑豊かな鹿部の森へ

  • 更新日:2014年02月12日
  • カテゴリ:自然観察
可憐な花に誘われて、緑豊かな鹿部の森へ

 8月の終わりに降り立った函館空港は秋の気配を感じさせる青空と澄んだ空気に包まれていました。連日の猛暑に悲鳴を上げていた体も一休み。初秋の道南を満喫するために、まずは大沼周辺へ向かうことにしました。

 函館市内から大沼国道(国道5号線)を北上し、大沼トンネルを抜けると大沼国立公園です。信号を右折すると小沼を左に見ながら大沼や鹿部町方面へ、左折し小沼沿いを進むと蓴菜沼へと続きます。大沼に向かう道は函館本線と平行して走っているので、駒ヶ岳と小沼をバックに走る電車が撮影できるポイントとして、鉄道ファンに知られている場所だそうです。雄大な景色の中を走り抜ける電車の写真を撮るために少し待つことに。その間に車で走っている時に気になった黄色い花の群落を確認に行くと特定外来生物に指定されているオオハンゴンソウでした。北海道でも防除の対象になっているオオハンゴンソウがこの辺りでも繁殖しているようです。よく見ると葉の上でニホンアマガエルが休憩中。周辺を歩いてみると斜面のブロック積みの間に根付いたヤマハハコも白い花をつけていました。オオアワダチソウやまだ赤く色づいていないナツアカネがトクサにとまる姿などを撮影しているうちに電車が通る時刻に。大沼駅から函館駅方面に向かう電車を無事にカメラに収めたので、大沼に移動しましょう。


  
■左:オオハンゴンソウ(大反魂草) キク科オオハンゴンソウ属 
北米原産の多年草。日本各地で野生化した。8~9月に黄色い舌状花が下に垂れた花をつける。中心部の筒状花のかたまりは盛り上がる。下部の葉は3~7裂する。日本在来種のハンゴンソウと同様に葉が深く切れ込むことからハンゴンソウとついた。八重咲きの変種はハナガサギク(花笠菊)という。繁殖力が強く生態系への影響が懸念され、外来生物法により特定外来生物に指定されている。北海道では防除の対象になっていて、「入れない」「捨てない」「拡げない」ように大沼周辺でも除草作業が行われている。よく似ていて野生しているアラゲハンゴンソウ(紫色を帯び筒状花が黒紫色)は防除の対象にはなっていないが注意が必要。
■中:ヤマハハコ(山母子) キク科ヤマハハコ属 
北海道から長野県・石川県以北の山地などに生育する多年草。雌雄異株。8~9月に多数の花をつける。花弁のように見える総苞片はカサカサしていてドライフラワーにもなる。葉は綿毛におおわれる。細い線形の葉のカワラハハコに比べ葉が広いが、中間型も多い。あまり枝分かれしない。ハハコグサに似ていて山に生えることからついた名。
■右:オオアワダチソウ(大泡立草) キク科アキノキリンソウ属 
北アメリカ原産の帰化植物で全国各地に野生化した多年草。北海道ではセイタカアワダチソウより多い。開花期はセイタカアワダチソウより早く7~9月に黄色い花を多数つける。草丈は低く、松の枝状にまばらに花をつける。セイタカアワダチソウの花穂は円錐状で先端が尖る。茎や葉はほぼ無毛で(セイタカアワダチソウは有毛)、大群落をつくることはない。花がセイタカアワダチソウより大きく、黄色い花が泡立つように見えることからついた名。

 なだらかな線を描く駒ヶ岳と、駒ヶ岳の噴火で出来た大沼・小沼・蓴菜(ジュンサイ)沼などの湖沼群は、国定公園に指定されていて、三保の松原、耶馬渓と共に『新日本三景』に選ばれています。美しいだけでなく自然に恵まれ貴重な動植物も多いため、2012年にはラムサール条約湿地にも登録されました。

