朝、いつものように目を覚まして一階のリビングに向かおうと寝室のドアを開ける。
そうすると、階段の下からは「ママ、遊ぼ~!」「いいよ~」と大好きな人たちのハツラツな声が聞こえてきた。
トン、トン、トン……とスリッパでゆっくりと階段を下りる。
僕の足音にすぐさま気づいた息子がすぐに声をあげた。
「あ、パパだ!!! パパおはよう!」
「おはよう~。今日も早いね?」
「うん! ママと一緒に遊ぶんだ~!」
「おはよう。よく眠れた?」と妻。
「うん、ぐっすりだったよ。朝ごはんの準備、一緒にしよう」
「僕もやる~!!!」
こんなほのかな幸せが今の暮らしには詰まっている。
この家との出合いは、遡ること2年前。「優しくてかわいい家に暮らしたいんだよね」と妻が何気なく放った一言だった。
「どういうこと……? なにそれ……?(笑)」
「ええ、ばかにしてるでしょ、その顔」
「してない、違うよ。どういう家だろうって思って……」
「具体的にはわからないけれど、少しだけこじんまりしていて、それでいて温かみに溢れた家かな」
「そうなると、賃貸じゃなくて自分たちだけの一軒家って感じだね」
「言われてみたらたしかにそうかも……。私たちと子ども、家族みんなで楽しく過ごせる、自分たちだけの家」
穏やかで妻らしい発想の提案は、僕の心にすぐに馴染んでいった。そして、子どもが小学生になる前には我が家を見つけようと考えて、住宅探しを始めたのだ。
「すごい素敵……かわいい……」
「シックな雰囲気だけれど優しさがあるね」
「ドアの雰囲気がすごく温かみに溢れていてかわいいよね?」
「たしかに。味わいのある造りでとっても良いね」
なんて、外観にさえ惚れ惚れしていたな。
「せっかく自分たちの家を決めるなら、毎日帰るのが楽しみになる家が良い。外観だって家の一部なのだから愛したい」と、家を探し始めるときに妻が語っていた言葉がふと思い返された。
僕は機能面や性能面なんかを見て物事を判断してしまうタイプだけれど、妻のその言葉の意味が今ならわかる。外観だって、家を構成する大切な要素だ。
「リビング、広すぎず、狭すぎず、ちょうど良い広さだね。すごく暮らしやすそう」
「このくらいの広さなら、家族の一体感も感じられる気がするね」
「なにより木材の素材感がとてもきれいで落ち着くねえ」
「そうだね。ちょっとした意匠が丁寧で細部まで見入っちゃう」
「このおうちに僕住める? 僕ここに住みたい!」
僕たち家族がこの家を好きになるのにそう時間はかからなかった。都心からは車で30分ほど、電車でも1時間ほどという程よい距離で暮らしやすい街であることも気に入ってここでの新しい暮らしを迎えた。
それから1年後。
「パパとママは座ってていいよ! 朝ごはんの準備は僕ができるもん!」
「ええ~すごいね。なんでも一人でできちゃうね」
「えへへ~」
最近、社会的に生活の変化を求められるようになった。家での時間をより濃く過ごすようになった息子は、おうち時間のプロのごとく料理や家事をサクサクと手伝ってくれるように。
僕たち夫婦も、家と会社を往復する日々から、多くの時間を家で過ごす日々へと変化を求められた。
家族みんなが朝から晩まで揃うので、朝食を取りながらその日の予定を話すのもいつしか日課になっている。
「今日は午前中、大切な会議があるから二階で仕事してもいいかな?」と僕が妻に尋ねる。
「大丈夫だよ。じゃあ、わたしはつながりワークピットで資料作りの続きをしようかな」
「僕は算数の宿題する!」
「えらい。じゃあ午前中はみんなで集中タイムだね」
つながりワークピットは、この家にあるちょっぴりこだわりのある空間のことだ。キッチンの延長線上にあり、小さな空間になっている。
家族の声やインターホンの音などが聞こえるので部屋の外との“つながり”は保ったまま、仕事や家事なんかを進めたりできる。
夫婦共にテレワークなので、仕事の内容によって働く場所もお互いに相談している。
午前中の会議を終えて、つながりワークピットを覗くと息子が乱入してちょっとしたお絵かきタイムが始まっていた。
「ママがお仕事頑張れるように描いてあげる~」なんて、息子がお手製のお守りを作っていたり。家族との距離が近いままでいられる空間なので、テレワークの日々でも健やかに働ける。
お昼ごはんを食べて「ふう」と一息ついていると、息子は午前中に始めた宿題の続きをしているよう。
キッチンの横にあるスタディスペースは、もともとは家事や収納スペースとして使っていたけれど、今となっては息子のための勉強机代わりになった。
自分の勉強机だとなかなか宿題が捗らない様子だった息子も、スタディスペースを確保してからは毎日机に向かって自ら勉強を始める。
「ねえねえママ聞いて!今日宿題、ここまで進んだよ! 算数と、国語の宿題ももうやったの!」
「えっすごい早いね!えらいじゃん~!」
近くにいる妻にこうやって褒めてもらえるのが嬉しいからかな、なんて思うと家で過ごす時間が増えた日々も案外悪くないと思える。
みんなの仕事が一段落したら待ちに待ったお風呂の時間だ。大きな浴槽にたっぷりとお湯を張ってのんびり浸かる時間は、仕事場が家になった今でももちろん至福のひととき。
窮屈感のない水回りもお気に入りのポイントだ。ミラーの上にちょこんと付いているランプは妻の大のお気に入り。
家のところどころに小さな“好き”が散りばめられている暮らしは想像していたよりもずっと豊かだった。
つながりワークピットで妻が仕事に集中している間、仕事が一段落した僕はリビングを掃除してお昼ごはんを準備する。僕が打ち合わせをしている間、妻が息子の宿題を見たり洗い物をしたりしてくれる。
これまでも「家事はできるほうがやる」って約束していたけれど、家で過ごす時間が増えた今は、より一層みんなで一緒に家庭を作れるようになった気がする。
今までだって家は大切な場所だった。毎日「ただいま」と言いたくなる家が良いし、のんびりできる家が良かった。
でも、社会のあり方が変わって、テレワークが当たり前になって、より家が持つ力に気がつくようになった。家が過ごしやすければ、その分家族みんなは豊かに笑ってくれる。
それから1年後。
そんな豊かさは、日々を暮らす中でのかけがえのない宝物なのだと僕は気づいたから。
これからも家族みんなで温かみに溢れた家庭を作っていこうね。
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