今から10数年ほど前、旧国分市上野原遺跡に縄文時代の竪穴式住居跡が次々と見つかった時には、見物人がぞろぞろと列をなして押し寄せ、大変だったそうです。9500年前のその遺跡は、定住化した縄文時代の集落としては国内最大級で、かつ最も古いものであると発表されたからです。
上野原テクノパークとして工業団地を構成中だったその場所は、ハイテクから一転して古代への浪漫を感じさせる地になってしまいました。
現在では「上野原縄文の森」として展示館や遺跡保存館・体験学習館などが整備され、道路を挟んで相対する「埋蔵文化財センター」とともに洒落た雰囲気の建造物エリアとなっています。どんぐり・栗などの木が茂る落葉樹の森に囲まれた、縄文の森展示館の目玉の縄文シアターは毎日10時から一日7回上映され、迫力ある映像と音楽に子ども達はもちろん大人もびっくりして、思わず声を上げる場面もありました。
常設展示室の入り口は珍しく大きな、和紙で造られたトンネル。足元に分かりやすく描かれた縄文タイムロードにそって、古代へとタイムスリップ。その先には9500年前の土器や7500年前の不思議なツボなど出土品が多く展示されていますが、縄文時代の上野原を描いたジオラマの精密な世界には目を奪われます。実に細かく作られた草や木や森や集落。その中に人間や動物達が、生き生きとした動きで散りばめられています。よーく見ると森の中にも隠れているイノシシやイタチ、キジ、タヌキの親子、そして人間の親子まで大変よく再現されていて、なんだか当時の森の生活がイメージされます。
他にも、縄文人の服を着て記念撮影が出来るコーナーや体験コーナーがあり、色々な楽しみ方が出来ます。案内係のお姉さんに聞いたら、春や秋の遠足シーズンにはたくさんの子ども達が訪れるそうです。別棟になっている体験学習で、実際に“火おこし”を体験した子どもはその大変さに驚くも、とても喜ぶそうです。なるほど、現代ではマッチも擦れなくなった子ども達、ボタンを押すだけでつけた火よりも達成感はあるはずですね。一生懸命木をこする姿を想像して、ほほえましくなりました。
展示館の外に造られた10棟の復元集落。竪穴式住居の中を覗き込むと、固い土の床にひんやりした冷たい空気。 竪穴式住居の床にしゃがみ込んで天井を見上げると、ちょっとだけ縄文人になった気分。
現在では標高250mの台地になってしまった上野原。9500年前には海はもっと近くにあり、狩りや木の実などの食料に恵まれた森の存在が最古の定住集落を作らせたと推測されます。謎はまだまだあるようですが、それはさらなる浪漫ということにして・・・。
この地には人々を落ち着かせて住まわせる環境の豊かさと包容力があったことだけは間違いなさそう。そう思うと何だか不思議な安心感が生まれてきました。ホッとしたひとときを自然と共に味わいたい時には、是非訪れてみてください。
上野原縄文の森
霧島市国分上野原縄文の森1-1
電話0995-48-5701
■交通アクセス 霧島高千穂リゾートランドより約19㎞(車で約29分)
上記の写真はすべて平成23年11月に撮影されたものです。