 大沼周辺は豊かな自然をゆっくり体験できる施設が充実しています。周遊道路が整備されていて、大沼湖畔は約14kmのサイクリングを楽しむことができます。大沼と小沼が接する周辺の島を巡るルートや、ミズバショウやスイレン、葉が水面から立ち上がらないネムロコウホネなど、多くの植物を観ることができるルートなど、様々な散策ルートもあります。今回歩いたのは西大島から東大島までのほんのわずかな距離でしたが、その短い間でもアオダモの実やエゾミソハギハッカホツツジなどの花を見ることができました。地上からだけでなく遊覧船やボートなどで湖上から周囲の景色を楽しむこともできます。せっかくなので遊覧船に乗ってみることに。ゆっくりと大沼から駒ヶ岳や島々を見た後、JR函館本線(大沼回り)と平行して走っている道路の月見橋をくぐり小沼を廻り、周辺の小島を巡る手こぎボートや足踏みボートの間を抜けて桟橋に戻るコースです。湖上から見る雄大な駒ヶ岳や、歩いている時とはひと味もふた味も違う周辺の景色を楽しむことができました。

   
■左:アオダモ(青梻)別名コバノトネリコ(小葉の梻) アオタゴ モクセイ科トネリコ属 
北海道から九州の山地に生育する落葉高木。雌雄異株。アラゲアオダモの葉の裏や枝にほとんど毛がない品種。4~5月に白色の小さな花を多数つける。果実は細長い羽根を持つ翼果で秋に熟し風に乗って遠くまで飛ぶ。材は堅く粘りがあるため、野球のバットなどの材料として用いられる。枝を水につけると水が藍色になることからついた名。この水は染料などに使われた。
■左中:エゾミソハギ(蝦夷禊萩) ミソハギ科ミソハギ属 
北海道から九州の湿地に生育する多年草。8~9月に紅紫色の花を穂状につける。ミソハギと生育地が重なるが、エゾミソハギは花の萼片の間にある尖った付属片が上向きで葉が茎を抱き、全草に短毛がある。ミソハギは花の付属片は開出し、葉は茎を抱かず無毛。お盆の頃に咲くので盆花として用いられる。萩に似た花が咲き、水を含ませてお盆の供物に水をかける禊(みそぎ)に使ったことからついた名。溝に生えるので溝萩という説もある。
■右中:ハッカ(薄荷)別名メグサ(目草)、ニホンハッカ(日本薄荷)、ワシュハッカ(和種薄荷) シソ科ハッカ属 
北海道から九州の低山から山地のやや湿った草地に生育する多年草。8~10月に淡紫色の花を葉の付け根に輪生する。メントールを多く含むため清涼感のある香りがあり、薬用や香料として利用される。ミントの在来種。別名は目が疲れた時に用いられたことから。漢名の薄荷(ハクカ)の転訛。薄荷は葉を蒸留してもわずかしかハッカ油がとれないことからという説や、入り交じって群れ生える(薄)地下茎の草(荷)という説などがある。
右:ホツツジ(穂躑躅)別名マツノキハダ(松の木膚)、ヤマボウキ(山箒)、ヤマワラ ツツジ科ホツツジ属 
北海道南部から九州の山地林縁や岩場に生育する日本固有の落葉低木。8~9月に赤みを帯びた枝先に多数の白い花を円錐状につける。花弁は反り返りまっすぐ伸びた雌しべが目立つ。よく似るミヤマホツツジは雌しべがくるりと丸まり、葉の先端が尖らない。名は穂状に咲くツツジの意味。別名はマツの木肌に似ていることや、ほうきとして使ったことからついた。
 
■:湖上からの駒ケ岳                   ■:日暮山からの大沼小沼

 小沼と蓴菜沼の間には、駒ヶ岳をはじめ126の島々が浮かぶ大沼、小沼などの眺望を楽しむことができる日暮山があります。遠くは函館山までも見ることができるそうです。案内板には蓴菜沼も見えるとありましたが、展望台周辺の樹々が茂り見えなかったので、蓴菜沼はどんな景色なのかと行ってみました。駐車場からの木道を少し歩いただけでキツリフネやコバノギボウシの花が咲き、オオウバユリが大きな実をたくさんつけ林立していました。この先はどんな植物を見ることができるのかと期待しましたが、すぐに通行止めの表示が。今回は残念な思いをしましたが、いつかゆっくり歩いてみたいです。
 
