くろず情報館「壺畑」へ行って来ました。ここの入り口は、ちょっと変わっています。実は以前訪れて気になっていた片屋根造りの入り口に、今回初めてお邪魔しました。大きな三角形を傾けて置いただけの様なエントランスを入り、木の階段をトントンと下りて行くと思いがけなく広い展示・販売スペースがあります。
でも、まず目を引くのはガラス張りの建物の向こうにある黒い壺の数と、それに続く雄大な桜島を錦江湾の景色。当日はあいにくの雨模様で、桜島の姿はくっきりとは見えなかったですが、目の前に整然と並ぶ黒い壺たちの姿に圧倒され、「壺畑」の意味を自然に受け入れられてしまいました。
案内いただいた坂元醸造福山工場の工場長である蔵元忠明さんは、説明しながらその壺のことを「この人達」と呼びます。黒い壺を畑と呼ばれる地面に置いたら、動かすことは無いそうです。「この人達はずっとその場にある。同じように並んでいながら子どもと同じで個性があるんです。」蔵元工場長の優しい眼差しはまるで我が子を見つめるようにそう言われました。
くろずの仕込みは、春と秋の年に二回。壺の中に入れる材料は、蒸し米と米麹と天然の地下水だけ。もちろん壺に入れるタイミングや順番があり、最後に仕上げの『振り麹』を完璧にするのはくろず職人の腕の見せ所らしいが、材料も仕込みの過程も至ってシンプルなのです。
今回は特別に仕込みの現場に立ち会わせていただきました。「やってみませんか?」と声をかけられて、蒸し米を壺に入れ、大胆にも振り麹まで体験させていただきましたが、大丈夫だろうかとちょっと心配。他の壺と同じように私が仕込んだ壺も、我が子のように可愛がって育ててくださいね。
「工場と言いますが、我々がやっていることは農作業と同じです。」と、また蔵元工場長は目を細めます。福山の美味しいくろずを育てるのは、温暖な気候と豊富な米と良質な地下水と聞いたが、見渡す限りの壺畑を大切に見守り、丁寧に育て上げる職人さんたちの力も欠かすことは出来ないと思いました。
蔵元工場長の手に握られている竹の杖に目が留まって名前を聞くと『かくはん棒』と言うものらしいです。それぞれの職人が自分で山に行って自分に合ったものを作って道具にする。「これですべての作業が出来ます。」という職人唯一の道具だが、手作りの細い竹の杖が『魔法の杖』に思えました。
併設してあるくろずレストラン「壷畑」では、目の前の畑でとれたくろずを使った中華料理を提供しています。レストランの前に並んだ数万本の壷の中でふつふつと静かに熟成されているくろずの息遣いを感じながら、美味しく頂きました。
何故くろずが健康に良く、美味しい自然の恵みと言われるのか、実感できた一日でした。
くろず情報館「壷畑」
霧島市福山町福山3075
TEL 0120-707-380
上記の写真は平成23年6月撮影
■アクセス ロイヤルシティ霧島妙見台より約18㎞(車で27分)