「霧島アートの森」は、湧水町栗野岳にある広大な敷地の野外美術館です。屋内展示館のアートホールにも、オノ・ヨーコをはじめモダンでちょっと不思議な現代作家の作品が多数収蔵されていますが、何といっても特徴的なのは屋外展示の作品群です。
広々とした芝生の野外広場と樹林ゾーンと呼ばれる森の中に、22の作品が点々と散りばめられています。この作品たちは、それぞれの作家達が実際にこの地に足を運び、好きな場所を自分で選び出し、そこに自分の感性のままに創り出したオリジナルのも。共通するテーマは、「自然と人間」。様々な素材、思いがけない場所に、周囲の森や自然と一体化して、芸術作品はそこにありました。
鹿児島在住の作家が作ったというちょっと寂しい表情の「やせ犬」。全部で8匹いて園内のあちこちで出会いますが、探し出してみる立場の私達が、もしかしたら犬に見張られているのかもと、不思議な気分になります。
森の小道をずんずん下った林の中には、5人の「インサイダー」が隠れています。長身であるイギリス人の作家は、自分と同じ身長の鉄の人を分身として林の中に配置したといいます。少しほの暗い林の中で一人、二人と見つける楽しさ。霧の深い日には見つけ出すのが難しそう…。
緑の茂みに育まれるような鉄製の鳥の巣の中に首を入れてみたり、サツマイモの葉っぱのステンドグラスの光を浴びてみたり、いくつかの秘密基地に上って森を眺める楽しさを味わったり…。鳥の目線になって、森の中見ることが出来る、と思って登った森の中の秘密基地。本当に小鳥のさえずりがすぐ側で聞こえてきて驚き。
そこに置いてある国内外の有名作家の芸術作品に実際に触れて、その感触を実体験できることで深まる感性は個々人で違うと思います。その感性を大切にするために、あえて詳しい説明はつけていないとアートの森では説明しますが、毎週日曜日の午後から野外展示されている作品の解説付きの「園内ツアー」も催しているそうです。
実際に森を歩いて自分の場所を見出す作家の様子や制作中のエピソードなどを聞きながら、珍しい森の木々や花の事、森に住む鹿やムジナや小動物の話もたくさん聞くことが出来る園内ツアー。今度来るときは、ぜひ参加してみたいです。
野外広場の木陰で、じっとしていると風の音や小鳥の声に混じって子どもたちの歓声や大人達の会話が聞こえてきます。「わーい、見て見て」「何だこれは~」「違うわよ~」大人達の笑い声もたくさん聞こえてきます。それらは青い空や緑の中にスイッと吸い込まれては掻き消えて、風の音や木々のそよぐ音と変わらず、自然の一部になっているように思えます。
芸術品を静かに鑑賞する美術館もいいですが、霧島アートの森のように作品や自然に触れながら、生きいきと実体験できる野外美術館で、開放的な気分になるのも本当に良いものです。
標高700メートルの園内はこれからの季節には涼しく爽やかで、ちょっとした避暑気分が味わえます。
霧島アートの森
姶良郡湧水町木場6340‐220
電話 0995‐74‐5945
■交通アクセス 霧島高千穂リゾートランドより約33㎞(車で約50分)
■上記の写真はすべて、平成24年5月に撮影されたものです。