■左:キツリフネ(黄釣船) ツリフネソウ科ツリフネソウ属 
北海道から九州の山地の湿った場所に生育する1年草。6~9月、葉のわきから出た花柄に黄色い花がぶら下がる。この花を船に、花柄を釣り糸に見立ててついた名。ホウセンカのように熟した果実が種子をはじき飛ばす。葉は長楕円形で先は尖らない。ツリフネソウは花が紅紫色で、葉先が尖る。
■右:オオウバユリ(大姥百合)の果実 ユリ科ユリ属 
北海道から本州中部以北の林に生育する多年草。7~8月緑白色の大きな花を10~15個つける。果実は秋に熟すと3つに割れて、中にできた半透明の翼をつけた多数の扁平なタネが風で飛ぶ。果実の殻は花材にも使われる。ウバユリは花が咲く頃葉が枯れることからついた名で、関東地方以西に生育する。オオウバユリはウバユリにくらべ葉や花が大きい。

 
そろそろ日暮れが近づいてきたので、漁り火を撮影するために鹿部ロイヤルホテルに向かう道でソフトクリームの旗をみつけちょっと休憩。北海道でこの旗を見たら素通りできません。ジャージー牛に挨拶をしてから新鮮な牛乳で作ったソフトクリームの濃厚な味を楽しみました。

 ホテルの屋上で夕暮れを待っていると、夕日に染まった空に駒ヶ岳のシルエットがクッキリと浮かんできました。大沼辺りから見る姿とは全く違い、このあたりから見るとゴリラの横顔のようです。
 振り返ると鹿部町や出来澗港の灯りの数が増えてきました。遠くに見えるのは室蘭の灯りだそうです。肝心な漁り火は?と目を凝らすと、水平線にいくつかの小さな灯りが見え始めました。今年は海水温が高いため、生きたイカの出荷が延期になったということで、漁に出ている船は少ないのかもしれません。それでも少しずつ灯りが増えてきました。見上げると綺麗な星空。周辺に灯りが少ないので、星空を観察するにも良い環境ですね。帰りにはホテルの玄関でミヤマクワガタの見送りを受けました。こんな立派なミヤマクワガタに遭うのは久しぶりです。
 
■:ホテル屋上より駒ケ岳           ■:ミヤマクワガタ

 
翌日は鹿部リゾートを堪能しました。ここはゴルフ場とロイヤルホテルを囲むように広がっています。JR函館本線(砂原廻り)の鹿部駅が隣接しているので、函館へは鉄道を利用するオーナー様も多いようです。映画の一場面にでも出てきそうな可愛い駅舎の周辺から望郷の郷エリアを歩き始めましょう。

 関西はまだ夏真っ盛りの8月下旬でしたが、北海道ではヒヨドリバナやオトコエシなどの秋の花が咲き始めていました。エゾゴマナエゾノコンギクなど、名前にエゾとつく植物も。林の中で群落を作っているのはハンゴンソウです。大沼の近くで見たオオハンゴンソウと名前や葉の形は似ていますが、同じキク科でも属が違うので、花のつき方や大きさが全く異なります。たくさんの刺があるアメリカオニアザミもピンク色の花をつけていました。
   
■左:エゾゴマナ(蝦夷胡麻菜) キク科シオン属 
北海道の低地から山林の林縁に生育する多年草。8~9月、傘状によく分枝した枝先に白色の花をつける。草丈が150cmにもなる。本州に生育するゴマナに比べ草丈が高く、茎に毛が多い点で見分けるといわれてきたが、個体差がある。名前は北海道に生育し葉がゴマの葉に似ていて食用になるので菜とついた。
■左中:エゾノコンギク(蝦夷野紺菊) キク科シオン属 
北海道の山野の草原や道沿いなどに生育する多年草。本州から九州で秋にもっともよく見られる野菊のノコンギクの北方型変種。開花期は8~10月。筒状花のまわりに一列つく花弁(舌状花)は淡い紫色。ノコンギクに比べると花が大きく、葉の付け根から1/3くらいから急にくびれる、などの特徴があるといわれるが、顕著ではない個体も多いという。ノコンギクの色の濃いものを選んだコンギクが栽培もされている。野山に多く見られ、花の色が淡い紺色から紺色なのでノコンギク。エゾは北海道に生育することから。
■右中:ハンゴンソウ(反魂草) キク科キオン属 
北海道から本州中部のやや湿り気のある草地や林縁に生育する多年草。草丈は1~2mになる。7~9月、茎の上部に黄色い花を多数つける。葉は3~7個に羽状に深く切れ込む。名前の由来は、葉が幽霊の手に見えるからという説や、下痢止めの薬効で一命をとりとめたから、花が咲くのがお盆の頃なので死者の魂が姿を借りて帰ってくるからなどの説がある。
■右:アメリカオニアザミ(亜米利加鬼薊)別名セイヨウオニアザミ(西洋鬼薊) キク科アザミ属 
北海道から本州の野原や道端に生育する1年草~多年草。ヨーロッパ原産の帰化植物で分布を広げている。6~9月に紅紫色の花を上向きにつける。茎に刺のある翼をもち、葉の上面にも刺がある。『スコットランドの花』のアザミはこのアザミと考えられている。アメリカとつくが、ヨーロッパからアメリカに帰化した。アザミの語源は『あさむ(驚く)』、『あざむく』、『あざ(刺を意味する)』などがある。

 
次に、線路を渡り美駒平エリアに。こちらは線路と平行に走る道の両側に敷地が並んでいます。道沿いの草むらの中に鮮やかなオレンジ色をしたコウリンタンポポと小さな花が螺旋状についているネジバナをみつけました。シナノキはたくさんタネをつけています。このタネはへら状の翼を使い風に乗って遠くに移動するので、熟した頃にはクルクルと回りながら落ちるのを見ることができます。
この辺りにはシラタマノキの群落が林床に広がっている所もあります。亜高山帯などに生育するシラタマノキが生育しているのも駒ヶ岳の麓に広がる鹿部の植生の特徴のひとつです。
 
■左:シナノキ(科の木、級の木) シナノキ科シナノキ属 
北海道から九州の山地に生育する落葉高木。日本固有種。6~7月に花茎を枝から垂らし淡黄色の小さな花の固まりをつける。蜜は香りがよく良質。花茎にはへら状の総苞葉がつく。果実が熟すと総苞葉が羽根の役割をして風に舞う。葉はハート形。総苞葉の柄が長く、葉の裏面脈腋に褐色の毛がある点がオオバボダイジュとの違い。オオバボダイジュは総苞葉の柄が短く、葉の裏側に毛が密集し灰白色をしている。ボダイジュは中国原産で寺院などに植えられている。名前の由来は皮がシナシナすることから、皮が白いことから、アイヌ語から、など諸説ある。長野県の古名「科野」はシナノキを多く産したことからともいわれる。
■右:シラタマノキ(白玉の木)の果実 別名シロモノ ツツジ科シラタマノキ属 
北海道から本州(中部以北、三瓶山、大山)の高山や亜高山帯の草地や林縁に生育する常緑低木。7~8月、スズランに似た白い壺状の花をつける。果実は白色、ときに淡紅白色で9月頃に熟す。果肉をつぶすと湿布薬のような匂いがする。果実が白い球状になることからついた名。

 
続いてゴルフ場横のK街区や管理事務所横の中央通りを歩いてみました。どちらも緩やかに下るまっすぐな道の先には海が見えます。
北国の植物は他の地域に比べると大きくなるものがありますが、鹿部のイタドリも葉がとても大きいオオイタドリです。道沿いのいたる所でオオイタドリの花が穂状に咲いている姿はなかなか迫力があります。近くではノラニンジンがレースのような花をつけていました。花が終わったあとの姿がカゴ状でユニークですが、生態系への影響が懸念されている外来種なので拡がらないように注意が必要です。特にタネには刺があり、衣服や動物の毛につくので気をつけて下さい。以前会ったことのある犬との再会を喜び、最後に鹿部に来ると毎回訪ねる白樺の森エリアにあるお宅に向かうと、手入れの行き届いた庭ではクサキョウチクトウの花が満開でした。ちょうど奥様が庭で作業をされていて、今回も笑顔で迎えてくださいました。庭談義を楽しんでいるうちに時が過ぎ、引き上げなければならない時間に。次に訪れる時はどんな花が迎えてくれるでしょうか。
  
■左:オオイタドリ(大虎杖) 雄花 タデ科タデ属 
北海道から本州中部以北の山地や草原に生育する多年草。雌雄異株。草丈は2~3mにもなる。7~9月、白い花を多数穂状につける。イタドリの仲間の果実は3枚の翼が包み込む。オオイタドリはイタドリに比べ大型で葉の裏が白っぽく、付け根がハート型。イタドリはまっすぐ。若芽をもんで切り傷の止血に用い、痛みがとれたという伝えからついた名。
■中:ノラニンジン(野良人参) セリ科ニンジン属 
北海道から九州の野山や道端、空き地などに生育する1年草または2年草。野菜のニンジンが野生化したものといわれている。8~9月に白色の小さな花を傘状につける。根は細く食用にはならない。ニンジンの名は薬用人参(ウコギ科)に根が似ていることからついた。乾燥したタネから精油の「キャロットシード」が採れる。
■右:オーナー様宅の庭 
いつも綺麗な花が迎えてくれる庭。満開のクサキョウチクトウは1色だったものが年を経て様々な色になり、美しいグラデーションになったという。丁寧に管理されているが、自然風に見える。

 
3日目は函館市内を廻りました。函館と言ったらやはりまずは『函館朝市』ですね。エプロン姿の可愛い売り子さんが何人も、と思ったら、職場体験中の小学生でした。活気のある売り声の間を歩いていると、横道にカモメが一羽。オオセグロカモメのようです。ここにいると餌がもらえるのでしょうか?大きなカニやウニなどが並ぶ店の間を戻ると、観光客が活いか釣りで釣り上げたイカに水をかけられ声を上げていました。その場でさばいてくれるので味だけでなく包丁さばきを見るのも楽しいです。

 朝市の次は『坂』巡り。函館山を背景に函館港に向けて下る坂の数々は函館の名物のひとつです。その中のいくつかを歩いてみました。まずは『二十間坂』。二十間(約36m)という名前の通り、道幅がとても広いのが特徴です。次はナナカマドが色づき始めた「日本の道100選」に選ばれている『大三坂』と、ハリストス正教会と聖ヨハネ教会の間の『チャチャ登り』というユニークな名前の坂に。「チャチャ」とはアイヌ語で「お爺さん」。急坂を登る姿が腰の曲がったお爺さんのようだということからついた名前だそうです。息を切らしながら登ると道沿いにゴボウの花が咲いていました。続いては『八幡坂』ここも「日本の道100選」に選ばれている坂で、この夏には「観光で訪れたい坂の名所」の1位にも選ばれました。緑の街路樹の間をまっすぐ延びる坂。時々横切る路面電車。その先には函館港に浮かぶ船も見えます。そして市街地と山と空。函館ならではの景色です。他にも『基坂』、『護国神社坂』、『南部坂』、…と、いくつもの坂が様々な表情を見せてくれます。
  
■左:二十間坂
道幅が二十間(約36m)あることからついた名。この広い道は大火が多かったので防火帯として広く作られたと言う。坂の途中には洋館が多く見られ、登りきった右手には日本最古の鉄筋コンクリート造りの寺院、東本願寺函館別院がある。
■中:八幡坂
坂の上に八幡宮があったことからこの名前がついた。八幡宮は移転して今は高校がある。「日本の道100選」に選ばれている。2013年夏には「観光で訪れたい坂の名所」の1位にも選ばれた、函館の坂の中でも一番有名な坂。映像などでもたくさん取り上げられている。
■右:ゴボウ(牛蒡) 別名ノラゴボウ(野良牛蒡) キク科ゴボウ属 
ヨーロッパから中央アジア原産の多年草。野菜として導入されたゴボウが北海道から本州で野生化したものをノラゴボウと呼ぶ。7~9月にアザミに似たピンク色の花をつける。果実の先端は鉤状に曲がり衣服や動物に付いて運ばれる。長い根は食べられる。アザミの花によく似ているが、葉には切れ込みが入らない。

 
もうひとつの函館名物は『函館山からの夜景』。前日の夜は天気が悪かったので昼の景色を見に行きました。夜はマイカー規制がありますが日中は車で山頂に行くことができます。津軽海峡と函館湾に挟まれた函館市街地の独特な地形(陸繋砂州:トンボロ)は昼間に見ても素晴らしい眺めです。遠くには山並みも。爽やかな風に吹かれながら眺めていたら時間を忘れてしまいそうです。
 
■:函館山から函館市街地
函館山は砂州で陸とつながった陸繋(りくけい)島で、函館市街地は陸繋砂州(トンボロ)の上に発達した。この両側を海に挟まれた独特な地形が美しい夜景を作っている。標高334mの函館山からは日中でも素晴らしい景色を望むことができる。

 
続いて石川啄木一族の墓のある墓地の横を通って立待岬に。飛ばされそうな強風の中、赤い実をつけたハマナスを覆うようにセンニンソウの白い花が咲いていました。切り立った崖にはエゾカンゾウなどの葉の間に薄紫色のツリガネニンジンの花も見えます。ツリガネニンジンは変異が大きいので、ハマナスの間に1株あったのでよく見てみると萼片が短く肉厚で鋸歯がありません。海岸沿いの環境に適すように変異したものでしょうか。函館山は軍事要塞として約半世紀の間立ち入り禁止だったそうです。そのため市街地に近い場所にありながら自然が多く残り、植物の種類が豊富で野鳥も多く生息し渡り鳥の休息地としても知られています。函館山にはいくつかのハイキングコースが整備されていて立待岬からのコースもあるので、時間がとれれば観光だけでなく、ゆっくりと自然を楽しんでみてはいかがでしょう。
 
■左:ハマナス(赤い実)に絡まるセンニンソウ(白い花)
・センニンソウ(仙人草)キンポウゲ科センニンソウ属
日本全土の日当りのよい林縁などに生育するつる性常緑半低木。7~10月、花弁に見える4個の白い萼片を持つ花を多数つける。葉は小葉3~7個がセットになる。葉の縁に鋸歯がない点がよく似るボタンヅルとの大きな違い。果実の長い毛を仙人のひげや白髪にたとえついた名。クレマチスの仲間。
・ハマナス(浜梨、浜茄子)別名ハマナシ(浜梨) バラ科バラ属 
北海道から本州(太平洋側は茨城県、日本海側は島根県まで)の海岸の砂地に生育する落葉低木。6~8月に紅色から紅紫色の5個の花弁を持つ花をつける。花は8cmほどで芳香がある。8~9月に2~3cmの果実が熟し赤く熟し食べられる。名前は浜に生え果実が梨に似ていることからハマナシがなまったという説や、茄子に例えられたという説がある。『知床旅情』に『知床の岬にハマナスの咲く頃…♪』と歌われているので、名前はよく知られている。英名はJapanese Rose。皇太子妃雅子様のお印。
■右:ツリガネニンジン(釣鐘人参) キキョウ科ツリガネニンジン属 
北海道から九州の山野の草原や土手に生育する多年草。8~10月に釣り鐘状で先端が5裂した淡紫色から白色の花をつける。花と葉は輪生する。花や葉の形、数などに変異が大きい。写真の個体も葉が厚く萼片が肉厚な線状。新芽は「トトキ」と呼ばれる山菜として食用にされる。花が釣り鐘状で朝鮮人参のような根を持つことからついた名。学名の基本種であるサイヨウシャジンは西日本に生育。よく似ているソバナは本種から九州に分布し、葉が互生する。

 最後にもうひとつ。函館の市街地から函館空港に向かう途中にある『函館湯の川温泉』です。函館市内に350年余の歴史をもつ温泉街があることはあまり知られていないかもしれません。路面電車の湯の川温泉駅近くには足湯もあり、気軽に温泉を楽しむこともできるので、函館観光で疲れた脚をいやすにはちょうどよいのではないでしょうか。
 鹿部リゾートから自然たっぷりの大沼へは約40分、景観、歴史、味覚など魅力いっぱいの函館には1時間半ほどで行くことができます。どちらも何度でも訪れてみたい場所なので、ゆっくり滞在しても楽楽日帰りができる距離にあるのはうらやましいですね。

※上記写真は全て平成25年8月撮影

担当スタッフ紹介

ガイド写真

自然観察指導員1級造園施工管理技士
グリーンアドバイザー

関口 亮子

群馬県前橋市出身、恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒業、現在「むろたに園芸研究所」勤務、設計、草花植栽、園芸講座講師を担当、特に自然風の庭造りを得意とする。

 

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